女優デビューから今年で10年目を数える萩原みのり(25)。昨年だけでも、ドラマ『RISKY』『ただ離婚してないだけ』、『お茶にごす。』、映画『花束みたいな恋をした』『街の上で』『そして、バトンは渡された』『成れの果て』などに出演し、幅広い役での演技で魅了した。

 最新主演映画『N号棟』ではホラーに初挑戦。実際に起きた幽霊団地騒動をモチーフに、幽霊が出ると噂の廃団地を訪れた大学生の史織を演じた。強い瞳が印象的な萩原には、ホラー映画もよく似合うが、本人は実は「ビビり」だとか。

 そんな萩原に、本作のエピソードのほか、素顔が覗く、「お笑い」好きな一面を直撃すると、「芸人本は生きづらさを肯定してくれる」との言葉が返ってきた。

◆廃墟での撮影は大変すぎて体力ゼロに

――大変な撮影だったと聞きました。

萩原みのり(以下、萩原):どこまで言っていいのか分からないくらい大変でした(笑)。電気水道も通っていない廃墟での撮影でしたし、トイレも特設といった環境のなかで、ただただ撮り続ける日々でした。内容も内容ですし、特にクライマックスのシーンは6〜7時間かけての撮影で、役として一番しんどい気持ちの状態をずっと継続する必要がありました。怖がって怯えている過呼吸のような状態でしたし、体力がゼロになるまで現場にいた感覚でしたね。

◆ビビりが理由で洗顔は時間との戦い

――萩原さん自身はホラーはお好きですか?

萩原:『ソウ』とかは好きなので観ますが、日本のホラーは、変に現実味がある感じがしてあまり観ないです。ホラー映画を観るときって、ジェットコースターに乗るのに近い感じがありますよね。海外の作品だと、描写がぶっ飛んでいるものが多いので、そういう映画は観ます。

――怖いのは苦手なところもあります?

萩原:人生で一度だけ占いに行ったことがあって、そのときに「あなたは霊感が強すぎて、逆に感じないようにシャットアウトしてる」と言われたんですけど、普通に一度も霊とか見たことないですし、「はあ……、そうですか」という感じでした(苦笑)。ただビビりなところはあります。シャンプーするときにも下を向いて洗えませんし。

――下を向けない?

萩原:その間に誰かがいたら嫌じゃないですか。目も閉じられないです。洗顔も時間との戦いです。すぐに目が開けられるように、先に目の部分だけ落とします。そういうビビりなところはありますね。

◆見どころは筒井真理子の怖さ

――そんな萩原さんがホラー映画に主演したわけですが。

萩原:でも私自身は、この作品はホラー映画だとあまり思っていないんです。人間ドラマというか、生きるとか死ぬということについて、すごく繊細に考えさせられた作品です。だから観客のみなさんがどこをどう怖がってくれるのか、逆に楽しみです。私的にずっと怖かったのは筒井(真理子)さんでしたけど(笑)。

――筒井さん、廃団地のリーダー的な謎の女性を演じていて、確かに怖かったです。

萩原:筒井さんとご一緒したのは2回目なんですが、役として私が追い込まれていく状況も、私自らがそこに持っていったというよりは、全体的に筒井さんに引っ張っていただいた印象です。筒井さんを見て、筒井さんの言葉を聞くだけで、そうした状況に連れていってもらいました。だから筒井さんを楽しみにして来ていただくのはいいかなと。正直、筒井さんの振り返ったときの表情が一番怖かったです。

◆日常生活はお笑い漬け

――萩原さんご自身についてもお聞かせください。お笑いがお好きだとか。

萩原:家に帰ったら、録画したバラエティをつけっぱなしです。取材場所に来るまでの間もマヂカルラブリーさんのオールナイトニッポンを聞いてましたし、お笑いにはずっと触れています。今年舞台(『裏切りの街』)に出たときにも、楽屋でひとりの時にはYouTubeでわらふぢなるおさんとか、芸人さんのネタ動画をずっと見てました。

◆芸人本は「生きづらさを肯定」する

――芸人さんの本も好きでよく読まれるとか。

萩原:もともとオードリーの若林(正恭)さんのエッセイがすごく好きだったんです。何者でもない人を肯定してもらえる感じがするんです。生きづらさの肯定というか、生きづらいというジャンルを作ってくださったような気がします。別にポジティブな人がいいって決まってるわけじゃないのに、世の中にはそういう感じってありますよね。

でも「生きづらい生き方をしていても、そのままでいいんじゃないか」って、芸人さんの本を読んでいると言われている気がして、元気になれるんです。マヂカルラブリーの野田クリスタルさんの『野田の日記』という本も好きですし、ピースの又吉(直樹)さんとか、ハライチの岩井(勇気)さんとか、文章を書くのがすごく上手い方もたくさんいるので、よく読んでいます。みなさん、身近な感じがあるというか、フラットな感じがします。

◆今も支えになっている友達からの言葉

――別の機会にお話を伺った際に、芸能界に入ったときに、かっこよくしないといけないのかなと思ってしまった時期があったと話されていました。そうした気持ちも芸人さんの本を読むと救われますか?

萩原:そうですね。みなさん、ステージに立ったときのスイッチといったものはもちろんあると思います。でも普段はすごくフラットな印象で、着飾っていない感じがして、それがいいなというか、そういう生き方でもいいんだと思わせてもらっています。

――ありがとうございます。ちなみに、身近な友達の言葉で支えになっているものがあれば、最後に教えてください。

萩原:地元の親友からの言葉なのですが、高校の卒業式のときに、その子が手紙をくれたんです。「東京に行ったら、悔しいこと、悲しいこと、腹の立つことがたくさんあると思うけれど、絶対になんとかなるから!」と書かれていて。その手紙はすごく支えになっていますし、今も大事にしています。

<取材・文・撮影/望月ふみ>
(C) 「N号棟」製作委員会

【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異 Twitter:@mochi_fumi