企業を評価する軸が、短期間の業績だけでなく、長期的な持続可能性や存在意義を問う方向にも広がりつつある。この数年、注目されているのがESG(環境、社会、企業統治)投資で、日本でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用の投資基準として重視し始めた。コモンズ投信の渋澤健会長は「企業には財務的な見える価値と非財務的な見えない価値がある。過去を引きずったままの組織だと、新しい価値に気づかない」と強調する。

 ESGが注目される背景には、短期利益を追求した結果、企業が不正を犯し、株価が急落して投資家も損失を被る事例が今も少なくないことがある。

 ESGがしっかりとした企業は不正を犯す恐れが少ないと期待できるし、将来の環境規制に対応でき、持続的に成長する力を備えていると評価できるというわけだ。

 そのため決算や有価証券報告書の「財務情報」だけでなく、ESG基準も、投資家が投資判断の基準に位置付けるようになってきた。実際、欧米の年金基金を中心にESG投資は盛んになっている。国連の責任投資原則(PRI)への署名数も年々増加している。

 国際団体であるGSIAのレポート「Global Sustainable Investment Review」によると、2016年の世界のESG投資残高は22兆ドル。日本は4740億ドルとまだまだ少ないが、2014年比では67倍と急成長している。

 世界最大の機関投資家である日本のGPIFが2015年秋、ESG重視を表明したことが大きく影響している。年金基金にとってESG投資は「長期間、安定配当してくれる企業への投資」という位置付け。逆に言えば「企業を長く応援する投資」でもある。

 企業にとっても長期の応援はありがたい。足元の業績に左右されず、腰を据えた事業戦略を進められるからだ。長期にわたって研究開発を続け、将来の社会課題解決に貢献できる事業を育てることも可能となる。長期投資を提唱するコモンズ投信の渋澤会長も、「長期的な投資と企業は対立しない」と話す。

 渋澤氏はESG投資が台頭した理由として、サステナビリティが常に問われる世界になったことを挙げる。そして「ESGは対話のツールになると思っている」とも話す。

 渋澤氏は投資先と意見交換会をスタートしており、2017年3月に開いた「企業価値研究会」ではSDGs(持続可能な開発目標)がテーマだった。

 また、7月には健康経営をテーマにし、人事、IR、CSR、経営企画が同じ場で議論。「企業同士で学び、悩みを共有する場となっている。同じ会社の中でも見えない価値に気づけたのでは」と、ESGの視点が企業経営にもプラスに働いていると評価する。

 渋沢栄一の玄孫である渋澤健氏は、『論語と算盤』になぞらえ、「論語」と「算盤」といった「かけ離れたもの」を一致させることが富の永続へとつながると、先祖の言葉を復元する。

 「ESG」と「財務情報」も、一見すると違うものを並べたようだが、「社会課題の解決が企業の持続可能な成長に深く関わるようになっている。中長期的な財務価値を上げてほしいからESGが大事」(渋澤氏)と、いまや双方は切り離せない関係だ。ESGは経営の中核テーマとなっている。
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【ファシリテーターのコメント】
METIジャーナルの「ダイバーシティ」の連載からの一部抜粋です。ぜひ全文をお読み下さい。
明 豊