新入社員が今年もやってきました。そこで日刊SPA!では反響の大きかった記事の中から厳選した、モンスター新入社員ベスト10を発表。今回はブラック企業編。新入社員だけが悪いばかりではなかった、驚きのエピソード第2位はこちら!(初公開2019年5月3日 集計期間は2018年4月〜2021年12月まで)
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 もはや春の風物詩と言えるのが「モンスター新入社員」にまつわる様々なエピソードだろう。時代の変化、いや進化とともに、高齢者と若者というレベルではなく、たかだか10歳くらい離れているだけでも、若者と先輩の間には常識や考え方の大きな隔たりが生まれているようだ。今年もそんな“モンスター”に辟易している同志たちがたくさんいる。

◆上司に負けじと“自分の権利をしっかり主張する”新入社員

「さあ今日もやっとランチタイム、というタイミングで、課長が新入社員に大声で怒鳴っていました。なんかやらかしたか? と思っていたのですが、新入社員も負けじと言い返しているので何事か? と話を聞いていたのですが……」

 都内の鉄鋼メーカーに勤める鈴木魁斗さん(20代・仮名)は、社会全体で禁煙が叫ばれる今も喫煙者。会社の喫煙所が一昨年に“社員の健康増進”などの目的で廃止され、どうしても吸いたい場合は、会社の入るオフィスビル2階の共用部にある喫煙所を利用するしかなくなった。

 ちなみに会社はビルの20階以上だ。会社を出てエレベーターを待ち、2階に降りてタバコを吸い、またエレベーターに乗って戻って来れば、どう短く見積もっても15分はかかる。朝やランチタイムになればエレベーター10分待ち、なんてこともザラで、一度の喫煙に20分以上かかる。怒鳴られていた新人はなんと、1時間に必ず一度は喫煙がしたいと自分の言い分を述べていたのだが、ひどい時には30分以上、喫煙のために離席するという。

「見兼ねた課長が怒る理由はわかるし、至極まっとうなことを言っていると思いましたが、新人は“タバコを吸うのは権利”とか“喫煙に時間がかかるような仕組みの方が問題”と折れなかったのです。しまいには、喫煙者の役員の名前を出して、“あの人だって1時間に一度タバコを吸っているのに指摘しないのか?”と会社のアンタッチャブルな部分まで堂々と課長にぶつける始末」

 結局、新人の喫煙は黙認されるようになったが、喫煙に行く前には大声で「タバコいってきまーす」とこれ見よがしにいうものだから、課長の面目は丸つぶれ。自分の権利をしっかり主張する、という“ニュータイプ”なのか。お次も、そうしたニュータイプ……。

◆定時を過ぎた瞬間、オフィス内をスマホで撮影

「弊社は18時が定時ですが、年度末、年度始めは何かと忙しく残業があります。小さな会社なので、多少の残業はサービスでやるのが当たり前になっていましたが、新人が噛み付いてきました」

 こう話すのは、都内の中小OA機器会社で部長を務める谷井優一さん(40代・仮名)。社員が50人以下という小世帯会社のため、アットホームな雰囲気ではあるが、こうした“みんなで乗り切ろう”という風潮が、残業を暗に強要するようなこともあったと認める。しかし……。

「18時を過ぎた瞬間、新人がいきなりスマホでオフィス内を撮影し始めました。何やってるの? と聞くと、証拠を撮影しているのだと。何をする気だ、と先輩社員と揉め事になったんですが、新人は折れずに“残業代を出さないのは違法”といって動画を撮り続け、動画をSNSにあげると大騒ぎしたんです」

 そもそも入社の契約条件に、月に一定の残業が発生することは明記されており、「みなし残業」分の給与も支払われている。そうした説明は新人の耳には届かないようだ。

「実は、与えられた仕事はしっかりこなす。辞めさせるわけにもいかず、この新人だけ残業を無しにしていますが、他の社員からも不満の声が出てきて……」

 こうしてみると、新入社員が声をあげ、既存社員の気持ちに火をつける、というパターンもあるのかもしれない。最後は、このパターンが良い方向に転がった事例。

◆新入社員はモンスターではなく、救世主!?

「飛び込み営業が基本なので、新人にはかなりブラックなことをさせるのが慣習でした。具体的には、ターミナル駅で新人数人で並び、道行く人に朝の挨拶。そのまま駅構内での名刺交換。新人でも、1日50枚以上名刺を持ってこなければ、帰社して反省文を書かせるのです」

 神奈川県内の中堅商社に務める勝俣貴美子さん(40代・仮名)も、新人と同じようにこうした“ブラック研修”を行なってきた。そして、これが自身を“強くした”と信じてきたのだ。しかし、今春入社した新人が、こうした体制に反旗を翻したのである。

「本名が書かれたツイッターで、会社の研修を“ブラック”だとか“ふざけるな”と書いたそうです。それを見た取引先から問い合わせがあって……」

 これに社長や取締役が激怒、本人を呼び出し説教を行ったのだが、ここでも新人は折れるどころか、別の取引先にも電話し、“この研修がブラックではないのか問い合わせる”などと反論したというのだ。

「確かに時代錯誤ではあるかもしれない。でも、みんながそうやってきたし、それで会社が成長してきたという事実もあります。ただ、新人の指摘を受けて、もっと別のやり方があるのではないか? という風潮も生まれて、新人を含めた営業チームの発足が検討され始めました。新人は、ネットやSNSを使った新たな営業ツールをたくさん提案し、確かに駅や街頭に立って声をあげ続けるより、こちらの方が効率的ではないか、と目を見張る役員もいるんです。最初は“モンスター”だと思っていましたが……。なんというか、狐につままれたような、古い自分が恥ずかしくなってきて」

 新しいやり方が全て正しいとは言えないかもしれない。しかし、新たな方法によって現状を打開する何かが発見できることだって少なくないはず。こうした事実を教えてくれたのが“モンスター新入社員”であったとすれば、新入社員はモンスターというより“救世主”とも言えるのかもしれない。<取材・文/山口準>

【山口準】
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。

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