記者の目/ここに注目ダイヤモンドエレクトリックホールディングス(東証プライム上場)は連結子会社のダイヤゼブラ電機(大阪市淀川区)を中核事業会社として、自動車機器、エネルギーソリューション、電子機器の3つの事業を展開する。自動車機器は点火コイルや電装品、エネルギーソリューションはパワーコンディショナ(パワコン)や蓄電システム、電子機器は冷暖房・給湯用着火装置などの製造・販売を行っている。現在、グループを挙げて取り組むのが「車と家をものづくりでつなぐ」というビジョンだ。
□経営トップが明確なメッセージを発信し、結束固める
□育児休業など、女性が働きやすい環境を整備

小野 有理さん
点火コイルは世界で広く販売
再生可能エネルギーを中心とする次世代の電力システムでは、太陽光発電などで生まれた過剰な電力を電気自動車に蓄電し、太陽光発電が利用できない夜間などに電気自動車から電力会社の送電網に供給する仕組みが検討されている。電気自動車と住宅の間で電力を融通し合うことは「V2H(ビークル・ツー・ホーム)」、電気自動車から送電網に電力を供給することは「V2G(ビークル・ツー・グリット)」と呼ばれ、すでに実証実験も始まっている。同HDでは車載充電器など、V2G実現に寄与するための新製品開発にも力を入れる。
同HDの企業としての歴史をさかのぼると、1937年創業のダイヤモンド電機にルーツがある。同社は自動車用点火コイルを初めて国産化したメーカーとして知られる。2018年に持ち株会社制に移行し、翌年にはトランスやパワコンの製造を手がける田淵電機が傘下に入った。さらに2021年にダイヤモンド電機の製造以外の開発や販売部門を田淵電機へ移管し、田淵電機はダイヤゼブラ電機に社名変更した。
現在、同HDの点火コイルの世界シェアは第3位に位置する。また、住宅用蓄電システムの国内シェアはトップである。車や住宅だけではなく、発電システムや蓄電池を持つ工場やオフィスなども電力送電網を介してつながり、地域全体で発電量を管理・分配して、効率的に使うという構想もあることから、今後は産業用パワコン事業の強化も図る。さらに点火コイルでCO2を削減するというアイデアの実現にも取り組んでいるという。「旧ダイヤモンド電機、旧田淵電機の強みも活かし、社会の公器として企業内革命ひいては産業革命を起こす」と小野社長は意欲を燃やす。


働く仲間の幸せを担う責任感を
現在、米国やインドなど7カ国に8つの生産拠点があり、社員数は国内外合わせて4000人を超える。小野社長は常にわかりやすい言葉でメッセージを発信し、コロナ禍で世界的に経済活動が落ち込んでいた時期には、自ら空手の技を披露する動画を配信して全社を鼓舞した。国内では外国人や女性を積極的に採用しており、フレックスタイム制や在宅勤務、育児休業制度の利用を促し、子育て世代が働きやすい雰囲気も醸成する。
「会社が何を目的にし、どこに向かっているかは明確なので、自分で考え行動できる人には働きやすい環境だろう。ただ、ものづくり企業はみんなで頑張ろうという機運や士気も重要だ。働く仲間の幸せを自分も担っているという責任感を持ってしっかり役割を果たすことで、個人としても成長してほしい」(小野社長)
理系出身の若手社員に聞く
中国拠点の董事副総経理として、
小野社長のグループ経営を支える

岡本 南芳さん (2018年入社)
「日本の大学の理工学部を卒業し、技術者として入社しました。その後、自己都合で退社して独学で中国語と日本語の勉強をし、またこの会社に帰ってきました。現在は中国拠点の董事総経理として、働く仲間達には社長の経営理念、方針の元、一緒に職場を掃除したりするなど、行動と共に示すことで、小野社長が推進する世の為人の為の経営を理解してもらえるように心がけています」
会社DATA
所在地 大阪市淀川区塚本1-15-27
設立 2018年10月1日
代表者 代表取締役社長 CEO 兼 グループCEO 小野 有理
資本金 6億6400万円
従業員数 4156人
事業内容 自動車機器、電子制御機器の製造販売
URL www.diaelec-hd.co.jp