とんこつ、塩、みそ、しょうゆ…ラーメンのジャンルは数あれど、今、スタミナラーメンが、新たな流行の兆しを見せているという。ラーメンキャリアが長い木村拓さんのナビゲートで紹介していきたい。

◆スタミナラーメンの元祖・天理ラーメンとは

さて、本題に入る前にスタミナラーメンはなんぞや、というところから入りたいと思う。そこで天スタと言われる天理ラーメンを軽くおさらい。もともとは、濃いめの味を求める労働者の勤務後の食べ物として、屋台からスタートした天理スタミナラーメン。スタミナラーメンの代表的なお店は関西奈良の彩華ラーメンと天理ラーメン。関西の方々は、既食や見聞きした方は多いのではなかろうか。

また、他の地域で有名なスタミナラーメンは、水戸のご当地ラーメンとなる。関東の方にはこちらの方が身近なのではないだろうか。しかしながら、高田馬場にあった天スタは移転のための良い物件が見当たらず敢えなく撤退。水戸スタミナラーメンの名店「松五郎」も当時東京進出を果たしたが1年持たず撤退。それでもどちらにも属さない新たな潮流のスタミナラーメン火付け役が今回紹介する3店。独自解釈によるニュースタミナラーメンというジャンルが熱い!

◆新しいスタミナラーメンの火付け役
すず鬼(き)@三鷹

三鷹で一際目立つ行列。地下のお店から地上まで延びる行列は三鷹で異彩を放つ一杯によるもの!

私自身、最初は並ばず食べられたが、時間の経過と共に行列が延びに延び、今は1時間待ちが当たり前。一時期は整理券配布もあったほどの人気ぶりだ。オーナーの鈴木さんのお店は二毛作営業で昼は「すず喜」、夜は業態チェンジをして「すず鬼(き)」に変身。

2019年11月からオープンしてすぐにあっという間に来る人々の胃袋を鷲掴みなのだ!お昼に提供される鶏スープをベースにスタミナ変化する「スタ満ソバ」。魔法のニンニク・ショウガは当たり前、背脂をあるなしも選べる。見た目で判断するわけではないが、何とも旨そうではないか。食べる前から既に行列の理由がわかる気がする。すでに常連客の中には二郎風コールをするような強者も多く、ちょっと驚いてしまった次第なのだ。

この油分感、重層感、玉ねぎ・ニラ・豚バラ・背脂・ショウガがその湯に浸る。もう香りがたまらない。

◆食欲をそそる豪腕のような平打ち太麺

平打ち太麺がこのオイリーなスープを絡め取り、存在感・ボリューム感が圧倒的!啜ってOK、スープを飲んでOK! と、とにかく忙しい。重層的な旨さの掛け合わせが次から次へと迫ってくるのだ!

◆ご飯との相性もバツグン!

ハシが止まらない! 汗が止まらない!外は寒いのに店内は、いや自分のカラダがヒートアップしているのがわかる。

途中でこのしょっぱ辛いスープと一緒にご飯を食べたくなってしまう。ご飯との相性の良さは見ての通りなのだが、意図的にスープと具材を残してもらいたい。丼にして最後までキレイに食べてしまうのだ。あっという間に完食・完飲の満足感!うずらの卵は箸休めとして是非ともオーダーをしてもらいたい。

いや〜食べて終わってすぐに訪れる至福の時、しかしながら、すぐにまた食べてしまいたくなる中毒性が止められない!まずは1度でも実食してもらいたい!

◆青森ネギラーメンとアリランと二郎のハイブリッド
中華そば たた味@小伝馬町

2店舗目はオープン1年目の比較的若いお店「たた味」。すず鬼と比較すると似て非なるもので少々あっさり目なスタミナラーメンを提供する。しかしそれでも、濃厚・旨みを多分に含む!お昼も夜も「すず鬼」に負けず劣らずの行列を作る人気店に昇華。オープン1年でこの人気はやはりスタミナラーメンが流行りの兆しを見せている証左であろう。両店に共通しているのは、辛いスタミナラーメンがメニューにしっかりあること。「辛い」というグルメ業界人気のキーワードをしっかり押さえているところも、店主の先見の明というか人気の証である。

オーダーした「スタミナ中華そばセット」、「すず鬼」と同じくもう既に旨そうではないか!辛スタミナ中華そばをセレクトしない限りは辛くはないのだが、別添のオリジナル辛味オイルが「あさ利」を心を込めてオマージュ。因みに「あさ利」とは、青森県青森市にあるレジェンド級なラーメン店で、私も昔からお世話になっている県内随一の辛いラーメンをネギいっぱいで提供しているお店なのだ。

◆玉ねぎの旨味がたまらない

そして、アリランとは千葉。アリランラーメンに着想を得て、玉ねぎをじっくり炒めて旨みに変えている。この玉ねぎの旨味もこの中華そばの一助に。一口食べるとその旨さがわかる。豚鶏牛のハイブリッドスープがその旨みの原点。やはり手が止まらない。ついで生卵をすき焼きつけ麺風に食べ、徐々にスープが馴染み始め、二郎コールのようにオーダーする無料トッピングであるニンニクもスタミナ感を出してくれる。(もちろん、ショウガでも可)

スープの旨味に負けないのが、この浅草開化楼の太麺。こちらは、他店ではつけ麵などで使われることもある麺。馴染みだしたスープにこの太麺が映え、啜りがい相応しい麺である。仕上げとして、「あさ利」を意識した辛味オイル(自家製香唐辛子)を投下するのだが、この辛さがまた違った旨さを提供してくれる。

そして、気づくとあっという間に麺がなくなっていた!お店側がオススメしている食べ方順で最後は、残ったスープと具材をセットのライスに乗せ生卵をかけて、すき焼き風丼が完成してラストを迎える。

この完成度に頭が下がる思い。終始、魅了させられた評判に違わぬ一杯でありました。

◆限定ラーメンから昇格!
麺屋宗 高田馬場本店@高田馬場

東京のラーメン激戦区代表である高田馬場。その栄枯盛衰が激しい高田馬場で10年超選手にまで上り詰めた「麺屋 宗」。高田馬場本店では、その流行の兆しを感じ取ったのか、4月16日(土)からなんと夜営業でスタミナラーメンを始めたのだ!これは朗報とばかりに、早速胃袋に収めに行ってきた!

こちらは前述の「すず鬼」と比較すると落ち着いていて洗練の図られたスタミナラーメンだ!昨年に限定メニューで提供されていたが、あまりの人気ぶりで店主柳さんは昨年からレギュラー化を考えていたそう。そのスタミナラーメンは、普段提供されている塩ラーメンに使用している鶏スープがベースになっている。島根県出雲産のたまり醤油を使い、その醤油の甘さが一添えしてくれる、今回紹介した他二店とはまた違った味わいになっている。故に他二店とは差別化できて口内ではまた違った感覚が味わえるのではないだろうか。

◆黒いスープに黄身が映える

まず、オーダーは、にんにくのあり or なしをセレクト。ついで、タマゴを卵黄 or 全卵で選ぶ。今回は、全卵をセレクト。
この卵は、地養素入りのマキシマム濃いたまごという銘柄で黄身が濃い。黒いスープに黄色がマキシマムに映えるではないか!

前述した通り、黒いスープからは醤油の芳醇さが立ち上り、鼻をくすぐる。また他2店よりニラが多く、豚バラ肉と共にスタミナ感をアップ!特に丼で目立つのがプルプルの醤油タレで煮込まれた大ぶりな背脂!! 旨みの足し算はこちらがポイントになっている。

食べ進めるうちに刻みニンニクが馴染んでくる。背脂とニンニクの黒い醤油スープを徐々に吸う平打ち麺もスタミナ感を纏ってくれる。やはり、背脂×ニンニクは最強説!そして、その背脂ニンニク醤油スープの海に生卵を解き放つとちょうど良いマイルドなスープに仕上がり、やはり丼は気づくと空っぽに。

他二店と同じく、ライスは外せないサブメニューで背脂ライスにして食べたらより旨い!食べなければ、別料金にはなってしまうがおかわり背脂ライスもオススメしたい!

いかがだっただろうか。ひとえに「スタミナラーメン」といっても、味はそれぞれ3店共にそれぞれの特徴が出ていて、面白い。食べ比べはもちろんのこと、これから流行るであろうスタミナラーメンブームの胃袋助走を予め始めようではないか!ご馳走様でした!!

【木村拓氏】
年間350杯超、ラーメン食べ歩き20年以上、全国47都道府県を食べ歩き、通算7000杯以上のラーメンを食べ歩く石山勇人監修の「最新ラーメン本」の元編集長。ラーメン業界・出版業界のキムタクと呼ばれる。雑誌・新聞・TV・Webと幅広く活動中。
ぐるなび「LIVE JAPAN」寄稿、「みんなのランキング」寄稿、日本テレビ「火曜サプライズ」出演、テレビ朝日「お願い! モーニング」出演etc.
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取材・文/日刊SPA!編集部