デジタル技術を使って授業価値を高める文部科学省の「大学教育のデジタライゼーション・イニシアティブ」(スキームD)が注目を集めている。誘因力はピッチイベントの斬新なアイデアで、授業評価を基にした学生の科目選びの支援や、電磁気学を数式でなく視覚イメージで表す体験型教材などがあった。教育×技術の「エドテック」で教員、学生、事業家、投資家を集め、社会実装につなげるコミュニティーづくりが期待される。(取材=編集委員・山本佳世子)

アイデアを短時間にプレゼンテーションするスキームDの初回ピッチイベントはウェブで今冬に開かれ参加は500人超となった。応募104件から選ばれた発表は、大学教員が6件、企業が3件、学生が1件だった。

例えばブレーンストーミングなど議論の進展をデジタル技術で可視化するプロジェクトは京都先端科学大学の日本人・外国人教員が発表。企業からは学生の課題設定力やコミュニケーション力を高める支援技術が紹介された。唯一の学生チームは東京大学や米ハーバード大学など日米での学びの経験を生かし、授業評価を基にした学生本位の履修支援システムを取り上げた。イベントは動画配信のアーカイブも整え、これを機に複数の連携案が動きだしたという。

応募段階では、アイデアで技術を探索中なのが41件、技術の実践・実証を提案する構想が46件、実用化に向けた投資や販路を求めるものが17件だった。応募が多かった背景には、新型コロナウイルス感染症の対応で教育現場のデジタル変革(DX)が推進されていることがある。オンライン授業でログのビッグデータ(大量データ)を集め、教育効果の向上に活用するのはその一つだ。

文科省はピッチ案件の連携や実証試験、実用化に向けた展開を支援していく。同時に初回の残りの案件のブラシュアップや、年数回のピッチの継続開催により関係者を増やしていく計画だ。「(スキームDのピッチは)コンテストではなくコミュニティーづくりの仕掛けだ。有識者の評価で採択する通常の文科省事業とも違う」(高等教育局専門教育課)こともユニークだ。

一般に大学関係者による新事業提案のピッチは、研究成果が基になる。今回は教育にも力点があることで、より大学の強みを生かしたプロジェクトといえそうだ。

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