「シビック」シリーズの新型を日本で9月29日に発売するホンダ。シビックの国内販売は6年ぶりになる。新シリーズは、セダン、ハッチバック、スポーツカー「タイプR」の3種で構成し、すべて同時開発した。セダンは埼玉県の寄居工場で生産し、ハッチバックとタイプRは英国で生産し輸入する。

 国内販売を担当する寺谷公良執行役員は、「シビックはスポーティーなデザインが売りで米国や中国で受けている。他社にはない魅力があるし、日本にはない商品だから新しい顧客がとれるはず。シビックのようなグローバルモデルを使ってブランドを高めたい」と話す。

 新開発のプラットフォームに加え、加速と環境性能を併せ持つ直噴VTECターボエンジンを採用。ボディーの低重心化や軽量化により、機敏な走りと高速走行時の安定性の両立を実現した。月間2000台の販売を見込む。

 2年前に就任した八郷隆弘社長。ホンダは元気がないと言われる時期であった。「ホンダらしい」と評される個性的で競争力ある商品を生み出す組織・経営改革を進めてきた。

 改革は途上だが芽は出はじめている。フルモデルチェンジした多目的スポーツ車(SUV)「CR―V」などがけん引する北米市場、現地合弁会社のラインアップを見直した中国市場を中心に収益は回復基調にある。

 4輪車の販売台数は過去最高を更新。初めて500万台を超えた。世界戦略車と地域の特性に合わせた専用車の双方を効率的かつ柔軟に生産する体制が整ったことで商品本来の競争力を高められる段階に入った。

 ホンダは過去も「シビック」や「オデッセイ」といったヒット商品で復活を遂げてきた。ただ先行き不透明な時代に「北米一本足打法」やホームラン級の「一発長打」を狙う手法では持続的な成長は見込めない。

 「シビック」の国内生産再開は、八郷社長の世界6極の生産体制を融通し効率を改善させる施策の仕上げである。

 前経営体制では6極自立を掲げ、海外工場拡張を進め、国内販売で十分と日本からの輸出を増やすこと止めた。「国内販売が計画を下回ったらどうする」というような発想が欠如していた。

 とん挫した600万台計画を修復するために、英国工場に「シビック5ドア」、米国へ「CR-V」を集約、「フィット」をメキシコから日本へ一部移管した。そして「シビック」を国内生産に回帰させることで、日・米・欧の先進国需給バランスは一定の安定感を回復できるだろう。さまざまな経営改革の効果の刈り取りはこれからだ。


【ファシリテーターのコメント】
八郷社長は先日の日刊工業新聞のインタビューで以下のように話している。
「『ホンダらしさ』―。それは暮らしを豊かにする商品を生み出すことに尽きる。創業者の本田宗一郎さんが生み出した『バタバタ』の愛称で知られるエンジン付き自転車は自転車で買い物に出かける主婦を楽にしてあげたいとの思いが原点だ。
 ホンダの基本理念である「三つの喜び(買う喜び・売る喜び・創る喜び)」。私はこの言葉をとりわけ大切に思っている。こうした人間の“感情”を原動力に事業をやってきたし、今後も貫きたい。技術が変わっても、思いは不変である。
 入社間もない頃、研究所で本田宗一郎さんを何度か見かけた。普段着でふらりと現場を訪れるその笑顔をいまも覚えている」

八郷改革をもう少し見届けてみよう。
明 豊