世界初の挑戦的な海洋プロジェクトが注目されている。南鳥島(東京都小笠原村)沖の排他的経済水域(EEZ)内の水深6000メートルで、レアアース(希土類)泥を産業規模で開発するプロジェクトだ。9府省4国立研究機関が参画し、政府が一体となって、大学や企業を巻き込みながら推進している。プログラムの研究成果を国や自治体、大学、企業などにいち早く技術展開を図ることで社会実装を目指すのが狙いだ。

内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の石井正一プログラムディレクターは「世界第6位の海域を保有する海洋国家である日本にとって、安全保障上重要な海の利活用に取り組んでいきたい」と意気込む。

計画では、2026年1月に南鳥島沖の水深6000メートルの海底で、地球深部探査船「ちきゅう」の船上から揚泥管と接続した採鉱機を降下させ、船上への揚泥を確認する接続・採鉱試験を実施する。27年1月には、1日当たり約350トンの採鉱、揚泥試験を行い、陸上に輸送後、分離・精製する。日本でレアアースの生産システムを確立し、レアアースの「国産化」を目指す。

すでに水深6000メートルに存在するレアアース泥について、自律型無人潜水機(AUV)「しんりゅう6000」で資源量の調査に成功した。22年には水深2470メートルで海底堆積物の揚泥に世界で初めて成功。レアアースの環境影響評価では、海底観測装置「江戸っ子1号」を活用して、2年間にわたって生態・環境データを収集している。江戸っ子1号は岡本硝子のほか、東京・千葉の中小企業連合が中心となって開発した。

大規模な世界初のプロジェクトの成功には、政府が総力を挙げて取り組む必要がある。SIPでは9府省4国立研究機関を推進委員会の構成員として、その下に各府省庁連絡会を設置。省庁間の連携を密にするとともに、研究開発成果に合致し、実装に役立つニーズの掘り起こしを図っている。このような行政組織のプロジェクトマネジメントは、民間企業の大規模なプロジェクトの進行でも参考になるに違いない。

世界のレアアースのサプライチェーン(供給網)の約9割は中国が握り、日本は中国から6割近くも輸入している。経済安全保障の観点からも、レアアースの国産化への挑戦は重要だ。石井氏は「我が国の産業の振興に不可欠なレアアースの国産化に道筋をつけたい」と目を輝かす。これからが正念場だ。(編集委員・川瀬治)