スズキが3日発表した2017年4―6月期連結決算は2期ぶり増収、各利益は過去最高となった。国内では軽自動車販売が回復し、小型車も好調に推移した。海外ではシェア首位のインド事業が収益に貢献した。4輪車の世界販売・生産は4―6月期として過去最高を記録した。

 国内売上高は軽自動車「ワゴンR」や小型車「スイフト」などの新型車効果で2669億円(前年同期比6・8%増)。海外売上高はインドや欧州での4輪車販売の増加により、6024億円(同19・5%増)と大きく伸びた。

 国内4輪車の販売台数は16万台(同8・1%増)、生産台数は23万3000台(同15・9%増)。欧州向けスイフトの生産をハンガリーから日本に移管した。インドの販売台数は36万8000台で過去最高だった。

 赤字だった2輪車事業は新モデル投入やアジアでの販売好調により黒字化した。18年3月期は期初予想を据え置いたが、上方修正する公算が大きい。

日刊工業新聞2017年8月4日

資本提携に発展するか
 トヨタ自動車とスズキが業務提携の検討に入った。1月に提携が表面化した際には両社ともコメントで否定したが、2015年に独フォルクスワーゲン(VW)との資本関係を解消したスズキが秋波を送っていた。鈴木修スズキ会長は「(トヨタの)豊田章一郎名誉会長にまず相談させていただき、豊田章男社長にも協業に関心を示してもらい、大変感謝している」とコメント。自動運転技術や環境規制強化などの幅広い課題に挑む。

 トヨタがダイハツ工業を完全子会社化したのは、スズキとの提携の伏線との見方がある。ダイハツは軽自動車でスズキと長年、トップシェア争いを繰り広げるライバル。ダイハツの親会社であるトヨタがスズキと提携すれば、株主から「敵に塩を送る」との批判が起こりかねず、完全子会社化によってそれを防ぐ必要があった。

 トヨタはダイハツの完全子会社化を1月に決定、ダイハツは7月27日に上場廃止となり、8月1日付でトヨタの完全子会社となった。さらにトヨタはダイハツと共同で2017年1月をめどに、新興国向け小型車事業を担当する社内カンパニーを新設する予定で、トヨタブランドの小型車戦略の強化を示した。

 一方、スズキはトヨタとの提携を一貫して完全否定してきたが、関係者によると15年春頃にはトヨタに提携を打診していたもようだ。当時、スズキは資本業務提携していた独フォルクスワーゲン(VW)との国際仲裁裁判のまっただ中。「裁判に負ければVWに乗っ取られる」(スズキ幹部)との危機感から、鈴木修スズキ会長は創業家同士長く親交のあるトヨタに水面下で相談したとされる。

 VWとの仲裁裁判はスズキ側の主張が通り、自社株の買い戻しが成立。VWによる経営支配という最悪の事態は免れたが、自動車メーカーの世界的な合従連衡が進む中、スズキが単独で生き残れるか、という課題は残った。

 その最大のカギがスズキの技術開発力だった。「トヨタさんは『プリウス』をあんなに売っているのにウチはまだマイルドハイブリッド」と鈴木会長は日頃からぼやいていた。一方、鈴木俊宏スズキ社長も地元、浜松市の自動運転のプロジェクトへの参加を決めた際、「(他社と比べ)スズキは出遅れていると思う」と、率直に答えた。

 また鈴木社長は新車発表の折などに「環境技術など他社との業務提携は必要」との見解を示していた。実際、15年夏に発売した新型「ソリオ」は、マイルドハイブリッド車に次ぎストロングハイブリッド車も投入予定だったが、ストロングタイプは「技術的課題」(スズキ関係者)により半年以上遅れている。

 ただ、スズキは5月に国土交通省に燃費の測定方法の不正を報告し、以後はその対応に追われた。「燃費問題が片づかなければ次の手は打てない」(大手銀行幹部)との見方が強かった。しかしこの問題も再発防止策の提出や燃費データを再提出し、8月末に国交省の再審査をクリアしたことで提携への土壌が整った。

 トヨタ自動車とスズキの提携は以前から噂が出ていただけに、サプライヤーなど関係者の驚きは小さいようだ。「業務提携は想定内。今後、資本提携に発展するかどうかに注目している」(スズキ系部品メーカー)。トヨタを主要取引先にする部品メーカー幹部は「(提携内容にもよるが)標準品の供給が増える可能性がある。軽自動車部門も盤石になる」と歓迎する。

 先週、ライバルのホンダとの原付バイク事業での提携を発表したヤマハ発動機の柳弘之社長は、トヨタとスズキの提携に関しても「競争と協調。そういう時代になったということだと思う」とコメントした。ヤマハ発も4輪車開発を進めており、「互いに得意な技術を出し合い、(トヨタも含む)他社と協力することもあり得る」と話した。

「トヨタがインドでスズキを活用するというのは失礼」
【会見要旨】
 ―提携の具体的な内容は。資本関係に発展する可能性は。
豊田社長 何も決まっていない。資本提携も含めてこれからだ。産業の発展にとって何ができるかはこれから考える。

鈴木会長 今日は提携の交渉を始めるという発表だ。あらかじめ決めたことはない。スズキもあらゆる分野で開発をしている。そういう意味であらゆる分野と理解してほしい。

 ―スズキはインドが強い。トヨタとしてどう見ているか。
豊田社長 スズキが開拓した市場で、鈴木会長は産業の発展をけん引した第一人者だ。トヨタも東南アジアを開拓し、自動車産業が国を背負っているという思いは共感する。トヨタがインドでスズキを活用するというのは失礼だ。開拓精神は学びたい。

 ―これでスズキの経営の道筋にめどをつけたといえますか。
鈴木会長 企業経営者はこれで一段落と考える人はいないのでは。経営者は挑戦しないといけない。

 ―スズキのどこに魅力に感じていますか。
豊田社長 業界で大きな変化が起きている。変化に対応できる力を磨くことが重要だ。その点、スズキはたけている。先進的な移動社会をどうつくるかで社会的な同意を含めて周囲を巻き込む力が今後重要になる。巻き込む力は鈴木会長から学ぶところが大きい。
日刊工業新聞2016年10月13日

【ファシリテーターのコメント】
凄い業績を叩き出してきたものだ。昨年度4Qで表面化した、国内セグメントの収益拡大のモメンタムをそのまま維持した格好である。牽引しているのが、正常化に向かう品質関連費用、国内生産台数増、軽自動車採算改善の3つだ。インドはGST導入直前の影響でやや足踏みだった。これ程、業績が好調となると自我が強くなりかねない。最も重要なトヨタとの提携交渉を迅速に進め、交渉には謙虚さも必要となってくる。提携交渉の具体化はスズキが先に実現すると考えていたが、すっかりマツダに先を越された格好となった。
中西 孝樹