“病の写真家”と称される放射線技師の活躍を描いた映画『劇場版ラジエーションハウス』が、公開中だ。この作品はドラマとして、2019年にシーズン1、2021年にシーズン2が放送され、今回は待望の映画化となった。

そんな“チームラジハ”の集大成となる映画版に出演しているのが、女優の若月佑美。若月は、交通事故に遭ってしまう出産間近の妊婦・高橋夏希を演じる。人の生死を分ける“72時間”という壁と戦いながら、目の前の命と向き合い奮闘する医療従事者たち。その撮影現場で彼女が感じたことや、若月流の72時間(3日間)の過ごし方などを聞いた。

◆みなさんの仲の良さに驚きました

――ドラマ版のシーズン1、2を経て、主演の窪田正孝さんや本田翼さんを中心にレギュラーキャスト陣の一体感を感じる作品。今回、劇場版に参加されていかがでしたか?

若月佑美(以下若月):今回、私はゲスト出演でしたけど、現場でキャストのみなさんの仲の良さに驚きました。カメラが回っていないところでもあれだけ会話をしていると、お芝居でも目を合わせるだけで、お互いが何をしたいというのがわかるんだろうなと思って、羨ましく思いましたね。

 ドラマも素晴らしい作品で、チームとしても出来上がっている現場に参加させてもらうということで、最初はすごくドキドキして緊張して行きました。現場では、キャストのみなさんがチームに迎え入れてくれる仲の良さで、たくさん話し掛けてもらって。私も一気に緊張がなくなっていって、とてもいい環境でご一緒させていただくことができました。

――レギュラーキャスト陣の中で、共演の経験があった方は?

若月:浅野(和之)さんは、舞台「恋のヴェネチア狂奏曲」でご一緒させてもらった以来。それから、ドラマ「共演NG」でご一緒した山口(紗弥加)さんも「久しぶり!」って言ってくださって。浅野さんは前室でも隣に座ってたくさん話し掛けてくださっていたんですけど、チームラジハの中で浅野さんはイジられ役というか。その光景を見ていた山口さんが冗談で、「おじさんがそんな若い子に話し掛けないで!」っていうのを言われていて(笑)

◆山崎育三郎と作り上げた役

――今回の役どころは交通事故に巻き込まれてしまう妊婦でしたが、妊婦役は初めて?

若月:いや、舞台で一度やらせていただいていたんですけど、そのときは最初から妊婦さんではなくて、妊娠がわかって妊婦さんで終わるという役。今回のように、妊婦さんがメインではなかったのでとても貴重な経験でした。

――夫役の山崎育三郎さんとのシーンが多かったと思いますが、夏希を演じるにあたって意識されていましたか。

若月:私が演じた夏希を助けるために、みんなが奮闘するというところにグッと引き込まないといけない。二人の回想シーンがあるのですが、そこでの夏希は明るくて、笑顔が似合う女性なんです。山崎さん演じる旦那の圭介はお調子者というか、キャラクター的にリアクションも少し大げさ。夏希の妊娠を知った圭介が、雨の中で傘もささずに喜びを爆発させたりする。回想シーンでは希望に溢れて明るく生きている2人だったから、事故に遭ってしまって「もう一度あの笑顔を見たいけど、見られないかもしれない」という寂しさが増してくる。山崎さんとそういう部分は意識して、一緒に作り上げていきました。

◆寝続ける演技の大変さ

――病院ではベッドに寝ているシーンがメインでした。ほかの役者たちが周りは演技しているなかで、若月さんはどのような気持ちだったんでしょう。

若月:医療指導の先生から、私と同じ病状の人がどういう状態でいるのかっていうことを教えていただいて。呼吸も自分ではなく、呼吸器で勝手に行われている状態で、酸素量も機械で調節されているから、すごく肺に入ったと思ったら急にスーって抜けていったり、不思議な呼吸リズムになるらしいんです。それが自分の引き出しにはなかったので、それを表現したりしていました。

 あとは夏希さんの言葉を発したいけど発せない、目を開きたくても開けない、意識はないけど亡くなってはいない。その状況が、セリフも何の動きもできない今の自分と同じだったので、気持ちを重ねて演じていました。

――ほかには、寝ている演技の難しさはありましたか?

若月:撮影で1日中、寝ている日もあったんです。撮影の始まりから終わりまでベッドの中だから、寝ようと思ったらいつでも落ちちゃうんです。しかも私は、集中治療室に入っているので、共演者の方々はガラス越しでお芝居をしているので、声も遠いんですよ。みなさんが、「膝を曲げていいよ」「床ずれになってない?」など気を遣ってくださって、なんとか頑張りました。

◆困難な壁にぶつかったときどうする?

――映画では、時間が差し迫ったなかで、妻の命か、お腹の中にいる子供の命かの選択を迫られる部分も描かれていました。同じ状況だったらどうしますか。

若月:本当に難しい問題ですよね。私はいろいろな人の気持ちを考えてしまうタイプだから、お母さんとしてだったら、子供の命だけでも産んで助かってほしいと思う。でも第三者目線で考えたら、子供は助かってお母さんが亡くなってしまったら、葛藤や苦しみを背負ったまま人生を送らないといけなくなるかもしれないとか。残された旦那さんが一人で子育てをしていくのは大変なんだろうなって、いろんな感情が出てきてしまいますね。だから、観ていただいた方にも、いろいろな捉え方をして考えてもらうのがいいかなと思います。

――そういう選択するのが難しい困難な壁にぶつかったとき、若月さんはどうやって解決していく?

若月:私は悩みやすいので、すぐに壁にぶち当たるんです。仕事の悩みが多いんですが、役作りをしていくなかで、自分自身との闘いがあるというか。自分の中ではナシなことも役ではそれをしないといけないことがあると、若月佑美が邪魔をしてきて演技でも自分の行動が許せなくなっちゃう。役として割り切ってすべてをやればいいんですけど、どうしても若月佑美として考えてしまうことがありますね。

 それから頭ではわかっているのに、表現できないときが1番苦しいです。舞台でも映像でも、監督さんや演出家さんが言っていることもわかって、それを自分でも表現したいという同じ気持ちなのに、どうしても表現できない。そういうことが本当に難しくて、壁にぶち当たりますね。

◆お芝居の表現はいまだに悩みです

――どう乗り越えるんですか。

若月:監督さんや演出家さんに、方向性を決めてもらうこともあります。自分が思っている表現はただのエゴだったりもすることもあるので、整理をつけてどっちかを切るっていう選択もします。

――壁が現われたら一人で悩み続けることのほうが多い?

若月:そうかもしれない。セリフの意図がわからないとか、そういうことは相談させてもらうんですけど、どちらでもいい演技プランだったら、自分の選択でしかない。舞台だったら公演数があるので、お客さんのアンケートに目を通して、「こっちの表現がよかったんだ」っていうことを見ながら決めたりもします。お芝居の表現はいまだに悩みですね。

――相談すると影響を受けすぎてしまう面もありそうな。

若月:というより、私の悩みを人に背負わせてしまうのが申し訳ないと思っちゃう。「お前のことなんだから自分で悩め!」って。結構ひとりで悩むことが多かったんですけど、最近はようやく少しずつですけど、人に聞けるようになったんです(笑)

◆漫画を読むのは紙派

――放射線科が舞台の本作にちなんで、現実では難しいけど本当は透かせてみたいものは何かありますか?

若月:監督さんと舞台演出家さんの頭の中は見てみたいですね(笑)

――それも仕事のことになっちゃいますか(笑)。ストイック過ぎません!?

若月:プライベートが本当に何もない人で(笑)。私生活だったら、マンガの中身が透けて見えたらいいなーっていうのはありますね。同人誌に多いんですけど、ジャケットの画と中身の画が違うことがあるんですよ。あとは静止画が上手い人と、動き描写が上手い人も別で。イラストとして見たらめちゃくちゃいいんですけど、人を動かすっていう画を描くときに、「思っていた作品と違うな」っていうこともあって。そういうときは、ジャケットから中身を透かしてみたいっていうのはあります。

――コミケとかも参加したい?

若月:行きたいですね。意外と幅広くなんでも見たいタイプで、ジャケットの画と設定、巻数を意識して選んでます。巻数も重要で、あまり長すぎると「今からじゃ追いつけんよ……」って思っちゃうから、20巻以内だったり、完結している作品もいいですね。それから、どのぐらいの間隔で新刊が出ているとかもチェックします。

――電子版ではなく、紙ですか?

若月:紙ですね。でも最近は、家の中にマンガが溢れすぎちゃって。今は「キングダム」を読み進めているんですけど、それだけでも65巻まで出ているからスペースを取るんですよ。だから書棚に入らなくなったマンガは実家に送るんですけど、そうすると親に勝手に売られるので。そことの葛藤です(笑)

◆72時間あったらどう過ごす?

――事故や災害現場で人の生死を分ける72時間が重要な数字でありました。若月さんが3日間の時間があったらどう過ごすか教えてください。

若月:え、それはどういう状況設定ですか!?

――気軽に過ごせるオフの3日間で考えてください(笑)

若月:1日目と3日目は、家から出ないで何もしません(笑)。3日あったら旅行とかに行ったりするものいいんですけど、旅行してても「1日使ったな〜」と思って休んだ感じにならないというか。私は心のリフレッシュよりも、体の休息を取りたいタイプ。それに気にしいだから、外に出るだけでいろいろ悩み始めちゃうんです。その状態で3日過ごしちゃうと、「最終日は家に居ればよかった」って絶対後悔する。だから、1日目と3日目は好きなスイーツを食べながら、おうちで韓国ドラマを見ます。

――朝から晩までダラダラできちゃう?

若月:全然いけますね。昔は休みに漫画喫茶に行って、7時間パックで朝から夕方までソフトクリーム食べながら漫画を読んでましたね。

――2日目はどうしましょう?

若月:真ん中だから、一日遊びたいです。ただテーマパークとかに行くと、帰るときに心がしんどくなっちゃう。映画でもエンドロールが流れると「もう終わっちゃうじゃん」って思って見れないんですよ。だから、友達と運動系のアトラクションがいろいろあるところに行って、高く飛べるトランポリンとかアスレチックを楽しんでから、ゲーセンに行ってUFOキャッチャーをやりたいです。

取材・文/吉岡 俊 撮影/後藤 巧 ヘアメイク/沼田真実 スタイリング/角田かおる