米グーグルが科学者や人工知能(AI)研究者に対し、開発中の量子コンピューターをインターネット経由で使えるようにする試験的なサービスを数カ月以内に開始する見通しだとブルームバーグが17日報じた。これら早期アクセスユーザーに関連のツールやアプリケーションを開発してもらうことで、はるかに高速な量子コンピューターを使ったクラウドサービスの商用化を後押しする狙いがあるものと見られる。

量子コンピューターは、通常のコンピューターのように0か1かの2進法ではなく、0と1とが重なり合った量子力学的な重ね合わせ状態を情報処理の基本単位(量子ビット)として利用。科学技術計算や医薬品開発、暗号、AIなどの分野で、現在のスーパーコンピューターでも太刀打ちできないような難しい計算も高速にこなせる「夢のマシン」として実用化が期待されている。

グーグル以外にも、米IBMや米マイクロソフトが量子コンピューターの開発を進めており、IBMが今年に入ってクラウドでのサービス提供を開始。5月には17量子ビットの量子プロセッサーのプロトタイプを使って、試験的なサービスを始めた。同社は数年後に50量子ビット以上のチップを実装したマシンを完成させ、クラウドサービスでの商用化を進める方針でいる。

一方のグーグルは、17年中に現在のスパコンとほぼ同等の性能を持つと言われる49量子ビットのプロセッサーを実装したマシンを試作すると公表済み。ただ、ブルームバーグによれば、今回、外部ユーザーにサービス利用を提案しているマシンが49量子ビットのものかどうかは不明という。

量子コンピューターは現状では非常に高価で大がかりなため、ビジネスとしては本体の販売より、クラウド経由でのサービス提供が適していると見られている。IT大手が成長分野のクラウド市場でしのぎを削る中、量子コンピューターによる計算機能のクラウドサービスが新たな競争軸となる可能性もある。


【ファシリテーターのコメント】
グーグルはこのほかに、複雑な「組み合わせ最適化問題」に威力を発揮する量子アニーリングマシンの開発も手掛けています。一方で、持ち株会社のアルファベットが2015年夏に設立されて以降、収益重視の方針が打ち出され、かつては「ムーンショット」プロジェクトと言われた自動運転車やロボットでも、現実に沿った形で大幅な路線変更・事業縮小が行われました。量子コンピューターでも「研究ばっかりやっていないで、早く稼げ」というプレッシャーが社内で強まっているものと思われます。
藤元 正