「LINEモバイルは勝負します」。3月中旬、LINEモバイル(東京都新宿区)の嘉戸彩乃社長は記者会見の場でそう豪語した。格安スマホ「LINEモバイル」を売り込むため、3月から家電量販店への出店とテレビCMを始めた。

 格安スマホ市場は「普及・拡大期の入り口に差し掛かった」(三菱総合研究所社会ICT事業本部の西角直樹主席研究員)とされる。その市場において各社は店舗の出店と広告出稿を強化し、サービスブランドの認知度を高めて顧客獲得を狙う。特に、従来のインターネットでの対応に加え、店舗で顧客接点を拡大する事業者が増えており、出店競争とも言える状態になった。

 格安スマホ「マイネオ」を展開するケイ・オプティコム(大阪市北区)は、2月に渋谷センター街(東京都渋谷区)に旗艦店を開設した。利用者同士が情報交換できる場を設けるなど「ブランド発信の拠点」(上田晃穂モバイル事業戦略グループグループマネージャー)と位置付ける。

 一方、「フリーテル」ブランドで展開するプラスワン・マーケティング(東京都港区)は3月に都内などに直営店を開設。増田薫代表取締役は「利用者の多様な相談事に我々のスタッフが直接対応する。ブランド店は2017年中に代理店を含めて200店舗に増やす」と意気込む。

 全国に店舗を持つ企業と連携する動きもある。「Uモバイル」を手がけるU―NEXTは1月にヤマダ電機と格安スマホを扱う共同出資会社「Y.U―mobile」(同渋谷区)を立ち上げた。U―NEXTの二宮康真取締役は「ヤマダ電機が全国に持つ店舗網やフォローアップ体制が生かせる」と期待する。

 各社が店舗による顧客接点を重視する背景には、消費者に「安心感」を与える狙いがある。調査会社のMM総研(同港区)が3月に行ったインターネット調査によると、格安スマホは認知率が80%を超えたものの利用率は15%に届かなかった。

 同社の横田英明取締役は「(サポート体制など)格安スマホのサービスに不安を持つ消費者は多い。認知率と利用率のギャップはその現れ。店舗による対面の対応はそうした不安を取り除く重要な手段になる」と説明する。その上で「店舗を持たない事業者は生き残りが難しくなるだろう」と推察する。

 また、今後の市場では「口コミ」も各社の勝敗を左右する要素になりそうだ。市場調査を手がけるMMDLabo(同渋谷区)の吉本浩司社長は「格安スマホがもう少し普及してくると友人・知人の利用者に評価を聞く機会が増えてくる。その評価は事業者を選ぶ際の重要な判断材料になるため(顧客獲得の競争に)大きく影響する」と予測する。

 良い口コミを醸成する特効薬はなく、丁寧な顧客対応の積み重ねや通信品質の安定感といった「真摯(しんし)に顧客と向き合う企業姿勢が問われる」(吉本社長)という。

 格安スマホの契約回線数は18年3月に1170万件に上ると予想される。16年3月比で倍増だ。ただ、格安スマホ事業者を含む仮想移動体通信事業者(MVNO)は600社を超え、競争が激化している。

 一般層の需要を獲得するための店舗網の構築や広告出稿には大きな費用がかかり、良い口コミを醸成するためには不断の努力が必要だ。市場が膨らむ一方で、各社の生き残りを賭けた戦いは勝負の時を迎えている。

(文=葭本隆太)

【ファシリテーターのコメント】
携帯電話市場で格安スマートフォンが台頭している。ITリテラシー(活用能力)の高い客層が中心だった格安スマホは、一般消費者にも浸透し始めた。商機の拡大を踏まえ、市場に参入する企業は増加の一途をたどる。大手キャリアも傘下の割安なサブブランドを活用して対抗するなど顧客の獲得を巡る争いは激しくなるばかりだ。
(日刊工業新聞第一産業部・葭本隆太)

日刊工業新聞 記者