―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆イーロン・マスクだけが知っていた!?

米フォーブス誌が4月5日に発表した2022年版の世界長者番付で、テスラCEOのイーロン・マスク氏の保有資産が2190億ドル(約27兆円)となり、初の世界一になったそう。昨年までは4年連続でアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏でしたが、ベゾス氏は今回2位。マスク氏の資産は昨年より680億ドルも増えました。そりゃあTwitter買収とか考えちゃうよなあ……

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆自動車メーカーがどんなにいいEVをつくっても、テスラに歯が立たない理由

 日本には約3万基のEV(電気自動車)用充電スタンドがある。これまで順調に増えてきたが、昨年初めて減少に転じた。

 ある市役所は、最近、急速充電器を撤去した。理由は、耐用年数の終了と利用の低迷だった。

「新しい機器を入れると数百万円かかりますし、電気代も月に基本料金だけで5万円。ところが利用は、平均して週に1台前後しかありませんでした」(市役所職員)

 大手メディアは、「EVが普及しないのは、充電スポットが足りないから」とバカのように繰り返しているが、実態は違う。充電スポットは余りまくっている! 日本は戦略もなくバラマキ的に充電器を設置したため、ほとんど使われない充電器が多数ある一方で、高速道路のSA・PAなど必要なところが足りていない。典型的な需給のミスマッチだ。

◆テスラの充電待ちはほぼゼロ

 日本のEV界をリードしてきた日産にも、同じことが言える。リーフ購入者に提供していた「ZESP2」(ゼロエミッション・サポートプログラム2)の「使いホーダイ」プランは、月に2000円で日産ディーラーなどの急速充電器が使いホーダイ(2年半前に新規受付終了)。

 その一方で、購入者の自宅には普通充電器(設置費用10万円強)をサービスで設置していた。リーフオーナーは、月2000円で急速充電しホーダイだったので、電気代がかかる自宅の普通充電器を「一度も使ったことがない」というケースが頻発したのである。まさにムダなバラマキ!

 それに比べて、テスラの戦略のしたたかさよ。テスラ専用の急速充電器「スーパーチャージャー」の充電スポットは全国に約50か所しかないが(4月15日現在)、1か所に2〜8基の高性能充電器があるので、充電待ちはほぼゼロ。充電速度は約3倍で、充電の時間制限もないので大容量電池を満タンにできる。約50か所しかなくても、それだけで日本全国ほぼどこへでも行けるのだ。

◆テスラとは天と地の差

 一般の急速充電器は、スーパーチャージャーよりはるかに性能が低く、しかも1か所にほぼ1基しかない。先客がいたら待つか、ほかの場所に移るしかない。1回あたり30分間の利用時間制限もあるので、1回の充電で100〜150㎞しか走れず、ロングドライブでは尺取り虫を余儀なくされる。テスラとは天と地の差である。

 EVの良しあしは、クルマの性能よりも充電の利便性で決まる。クルマだけ評価しても無意味! テスラのブッチギリなのだ!

◆日産の充電器をテスラが占領!

 と言いつつ、日産の新型EV「アリア」に乗ったのですが、このクルマ、なかなかいいわ……。見た目も内装も乗り心地も加速も、そして電費もなかなかイイ。クルマ自体は非常にイイ! 問題は充電だ。

 日産ディーラーには急速充電器が必ずあるが、ほとんど1基のみ。他社のEVも充電可能なので、日産でテスラが充電器を占領していてリーフオーナーが激怒! ということも頻発していた。

 なぜスーパーチャージャーはテスラ専用で、日産ディーラーのは日産車専用じゃないかというと、日産は国から補助金をもらって充電器を設置したからだ。三菱も同様。テスラは全額自社で負担している。

◆テスラは広告宣伝費も店舗運営費もゼロ

「ウチは全額自社負担はムリです。テスラにそれができるのは、広告宣伝費も店舗運営費もゼロだからですよ! アイツら余ったカネで専用充電器を置いたりロケット飛ばしたり、やりたいホーダイです!」

 日産関係者はそう悔しさをにじませるが、ビジネスモデルの違いゆえ是非もなし。相手は世界有数の大富豪(イーロン・マスク)だし!

◆日産の急速充電器も高性能に更新も…

 そんな日産だが、最近ディーラーの急速充電器を高性能なものに更新し始めている。ただ、相変わらず日産車専用じゃないから、テスラが使っていても文句は言えない。

 日産もテスラの後を追って、全国に10か所くらいでいいから、日産車専用のロングドライブ用急速充電スポットをつくるべきじゃないか? でないと、どんなにいいEVを作っても、「仏作って魂入れず」だ!

◆【結論!】

昨年末、補助金が拡充され、EVの売れ行きが急速に伸びている。4月からは最大85万円までアップ! 9月には予算が尽きそうなので、EV購入を検討中の方はお急ぎください。私はバッテリー革命が起きるまで待ちます。

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

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