富士通は人間の感性や錯覚などを利用した次世代人工知能(AI)の開発に着手する。研究開発子会社の富士通研究所(川崎市中原区)に約150人体制の「フロントテクノロジー研究所」を新設し、AI研究者のほか、画像処理や音響、音声認識などの研究者を集めた。人の気持ちを理解し、人に寄り添う新型AIを開発し、富士通のAI技術「ジンライ」に組み込んで、提供する。

 富士通研が開発するのは「ナインセンスコンピューティング」と呼ぶ新しいAIシステム。人の視覚や聴覚、触覚、味覚、嗅覚の「五感」とそれを超えた「第六感」に加え、錯覚、欲望、共感という九つの感覚を理解し、自律行動するシステムを開発する。

 例えば人の視線を検知して客が何を求めているかといった欲望を把握し、共感しつつ商品を勧めるシステムや、声のトーンから怪しい通話を検出して、警告する振り込め詐欺抑止システムなどを検討する。人の感覚や感情をセンシングすることによって、人を手助けするAIの開発を目指す。

 画像や音声、感覚などのセンシング情報から知識を獲得し、その膨大な知を構造化した上で学習し、そこから価値ある知を探し出すという「発見科学」の手法で未知の知を創出する。社会科学や心理学など手薄な領域の研究は、内外の研究機関とのオープンイノベーションで進める。



【ファシリテーターのコメント】
富士通は人のように気が付き、気配りができるAIの実現を掲げる。そのために人の声や表情、ちょっとした反応やしぐさなどの行動を画像や音声などを通して検出する。人の心をくみ取り、示唆や的確な助言を与えるAIを開発し、小売りや流通分野のほか、教育現場などへの導入をにらむ。
(日刊工業新聞第一・斎藤実)
日刊工業新聞 記者