広岡浅子という人物をご存じでしょうか?
広岡浅子は、大同生命の創業者の一人であり、NHKの連続テレビ小説「あさが来た」のヒロインのモデルとしても知られています。明治時代から昭和初期にかけて、女性の地位向上を訴え、その活動が現代の日本における女性の活躍の基盤を築く一助となりました。彼女の座右の銘は「九転十起」。この言葉は、どんな逆境にあっても決してあきらめることなく、不屈の闘志で何度でも立ち向かうという意志を示しています。広岡浅子の生涯は、この信念に基づいていました。現在の日本では、ビジネスや政治の舞台で女性が積極的に活躍しており、その背後には彼女のような先駆者たちが切り開いた道があります。彼女の「九転十起」の精神は、女性が挑戦し、成果を上げ、社会で輝くための力強いメッセージとなり、その遺産は今もなお続いています。彼女の熱意ある活動が、女性が権利を追求し、社会の中で存在感を発揮する基盤を築き上げ、今日の多様かつ包括的な社会を形成しているんですね。
今日は、広岡浅子が主役の学習まんが偉人伝、「小学館学習まんが人物館「広岡浅子」」(ベトナム語版)の読書感想文コンクールの授賞式に参加してきましたので、その様子をレポートいたします。

まず始めに、主催者である大同生命保険株式会社 代表取締役社長 北原睦朗氏が登壇し、開催の経緯についてお話されました。大同生命保険は創業121年目で、創業者の一人である広岡浅子の精神を受け継いでいます。北原氏は、大同生命保険が主に中小企業の保険を扱っていることを強調し、中小企業が日本の企業の99%以上を占め、労働人口の7割、GDPの半分を占める重要な存在であることを述べました。また、日本は少子高齢化が進む中で、ベトナムからの労働者が46万人もおり、外国人労働者では最も多いと話し、大同生命保険は中小企業とともに歩んでおり、ベトナムの方々に日本の歴史や文化に関心を持ってもらいたいとの願いを述べました。

続いて来賓を代表して、駐日ベトナム社会主義共和国大使館 二等書記官教育部長のヴー・テイ・リェン・フォン氏と民間外交推進協会 専務理事 元駐ベトナム日本国大使の湯下博之氏からご挨拶がありました。フォン氏は、ベトナム人は男女問わず日本で働きたい、という夢を抱く人が多くいると話し、広岡浅子さんの夢に向かい困難に立ち向かう姿勢は、ベトナム人に勇気を与えるだけでなく、日本人の勤勉さも学ばせてもらったと述べました。また、湯下氏は、日越外交関係樹立50周年記念として開催された本コンクールに喜びを表明し、栄えある受賞者に対して心からのお祝いを述べ、このようなイベントが日越の相互理解と友好親善を深め、両国関係の発展に寄与すると信じていると述べました。

続いて、読書感想文コンクールの授賞式が始まり、まずは入選に選ばれた4名のうち、日本在住の2名が登壇されました。

左から、審査員の中山鉄平氏、トリン・ティ・ミン・トゥーさん、ホアン・ティ・クイン・アインさん。トゥーさんは現在、沖縄大学の交換留学生として在学しており、卒業後は日本で働きたいと話し、自分が賞を受け取れるとは思っていなかったので、聞いた瞬間は本当にうれしかったと語りました。アインさんは、静岡県の日本語学校で日本語を勉強し、埼玉県の大学を卒業後、現在は群馬県の高崎市で働いています。スピーチでは大勢の前で話す機会がなく、非常に緊張していますが、賞をいただいたことで、このような貴重な経験ができ、非常に良い経験になりましたと述べました。

また、入選4名のうち、ベトナム在住の2名も紹介されました。左からラオ・ティエン・キムさん、ブイ・ヴァン・ジャンさん。

続いて優秀賞の発表です。優秀賞は全部で5名。

まず紹介されたのは本コンクール唯一の男性受賞者であるグエン・ゴック・サンさん。ベトナム・ハノイの大学に在学中に日本語と日本の法律を学び、現在は大阪大学で勉強をされている彼は、広岡浅子さんが成し遂げたことに非常に感動し、彼女を支えた家族の存在が自分の心まで温かくしてくれたと語りました。

2人目の受賞者、グエン・ティ・トゥ・チャンさんは、ベトナムの保険会社で勤務した後、今年の4月に留学生として日本に来たばかりです。生命保険会社での勤務経験があることから、広岡浅子さんの本を読んだ際に非常に共感し、まだまだ保険文化が浸透していないベトナムに保険の大切さを広めていきたいと語りました。

続いてはファン・クイン・ウインさん。 大阪府立大学を卒業後、通訳や日本語教師などを経て、現在はジェトロのホーチミン事務所で働いています。当日は仕事の都合で来日ができず、ビデオメッセージでの紹介でした。男性が中心だった社会で、女性に対する多くの規制に縛られながらも立ち向かう広岡浅子さんの姿に非常に刺激を受け、本日は皆様と直接お会いできないのが残念ですが、いつの日か別の機会でお会いできることを信じ、それまでには広岡浅子さんのように逆境に立ち向かう力をもっと鍛えていきたいと語りました。

4人目の受賞者、ブイ・カイン・リンさんは、ベトナム ハノイの中学、高校、大学で日本語を学び、大阪大学の大学院を卒業し、高知県庁で国際交流員として働いています。仕事で落ち込んでいた時期に広岡浅子さんの本を読み、九転十起の精神から、乗り越えられないものはないと信じるようになりました。広岡浅子さんを知るきっかけになった本コンクールに対して、また関係者の皆様にはとても感謝していると話しました。

最後の受賞者はグエン・ド・アン・ニェンさんです。ベトナム ホーチミン出身で、沖縄の大学に留学後、ホーチミンの大学で日本語の講師を務め、現在は沖縄の大学で日本語講師をしています。また、これまでに宮沢賢治や福沢諭吉、樋口一世などの作品約20冊をベトナム語に翻訳し、ベトナムで出版されています。本コンクールを通して広岡浅子さんという素晴らしく、見習うべき女性を知ることができて何より嬉しいと語り、2人の娘の親として、また一人の講師として、彼女を見習って教育活動を続けていきたいと述べました。

続いては特別賞の2人の紹介です。今回のコンクールの応募作品は総じてレベルが高く、審査では最後まで審査員を悩ませる大接戦となりました。受賞こそ逃したものの、優秀な作品が非常に多く、その中で日本の中小企業で働くベトナムの方を応援する観点から、技能実習生の応募の中から、上位2作品が特別賞として選ばれました。左から審査員の岩崎日出雄氏、群馬県で技能実習生として働くホアン・マイ・チャンさん、名古屋市で技能実習生として働くヴォー・ティ・ミー・リンさん。

最後は最も高い評価の1名に送られる最優秀賞の表彰です。ダン・ジェウ・ヒエンさんは、大学卒業後、約4年間ベトナムで複数の日本企業で働き、昨年から新潟の大学院に入学しています。日本に来て一番驚いたことは、例えば花火大会などの場所取りで、レジャーシートを敷いた場所を離れても、後から来た人たちはそれを避けて場所を選ぶなど、他人の権利を尊重する文化だそうです。大学卒業後は日本での就職をしたいとのことでした。スピーチでは、私の感想文を高く評価していただきありがとうございますと感謝の意を述べ、広岡浅子さんは女性だけでなく全ての人が学ぶべきところが多く、広岡浅子さんの自伝がベトナム語に翻訳されたことで、その思いがベトナムに広く広まっていくことを期待し、最後にはこの素晴らしいイベントを開催していただいたことに感謝の意を述べました。

閉会の挨拶では、審査員を代表して、ベトナム文学翻訳家であり、元大東文化大学国際関係学部 国際文化学科准教授の加藤栄さんから本コンクールの総評がありました。本コンクールは3月から6月までの4か月間で、日本とベトナムで合わせて655もの応募がありました。日本とベトナムの応募はほぼ同数で、日本では全国各地から、ベトナムでもハノイやホーチミンなどの大都市だけでなく、様々な地域からの応募があったことに非常に喜んでいますと語りました。応募者の男女比については、男性が40%、女性が60%でしたが、今回の課題図書が広岡浅子を主人公にした本なので、審査が進むにつれて女性の作品が残っていったと話し、また、九転十起に感銘を受けたという感想が非常に多かったと語りました。近年、目覚ましい経済発展を続けるベトナムですが、大都市以外の地方では、まだまだ昔ながらの風習が残っており、広岡浅子が直面した困難に似たような環境があることが指摘されました。また、近年は日本でもベトナム人が多く活躍しており、街中でベトナム人を見かけることも珍しくなく、今回のコンクールの成功も、日越の親密な関係ができたからこその結果で、非常に嬉しいと締めくくりました。

今回の授賞式に参加して、心に残る素晴らしい瞬間に立ち会うことができ、感動と共感の渦に包まれた一日でした。
開会の挨拶から始まり、受賞者の広岡浅子さんや日本を思う言葉から、日本とベトナムの友好関係がどれほど深まっているかが感じられ、両国の連帯を実感しました。 今後もこのような素晴らしい機会が増え、日越両国の結びつきが一層深まることを期待しています。