【パリ=戸村智幸】三菱重工業は19日(現地時間)に開幕した航空宇宙産業展「パリ国際航空ショー」で、開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の実機を国際航空ショーで初めて展示した。開発遅れでMRJへの信頼低下が懸念される中、世界の航空機産業の晴れの舞台で実機を披露し、存在感を高める狙いだ。

 パリ北東部の会場、ル・ブルジェ空港で18日、米国ワシントン州の飛行試験拠点から持ち込んだMRJ試験3号機の披露会が開かれた。第1号顧客のANAホールディングス(HD)仕様に塗装された3号機の前面が、6月のパリにしては熱い日差しを白く反射してたたずんだ。

 披露会には宮永俊一三菱重工社長が出席した。5度の納入延期を経て、開発の主体が子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)から三菱重工に移った表れと言える。

 宮永社長は自らの出席が、「これ以上の納入延期はしないという決意だ」と表明。さらにANA仕様への塗装は自身の指示だと明かした上で、「顧客のために全力で開発していると強く示すため」と狙いを説いた。

 同席した篠辺修ANAHD副会長は「開発過程でさまざまなことが起きると覚悟して発注した」と納入延期に理解を示した上で、「我々の塗装になっているのを見て、できてきていると実感した」と感慨深げだった。

 今年1月の5度目の延期決定により、量産初号機の納入予定時期は2020年半ばへと2年間遅れた。これによるマイナスイメージを払拭(ふっしょく)しようと踏み切ったのが、実機展示だ。

 航空ショーではこれまで、実物大模型(モックアップ)の展示にとどまっていた。機体を持ち込むには、型式証明取得のための飛行試験を中断する必要があったからだ。

 水谷久和三菱航空機社長は「1日でも多く飛行試験をと言う人もいた」と反対意見があったことを明かした上で、「それよりも実機展示で生まれる期待感などプラス効果を採った」と強調した。宮永三菱重工社長も「機体を見てもらうことで商談が広がっていくと願っている」と今後の受注活動の弾みになることに期待する。

 ただ、初の実機展示が意義深いのは確かだが、航空ショーの華である飛行展示を実施しないのは残念だ。米ボーイングや欧エアバスは、開発中の新型機を飛行展示や内部公開でアピールする。一方、MRJは飛行試験への影響を考えると、実機を持ち込むのが限界だった。試験機の状態という理由で、内部も公開しない(編集部注:その後、三菱航空機はMRJ内部の初公開に踏み切りました)。

 では次はどうか。18年に英国で開かれる「ファンボロー国際航空ショー」での飛行展示について、宮永三菱重工社長は「来年はステップアップに努める」と前向きな姿勢を示しつつ、「そのときの状況でいろいろ相談しなければならない」と付け加えた。現段階では判断しようがないのだろう。開発が順調に進み、MRJが1年後に英国の空を舞うことに期待したい。



【ファシリテーターのコメント】
やっとスタートラインに立てた、という印象です。MRJを含む民間航空機の開発において「エアショーデビュー」は大きな一歩ですが、この先、型式証明までの険しい道のりはまだ残されています。ちなみにライバルも手強い。ブラジルのエンブラエルは今回、開発中の「E2シリーズ」の地上展示と飛行展示を予定しています。MRJは地上展示のみです。

杉本 要