カメラ市場の命運を握っているのは若者と女性―。スマートフォン全盛の中、キヤノンの「インスピック」ブランドや富士フイルムのインスタントカメラ「インスタックス(チェキ)」は、既存のデジタルカメラとは異なる独自の路線で若者や女性のカメラ需要を開拓している。新規層の開拓には何が必要か。両ブランドに共通するのは、“スマホを使ってスマホにできないことをする”だ。

キヤノンマーケティングジャパン(MJ)が手がけるインスピックブランドは、2018年発売のスマホ用小型フォトプリンターから始まった。シールタイプの用紙が手帳や日記の装飾やステッカー作成などのニーズに合致して、女性を中心に支持を獲得。今月下旬には、新コンセプトのデジカメ「インスピック レック」を投入し、さらなるユーザー拡大を図る。

スマホに連動

新製品は防水や耐衝撃性能を備えており、アウトドアや育児での利用を想定。画像や映像を確認するディスプレーはなく、カラビナ(衣服やかばんに付けるための金具)と一体化したデザインが特徴だ。撮った画像や動画は、本体をスマホやタブレット端末に連携させなければ確認できない。「映像エンジンもフォーカス機能も搭載していない。社内でも議論したが、コンセプトを重視した」(イメージコミュニケーション企画本部カメラ商品企画部の浅葉森氏)という。

EOSと別軸

インスピックは「デジカメの『EOS』とは全く別軸にあるブランドだ」(松阪喜幸取締役専務執行役員)。EOSシリーズは「快速・快適・高精度」が開発の基本コンセプト。だがインスピックは、撮影の楽しさを新たな形で提供することを重視。写真の確認作業は後回しにし、撮影した時の体験に着目した。操作方法や機能を単純にすることで、故障や撮影の腕前を気にすることなくシャッターを切る楽しさを体験してもらう狙いだ。

カメラを手に取るハードルを下げることも新規層へのアプローチに欠かせない要素。松阪専務は「インスピック単体でも撮影の楽しみを広げたい。新規層はEOSのターゲットよりもはるかに大きい」と語る。同社は今後も新コンセプトの製品を投入する予定。いずれも“キヤノンらしくない”製品に見えるが、撮影文化の醸成という信念は揺るぎなく受け継いでいる。