昨年度上昇率2.2%増と回復力鈍く

働き方改革や一億総活躍社会に向けた官民の取り組みが日本の生産性に負の影響を与えている。日本生産性本部の最新報告書により、2021年度における日本の就業者1人当たりの付加価値額がコロナ禍から回復しきれていない現状が明らかになった。長時間労働の解消や非正規雇用の拡大などは功罪相半ばし、企業経営者にとって時流を意識しながらもそのマイナス面は無視できない。(編集委員・鈴木岳志)

日本生産性本部がまとめた22年度版「日本の労働生産性の動向 2022」では21年度の1人当たり名目労働生産性(1人当たり付加価値額)が807万6000円で、直近ピークの17年度比4・4%減にとどまる。新型コロナウイルス感染拡大による落ち込みは底を打ち、物価上昇を織り込んだ実質ベースの労働生産性上昇率は20年度比2・2%増だったが、回復力は鈍い。

生産性総合研究センターの木内康裕上席研究員は「17年ごろから労働時間を減らそうという働き方改革が活発になり、従来通りの付加価値額で、働く時間だけ減るのが理想だったが、実際はそうならなかった」と背景を読み解く。

また、政府が旗を振った一億総活躍政策の影響も指摘する。「短時間労働の人が増える結果となり、就業者の頭数が増えた分だけ生産性を下押ししてしまった」と木内上席研究員は分析する。

一方、21年度の時間当たり名目労働生産性(就業1時間当たり付加価値額)は4950円で、コロナ前の水準を上回って1995年度以降で最高を記録した。実質労働生産性上昇率は前年度比1・2%増だった。経済活動がコロナ禍から回復してきたことに加えて、欧米勢に後れを取っていた日本企業のデジタル変革(DX)が新型コロナを契機に進展した効果もありそうだ。

木内上席研究員は「これまで全て対面で行ってきた業務について、デジタル化の掛け声は昔からあったものの、なかなか進まなかった。コロナ禍がやらざるを得ないきっかけになったのは間違いないだろう」と推測する。

労働生産性とは労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したもの。日本の低い労働生産性は長年の課題だが、その要因は社会のトレンドや国の政策、パンデミック(世界的大流行)などが複雑に絡み合っている難題だ。