コロナ禍は働き方やオフィスのあり方、役割を大きく変え、生産性や創造性の高い仕事に取り組むきっかけとなった。自動車会社から“モビリティーカンパニー”への転換を掲げ、以前から働き方・人事改革に取り組むトヨタ自動車も、こうした機運を受け動きを一層加速させている。従業員一人ひとりが活躍できる仕組みや環境とは何か。東崇徳総務・人事本部長に聞いた。

―テレワークが定着しました。メリット・デメリットは。

「通勤時間の削減や、生活環境を尊重した柔軟な働き方ができる点はメリットだ。配偶者の転勤などがあった場合に基本は会社に来ず、必要があれば出張として出社する『長期リモートワーク制度』も導入した。継続勤務できる人が増えたのではないか」

「一方、直接顔を合わせないので新入社員やキャリア採用者が人間関係を構築しづらい、隙間時間なく会議が設定されオンライン疲れが出ている、といったデメリットも見えてきた」

―国内外で出社を促す企業も出ています。

「この2年間、メリットを感じた人の方が多いと思う。後戻りはさせたくない。ただ職場ごとにデメリットはあるだろう。例えばメールをしてもいい時間帯など全社的なルールもあるが、一律ではなく、職場の状況に合わせたルール作りを進めようとしている」

―リアルなオフィスの必要性が問われつつあります。

「出勤時に人が交流して会話が弾むような、人のインタラクション(相互作用)をもっと活性化するオフィスを考えていきたい。来年にかけ東京本社や名古屋オフィスで、フリーアドレス制の導入や目的別のスペース作りなどを検討している」

―デジタル化の進捗(しんちょく)は。

「さまざまな部署が集まるプロジェクトで、アイデアや過去の事例などを簡単に共有できる『情報ポスト』を試験的に設けている所があるが、上司の確認が必要だとか、本当に共有していいのか、という抵抗感がある。組織間や上下間の壁の払拭(ふっしょく)が課題だ。また1人でもやらなければ進まない。苦手意識を持つ層への教育サポートを一番大切にしている」

―働き方が多様化すると人材や仕事の流動性も重要テーマです。

「例えばウーブン・プラネット・ホールディングスというソフトウエア専門のグループ会社があるが、我々が一からソフト人材を育てるより、ウーブンに人を送って学ぶ方が適している。トヨタ単体ではなく、グループや取引先などにも協力してもらい、流動性向上策を検討したい」

【記者の目/次世代の人材活用術カギ】

この数年、トヨタは人事制度改革を活発化している。大企業にそぐわないその迅速さは、トップダウンで組織変革を進めている側面が大きい。壁を取り払った体制は重要テーマだが、巨大組織ゆえに機能別に動く方が効率的な面もあるだろう。次世代に適合した「トヨタなりの人材活用術」がどう進むのか、注目したい。(名古屋・政年佐貴恵)