慶応義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンターとInstitution for a Global Society(IGS、東京都渋谷区)は11日、学生自ら学業の成績やゼミの活動記録などの個人データを管理し、就職活動などに生かせるシステムを共同開発すると発表した。学生は教員による評価や学内外での活動履歴などのデータについて、自ら選択した企業だけに限定して開示できる。学生が個人データを主体的に活用してキャリアを形成できる環境を整える。約2万人の学生と三菱UFJ銀行などが参加する実証研究を経て、2023年度の実用化を目指す。

共同開発するシステムはブロックチェーン(BC)や暗号技術を活用して個人データを安全に管理し、改ざんや企業の目的外利用を抑制する。学生がスマートフォンなどで学業の成績や授業・サークル活動の記録を登録すると、暗号化されてBCに格納される。また、教員や友人など第三者による評価も記録できる。第三者にメールなどで依頼して、第三者が評価を登録する機能を構築する予定。これにより、個人データの信頼性や客観性が高まる。

学生や第三者が情報を入力するイメージ

学生はこうした個人データについて提供依頼を受けた複数の企業の中から、開示先を自由に選択できる。企業ごとに開示する情報の範囲や開示期限を決め、特殊な暗号方式を使って開示する。開示不要になったデータは消去できる。

企業は同システムの活用により、これまで学生から得られにくかった学内外からの評価などを把握し、学生を深く理解した上で、人材の獲得が図れる。新システムにより、個人データの秘匿性を確保しつつ、その利活用により学生と企業のよりよいマッチングにつなげる。

企業が学生のデータを閲覧するイメージ

就活に関わる個人データの利活用をめぐっては、2019年に就活サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが学生の了承を十分に取らずに内定辞退率を予測したデータを企業に販売していた事案が発覚した。同日会見した慶大FinTEKセンターの中妻照雄センター長はそうした事案を念頭に「学生の個人情報を学生自身の手に戻すことが(システム開発の)目的だ」と力を込めた。

実証研究には、三菱UFJ銀行のほか、SOMPOホールディングス、住友生命の参画が決定しており、今後20者以上の参画を目指す。まずは慶大の学生を中心にシステムの利用を始め、実証3年目には他大学10校以上を含む学生2万人が利用するシステムとして実証する。

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