ブランド知名度、世界で向上急ぐ

シャープのディスプレーデバイス事業に暗雲が漂っている。2024年3月期の連結業績予想は期初計画の当期黒字100億円から一転、100億円の当期赤字への修正に追い込まれた。必達目標としてきた当期損益の黒字化を撤回せざるを得なくなった最大の理由は、「中小型ディスプレーの市況が極めて低調であるため」(沖津雅浩副社長)。23年3月期の大幅当期赤字に引き続きディスプレー分野が足を引っ張る形となった。(編集委員・安藤光恵)

パソコンやタブレット端末、スマートフォン、車載など中小型ディスプレーの多くの市場で需要回復がシャープの想定より遅れている。ディスプレー事業は6四半期連続で営業赤字に沈んでおり、24年1―3月期も厳しい状況が続く見通し。

2期連続でディスプレー分野が原因となる連結当期赤字が濃厚となったが、23年3月期の大幅赤字の要因はテレビなどの大型ディスプレーだったのに対し、24年3月期の当初目標が達成できなくなった背景には中小型ディスプレーの市況がある。主なターゲットとする市場を変更したにもかかわらず需要を読み切れず、赤字の要因となってしまうという難しい状況に陥った。

もっとも、シャープ自身もディスプレー分野が頼みとならない状況は自覚している。当期損益の黒字化に向けた取り組みとして家電やオフィス機器、通信などのブランド事業を中心とする事業構造への転換を進めており、23年11月に開いた自社技術展示会でもブランド事業や新規事業の訴求に力を注いだ。ディスプレーそのものを中心に据えた展示は少なく、他の事業の技術で補助的に使われる程度と、ディスプレーに頼らない収益構造への脱皮を模索している様子がうかがえた。

とはいえ新技術・新規事業が収益源に育つには時間がかかり、24年3月期連結業績への寄与はわずか。ブランド事業を中核とするための取り組みがおおむね予想どおりに推移してきたものの、ディスプレー事業の損失が大きく、カバーしきれないのが実情だ。陳信旭副社長の「今回の(下方修正後の)予想を達成するのも努力が必要だ。現時点の目標は営業赤字を回避すること」という言葉には苦しさがにじむ。

陳副社長は現在策定中の次期中期経営計画について盛り込む内容を一部明かし、ブランド事業の成長戦略や、親会社である台湾・鴻海精密工業との連携協力の可能性とともに、あらためてディスプレービジネスの構造改革を重要な課題として挙げている。「世界市場でブランド事業の知名度が十分ではなく、努力を加速しないといけない」(陳副社長)としつつも、結局のところディスプレー部門の改革が最大のハードルとして残る。

陳副社長は「大型パネルは価格の安定と追加受注で利益率が改善している。中小型は製品の多様化や商品部門拡大で自動車やエレベーターなどに用いられるようにしていく」とディスプレー事業の今後の展望を示す。そして「市場はこれから、ゆっくりとした回復基調が見込まれる」(同)と予想したが、そもそも想定を下回り続けてきた需要が2期連続の当期赤字の主要因だ。このままではディスプレー事業の継続性そのものが問われる。


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