―[S級グルメ]―

「鍋は大勢でつつくもの」という固定観念から解き放たれ、しゃぶしゃぶ界にも「一人一鍋」の時代がやってきた。今年の秋、より多様なしゃぶしゃぶに巡り合う!

◆回転式あり、カウンター式あり、そしてリーズナブル!一人しゃぶしゃぶを気ままに楽しむ!

 酷暑から一転、ようやく食欲の秋満開!と思ったら、急に肌寒くなる日も。こういった日は「鍋」といきたいが、大勢で鍋をつつくのは難しい雰囲気が……。

 そんなご時世だからこそ、頼りになるのが、一人鍋専門店だ。

 まずは比較的新しい店から。新宿駅西口に「ひとりしゃぶしゃぶ1(いち)」という店がある。

 入り口を抜けるとそこには、店内中を巡る回転レーンが! そう、この店は鍋のメインの具材となる肉を回転寿司のようなレーンに流しているのだ。

 肉の種類も大充実。お約束の「和牛芯ロース」はもちろん「牛タン」「イベリコ豚」「鴨ロース」などマニアックな肉まで十数種類が用意されている。しかも回転レーン上に流れている肉は、冷却機能つきのドーム型のフタで覆われている。

 気になる衛生面や、回っている間の肉の熱ダレも心配ご無用だ。

 注文は、入店時に目の前に置かれるタッチパネルにて。目の前の仕切り鍋に注がれる出汁を選ぶ。

「一番人気は『焼きあご出汁』(150円)。続いて3種の辛さの『特製辛出汁』、『柚子胡椒出汁』(200〜300円)なども人気。出汁にしっかり味がついているので、ポン酢や胡麻だれいらずです」(料理長の佐藤清孝さん)

◆8種の出汁×14種の肉だけでも組み合わせは112種

 全8種ある出汁から2種類をセレクトしたら、あとは流れる皿を取るもよし、タッチ式メニューから好みの肉や具材を注文するもよし、おなじみのスタイルだ。

 一枚30gが基本だが、ランチ時の「ランチ盛り合わせ」は倍の60gで300円とおトクな盛り込み。夜にはディナータイム限定の「日替わりブランド牛」が40g500円で提供されていて、昼と夜では違う楽しみ方ができる。

 広報の仲田彩花さんは「私は、すき焼き出汁で牛肉を食べて〆にうどんが好みですが、『辛味噌出汁+チーズトッピング+ごはん』でチゲのような味に仕立てたり、『辛味噌出汁+肉味噌トッピング+豆腐』で麻婆豆腐のような味に仕立てる」という客もいるとか。

 8種の出汁×14種の肉だけでも組み合わせは112種。さらに10種の野菜、4種のトッピングなど自分だけの味わいが構築できる。

▼ひとりしゃぶしゃぶ1の各種しゃぶしゃぶ
焼きあご出汁150円、特製いち辛出汁200円、鴨ロース250円(全て税別)など。出汁は同種なら注ぎ足しOK。ランチ時は白米、平うどん、中華麺が無料。

◆創業50年目。銀座の一人しゃぶしゃぶの老舗

 新宿には無限の組み合わせが楽しめる新しい一人鍋の店がある。

 歴史変わればメニューも変わる。’71年以来銀座で営業を続ける「しゃぶせん」のお品書きには老舗の機微が詰まっている。

 すべてカウンター、85席という広大な店内には各席に埋め込み型の鍋がセットされ、一人しゃぶしゃぶを心置きなく満喫できる。

 しゃぶしゃぶは、終日注文できる「定食」が5種類、「ランチ」が6種類あるが、できれば「黒毛和牛リブロース」が盛り込まれたコースを選びたい。

 というのも、この肉が店特製の胡麻だれにベストマッチ。「A5」ではなく、サシを抑えた「A3」で和牛の肉質が噛み込むほどに、自家製の胡麻だれと混じり合う。

 数種類の香辛料で仕上げた香り豊かな胡麻だれ。そこにラー油をふた回しして、小口に切りの長ねぎをどっさり和える。

 あとは、約1㎜という薄さに切られた肉を箸で丁寧にすくい上げ、目の前に沸く、牛と野菜の出汁に泳がせる。薄ピンクに染まった肉に胡麻だれとねぎをたっぷりつけて口に運べば……。ああ、至福の瞬間が訪れる。

 そんな黒毛和牛とのセットに採用された霧降高原豚も肉質と脂身のバランスに定評のある極上品。するすると胃袋に落ちていく。

◆〆は中華麺とあずき粥の2択

 具を食べ終えたら、出汁を椀に入れたスープに仕立ててくれる。そこに残りの胡麻だれをたらり。スープの味が一段と深くなる。

 〆は中華麺とあずき粥からの2択となるが、支配人の宮野文夫さんおすすめの「あずき粥に砂糖を2〜3杯」をお試しあれ。想像を超える味わいが楽しめる。

 一人でよし、連れ立ってよし。専門店でありつく秋の一人鍋は、自らの領域と可能性を広げてくれる、最高のレジャーでもある。

▼しゃぶせん銀座B2店のしゃぶしゃぶ定食
終日注文可能な「黒毛和牛リブロース100g+霧降高原豚プレミアム50g」の定食4500円。名物「アスパラ豆腐」や〆の食事ほか葛切りの黒蜜も。ランチ1200円〜。終日メニュー2700円〜(全て税別)。

◆一人鍋の店の自慢の工夫あれこれ

 業態からして工夫満載の「一人鍋」。もちろん細部にもさまざまな工夫がなされている。

「ひとりしゃぶしゃぶ1」ではレーン上の皿にかぶせるフタの上部にドライアイスを仕込む仕掛けを開発し、意匠登録取得済み。

 銀座「しゃぶせん」にも、裏薬味のおろしにんにくや〆の「あずき粥+砂糖」など、支配人が「いつからなのか……」と首をひねる品も多数。

 新店のアイデアから、客の要望を汲み続けた老舗の懐まで、食の工夫はとどまるところを知らない。

<取材・文/松浦達也 撮影/織田桂子>

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