富士通は顧客企業や利用者らとアイデアを出し合いながら新しいビジネスやサービスを生み出す“共創人材”を3年間で1200人養成する。新たに「デジタルイノベータ」と呼ぶ職種を定義し、既存の枠組みにとらわれない“出島”方式を採用。デジタル革新を担う次世代のリーダーを育てる。デジタル革新の旅路を歩む富士通の宮田一雄執行役員常務に、デジタルイノベータの役割や今後の展開を聞いた。

 ―デジタルイノベータを定義した背景は。
 「10―20年先を見据え、システムエンジニア(SE)が何を目指すべきかについて、皆で議論を重ねてきた。最終ゴールとして、たどり着いたのが『ナレッジインテグレーション』だ。さまざまな業界で活躍するSEや営業が持つナレッジ(知見・経験)が当社の強みであり、それらをつなぐことで、お客さんと一緒に新しい価値を提供したい」

 ―コンサルティングとの違いは。
 「ベストプラクティス(最適解)をベースとした提案はしない。そこがコンサルとの違いだ。ハッカソンやアイデアソンなどの共創活動を通して、お客さんが抱える悩みを共有し、何がやりたいかなどのモヤモヤを含めて写像する。その上で、当社の技術のみならず世界中の技術も踏まえ、どうすれば良いかをお客さんに代わって考え、ぶつける。そこから、お客さん自身の閃(ひらめ)きも生まれる」

 ―具体的には。
 「プロデューサー(統括)、デザイナー(提案)、デベロッパー(技術)の三つの人材像を定義し、案件ごとにチームで動けるようにする。もちろん、やみくもに客先に出向くのではなく、背後には技術支援のため、ミドルウエアの部隊を配置した。3月にはミドルウエアの開発者500人が(横浜市の)新横浜地区から(東京都大田区の)ここ蒲田地区に引っ越してきた」

 ―人材育成では「SE4・0」も掲げていますね。
 「今では基幹システムは当たり前だが、40年前、我々はどうやってそれを構築するかで顧客先を奔走し、怒られながら学び、ノウハウを磨いた。しかし、今は当時と違って主要なシステムはおおむね出来上がっている。結果、一から何かを生み出すチャンスが少なくなっている。若い人らも40年前の我々と同じようにお客さんから学ぶ場が必要だ」

 ―デジタルイノベータの育成計画は。
 「まずは30―40代を中心に200人を選抜し育成する。3年後には1200人を目指す。『デジタル・ジャーニー(デジタルへの旅路)』をお客さんとともに歩むことを価値として、対価を得られる人材に育て上げたい」
(聞き手=斎藤実)

【ファシリテーターのコメント】
SE4・0の取り組みは2年以上にわたり、現場主導のボトムアップで推進してきた。デジタルイノベータはその延長線にある。主力SE子会社3社の統合により、トップダウンの経営改革とうまく合致し「大きな話となり、ハーモナイズしている」(宮田氏)という。大河の流れも一滴の雫(しずく)から、といったところだ。
(日刊工業新聞第一産業部・斎藤実)
日刊工業新聞 記者