無印良品といえば、衣服や生活雑貨、食品など、幅広い品揃えが魅力のブランドであり、取り扱っている商品アイテムの数は約7000品目と非常にバラエティ豊か。そんな無印良品が今、SNS上で「カレー屋」と呼ばれている。

◆全45種類! 圧巻のラインナップ

 無印良品では45種類(2021年1月現在)のカレーを展開。だが、驚くべきはラインナップ数の凄まじさだけではない。定番のビーフカレーやキーマカレー、インドカレーはもちろん、タイやマレーシアのカレーなど、珍しい商品も取り揃えている。

 しかも、いずれのカレーも現地で本場の味を学んで手掛けた本格派。肝心の味でもカレー好きを唸らせるクオリティになっているのだ。

◆インドで実施したリサーチが転機に

「無印良品のレトルトカレーは1990年代には登場していましたが、当時はいわゆる、普通のビーフカレーでした」

 そう振り返るのは良品計画でカレーの開発を担当する日向桃子さん。転機となったのは、2002年に発売したタイカレーだった。

「“商品を通して世界の食文化を伝える”をコンセプトに、化学調味料を使わないタイカレーを作りました。そして、2009年に今も人気のバターチキンが誕生。その後、2012年に当時の担当者が、初めてインドにリサーチに行ったんです。そのときの経験を生かして、“素材を生かしたカレー”という現在も続くシリーズが生まれ、最近では『カレー屋』と言っていただけるようになりました(笑)」

 2012年以降、無印良品のカレーは現地でリサーチを行い、開発することが定番になったという。徐々に訪問する国が増えていき、ラインナップは自然と増えていった。

◆現地で得た知見を取り入れて商品開発

 カレーの新商品を開発するうえで特にこだわっているのが「現地の味を再現すること」。スパイスの入れ方ひとつとっても、現地でのリサーチが生きている。

「使うスパイスの種類や調合の仕方も大事ですが、どのタイミングでスパイスを入れるのかも、味や香りを大きく左右します。最初に入れて香りを立たせるのか。それとも後に入れて香りを立たせるのか。ひと口にスパイスといっても、役割がぜんぜん違うんですよ。それに珍しいスパイスを使うときは、実際に現地に行ってみないとわかりません」

◆狭き門をくぐり抜けて年10種程度が商品化

 現地で新しいカレーを発見しても、すべてを商品化できるわけではない。そこにはレトルトカレーならではの難しさもある。

「素材の中にはレトルトカレーで使うには高価なものもありますし、手に入りにくいものもあります。価格や入手の問題をクリアできても、レトルトに向いていない食材もあって。たとえば、ナスのように煮込むと溶けやすいものは具材感として残すのが難しい。また、エビは水分が出てしまうので、大ぶりのものを使っても小さくなってしまいます」

 多いときには数十種類のカレーをまとめて試食することもあるという日向さん。「野球の千本ノックみたい」と笑うが、そこから試作品が作られるのは3割程度。狭き門をくぐり抜けた年10種類程度(リニューアルを含む)のカレーが、無印良品のラインナップに追加されている。

◆聞き慣れない新メニューにも果敢に挑戦

「2020年は“タイカレー”をテーマにグリーン、プーパッポン(蟹と卵のカレー)、マッサマンをリニューアル、イエローとレッドは以前展開があったものを再度新商品として発売、さらに新商品としてゲーンパー(森のカレー)をリリースしました。ゲーンパーはタイ東北地方発祥のカレーで、ぶなしめじやたけのこ、きくらげなど森の恵みと、鶏肉の旨みを生かしているのが特徴です」

 無印良品のゲーンパーは現地の味を手本に赤唐辛子の辛さとハーブの風味を効かせた意欲作だが、ユーザーの反応を聞くまでは不安も大きかったそう。

「無印良品のカレーに期待してくれる方が増えているのはたいへん光栄なのですが、その反面、ハードルが高くなっているとも感じていて……。ゲーンパーは珍しくて面白いと思いましたが、聞き慣れないと味の想像ができませんよね? マニアックすぎないかな、受け入れられるかなと、おっかなびっくりで発売しました(笑)」

◆2021年にも新商品を展開予定

 日向さんの心配は杞憂に終わり、ゲーンパーの売れ行きは好調。新型コロナウイルスの影響による外出自粛もカレーの売り上げを後押ししたが、喜んでばかりはいられない。一時期、インドがロックダウンをしたことでスパイスの入手が困難になるなど、生産停止の危機に瀕することもあった。

「品薄になってお客さまにご迷惑をおかけしたこともありましたが、何とか乗り切ることができました。世界中にはまだまだ知られていないカレーがたくさんあるので、私たちが自信を持って紹介したいものを商品化していきたいと思います。2021年も新たなテーマをもとに新商品を展開していきますので、ご期待いただけるとうれしいです」

<撮影/山川修一>