26年4月、熊本に専用工場

三菱電機が電動車(xEV)モーターのインバーター駆動などに用いる小型のパワー半導体モジュールのサンプル出荷を3月に始める。自動車の高機能化が進む中、電力を効率的に制御するパワー半導体は不可欠な製品となっている。三菱電機では得意とするxEV用モジュールに、電力損失軽減に優れた炭化ケイ素(SiC)を新たに採用するなど、ラインアップを強化。旺盛な車載需要を取り込む。(編集委員・小川淳)

「高い成長が見込める自動車分野を強化していく。(SiC基板を供給する)米コヒレントの事業などへの出資も含め、今後のSiC事業の拡大を積極的に進める」―。三菱電機の半導体・デバイス第一事業部の楠真一事業部長は、SiCパワー半導体の強化について、こう説明する。

三菱電機は1997年に世界で初めてxEV向けにパワー半導体モジュールの量産を開始し、22年までに累計で電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)2600万台以上での搭載実績がある。「この分野のパイオニアの1社」(同社)だ。

今回、自動車市場で多数採用されている「トランスファーモールド型パワー半導体モジュール」(T―PM)の最新世代として、「J3シリーズ」を開発した。6製品のサンプル出荷を3月から順次始める。半導体素子として、シリコンの逆導通型絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RC―IGBT)のほか、SiCの金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を採用している。

熊本県菊池市に建設するSiC8インチウエハー対応新工場棟(完成イメージ)

SiC搭載を前提に、冷却器とのハンダ接合を実現したことにより、熱抵抗を従来自社製品比約30%低減。これによりモジュールの大きさ自体を同約60%小さくすることに成功した。同じ定格や容量で見た場合、業界最小だという。小型化により、インダクタンス(磁束変化に対する抵抗)も同30%減り、高速のスイッチングにも対応した。

また、独自の放熱フィン形状を持つケースにより、モジュールを3個および6個納めるタイプも提供しており、xEVの多様な用途に合わせたインバーターの設計に対応する。 インバーターのパワーモジュールをシリコンからSiCに切り替えることにより、EVでは走行距離を5―10%伸ばせるとされる。楠事業部長はSiC半導体について「(自動車の)大電力化により、SiCの需要が高まるのは間違いない」としており、SiCにも対応した豊富な製品群に自信を示す。

三菱電機は熊本県菊池市に26年4月稼働予定のSiCパワー半導体新工場棟を建設するなど、パワー半導体を含むパワーデバイス事業で25年度までの5年間に計2600億円の設備投資を行うと決めている。xEV用のモジュール製品強化と合わせ、SiCパワー半導体事業を軌道に乗せていく。


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