岸田文雄首相が、日本の首相として9年ぶりに国賓待遇で米国を公式訪問している。日米首脳会談で狙うのは、同盟関係のさらなる深化だ。半導体など重要・振興技術の開発や、サプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化、脱炭素分野で協調する。米国は11月に大統領選を控える。対中政策という共通の主要課題を念頭に、選挙結果に左右されずに強固な連携を継続する基盤を整える。(総合1参照、編集委員・政年佐貴恵、同・川瀬治)

経済安保、最大の焦点

中国依存懸念、供給網強く

日米間の連携事項

今回の日米首脳会談は「未来につながる枠組み」が焦点だ。日米ともに内政に課題を抱え、国際情勢も不透明感を増す。こうした状況下、日米両国は「グローバルパートナー」であると打ち出し、変化があっても機能する連携のあり方を整備する。最大のテーマは経済安全保障。日米両国はこれまでもサプライチェーン(供給網)強靱化に向けた連携を強めてきた。この流れをさらに加速、発展させる。

次世代半導体分野での共同研究開発や人材育成で協力するほか、人工知能(AI)では日米大学間での新たな研究協力や、政府間での連携を進める。サプライチェーン強靱化では、半導体や蓄電池といった戦略製品に補助金を支給する際、安定供給性など共通の要件を設ける方向で協調していく。

脱炭素分野では日本のグリーン・トランスフォーメーション(GX)戦略と米インフレ抑制法(IRA)を連動させ、両国の企業連携や相互投資などを促進させる。例えば日本のグリーンイノベーション基金で開発した技術をもとに米国の税制優遇を受けながら設備投資し、成果としての脱炭素エネルギーや製品を日本に輸入し優遇措置を受ける、といったことを想定する。脱炭素分野では閣僚級の政策対話を立ち上げ、今後議論を具体化していく見通しだ。

こうした政策協調の背景には、特定国への依存の懸念がある。例えば太陽光発電パネルは安価な中国製品がシェアを広げ、中国依存が高まった。再生エネなど脱炭素も含め重要物資に関して懸念国や特定国への依存を防ぐ仕組みを構築する。

日米の脱炭素政策概要

フィリピンと関係構築重要

今回の訪米ではフィリピンのマルコス大統領を含めた首脳会談も実施。半導体や「オープンRAN」といったデジタル、小型原子炉、重要鉱物などの領域でフィリピンに対する日米による支援を議論する。

現実問題として、国際経済の中で中国の存在を切り離すことはできない。公正なルールを訴えながら日米の枠組みに同志国を加え、共通認識を広げていくことが重要だ。フィリピンのマルコス政権は、南シナ海での領有権争いで対中姿勢を強めている。日米同盟を利用し必要な支援を講じることは、同志国の輪を広げる絶好の機会となる。日米の強固な関係を軸とした協調体制をどこまで広げられるか。フィリピンとの連携は、その足がかりとなる。

防衛で連携拡大

宇宙、月探査など共通目標

日米首脳会談では防衛面での連携強化とともに、宇宙など幅広い分野で協力関係を拡充する狙いもある。防衛面では自衛隊と米軍の相互運用強化などそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させ、防衛装備品の共同開発や技術協力を強化する。

またミサイルの共同開発・共同生産や米艦艇・航空機の維持・整備を強化することを確認。さらに将来のジェット練習機の共同開発・共同生産の可能性を探るため、日米間での連携を深める。

岸田首相は防衛費を27年度までに国内総生産(GDP)比2%に増額する方針を表明している。日本はミサイル発射基地などを攻撃できる「反撃能力」を保有したほか、自衛隊の「統合作戦司令部」の設置を24年度中に目指す。バイデン米大統領は、こうした日本の防衛力の抜本的な強化への取り組みを「歓迎」している。

宇宙分野の連携強化では、月を探査する米主導の「アルテミス計画」で、日本人宇宙飛行士の2回の月面への着陸機会や、日本の有人月面探査車「有人与圧ローバー」の提供を確認。また米国人宇宙飛行士以外では日本人宇宙飛行士が初めて月面着陸することを共通目標として共有する方針。幅広い分野での連携を加速させ、日米同盟を深化させる。