国立研究開発法人は国に頼るだけでは縮小均衡が避けられない。毎年の予算要求で運営費交付金が削られるためだ。これを打開するには外部から資金を獲得する必要がある。

産業技術総合研究所は日本のイノベーション・エコシステムの中核となる。組織機能を強化し、これを社会に還元することでエコシステムを発展させ、2030年以降に事業規模2000億円を目指す高い目標を掲げた。この時の民間資金獲得額は600億―700億円を想定する。現在の100億円強から大きく飛躍する。

この推進力として検討しているのが産総研の外部法人設立だ。すでに理化学研究所が理研鼎業(埼玉県和光市)を設立、産学連携業務を実施している。高度な研究企画や技術マーケティング機能を外部法人に担わせ、多様な収入源を確保する。

産総研も23年春にも立ち上げるため、約1年かけて組織作りと人材獲得を進める。求められる機能は技術営業やマーケティングだ。開発した技術や成果の経済的価値を示して産学連携をコストベースから価値ベースに変えていく必要がある。石村和彦理事長は「M&A(合併・買収)と同じ考え方で、将来価値や現在価値を測れるだろう」と説明する。つまり企業価値査定などの専門人材を新たに集める必要がある。

栗本聡理事・企画本部長は「外部法人を目的ごとに複数立てる選択肢もある」と説明する。産学連携業務や橋渡し機能に加えて、産総研がベンチャーに出資するなどして主体的に社会実装を進めるための外部法人も検討されている。

例えば国の事業として業界の基盤となる技術を開発し、これを自走させるために企業や官民ファンドが出資する例がある。内閣府の自動運転の開発事業からはダイナミックマップ(高精度3次元地図データ)の事業会社が生まれた。村山宣光副理事長は「マテリアルズ・インフォマティクスなどの素材産業の基盤技術も事業化すると開発推進力を維持できる」と指摘する。

外部法人には民間企業を唸らせる研究企画を立て、業界を動かす力のある人材が必要になる。片岡隆一理事は「最高マーケティング責任者(CMO)級の人材に水面下で声をかけ始めている」と説明する。産総研では民間ではできないことができる。「その器として最高の環境を用意する」(片岡理事)。