国の研究機関と大学が研究開発や人材育成の連携を進めている。福島国際研究教育機構(F―REI)は筑波大学、産業技術総合研究所は東京科学大学と連携協定を結んだ。国研は国の戦略投資を受け、大学にはない待遇で研究者を雇用できる。大学は博士などの学位を授与できる。機能を補完し合い国際的な人材獲得競争に打って出る。(小寺貴之)

「特殊法人として設立されたことで給与面の制約はない。世界から優秀な研究者を集められる」とF―REIの山崎光悦理事長は説明する。F―REIは福島復興再生特別措置法に基づいて設置された特殊法人だ。そのため研究者年俸の固定給は最大3500万円、成果に応じた業績給を含めると4700万円まで提示できる。研究を支える専門職も業績給を含め3200万円と日本では破格の待遇になる。さらに理事長の判断で積み増すことが可能だ。個々に協議されることになるが「世界からトップ研究者を集めるには2億―3億円は必要」と山崎理事長は強調する。

2029年度までに50人の研究室主宰者(PI)を招いて全体で700人ほどの研究組織を作る。研究者1人を支える専門人材は日本平均の3―5倍になる。待遇と研究環境の両面で世界と戦えるレベルになる。筑波大とは研究と教育、社会実装を含む包括的な連携協定を結んだ。永田恭介筑波大学長は「総合大学としてF―REIにない研究分野を補完できる」と説明する。

東京科学大と産総研の締結式。大竹尚登東京科学大理事長㊧と石村和彦産総研理事長

産総研は東京科学大と包括連携を結んだ。産総研は半導体や量子技術などの経済安全保障分野で1000億円を超える大型投資を受ける。世界でも指折りの研究環境ができる。産総研の石村和彦理事長は「修士卒で採用した研究職員に東京科学大との共同研究で博士号を取得させたい」と期待する。働きながら博士号が取れるため産業界に流れていた優秀層を獲得できる。

国研と大学が組むことで世界のトップ大学と比肩する待遇や研究環境が整う。東京科学大の大竹尚登理事長は「国際的な人材獲得は大学として進めてきた。今後は相乗効果で両機関の魅力を高めていきたい」と説明する。おりしも米国からの頭脳流出など、世界規模で研究者の流動性が高まっている。この状況で国研や大学単体では難しかったオファーが連携で可能になった。トップ研究者の確保だけでなく、研究を支える技術者や専門人材、起業支援チームが鍛えられ、海外の人的ネットワークに接続される効果もある。大学のエコシステム(協業の生態系)が世界とつながるか、注目される。