―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―

◆ハードの落ち込みが目立った任天堂決算

 5月10日に任天堂の2022年3月期決算が発表されました。売上高は1兆6953億円(前期比3.6%減)、純利益は4776億円(前期比0.6%減)と高水準ながら、Nintendo Switchの販売台数は2306万台(前期比20%減)と大きく落ち込みました。もちろん半導体不足の影響もありますが、今年度の販売予測も2100万台と8.9%減を見込んでいます。

 Nintendo Switchがハードとして下降線を描き始めたなか、任天堂の足元が揺らぐようなゲームを取り巻く環境変化もチラホラ。今回は、任天堂を今後悩ませるであろう“3つの懸念”をチェックしていきましょう。

◆(1)メタバースを核としたPCとの戦い

 今、世界のIT企業はメタバースの構築に注力しています。メタバースとは、コミュニケーションやビジネスが行えるネット上の仮想空間。ゲーム、音楽、ショッピング、ファッション、スポーツ観戦など、さまざまな娯楽がメタバースをプラットフォームに行えるようになると予測されています。

 従来はゲームハードがまさにゲームのプラットフォームでしたが、この任天堂の優位性が失われる可能性があります。今年2月3日に行われた第3四半期の質疑応答で、メタバースについて質問を受けた古川俊太郎社長は「多くの方に『任天堂なりのアプローチ』として分かりやすくお伝えできる方法が見つかれば、何か検討できるかもしれませんが、現時点ではそのような状況ではないと考えています」と回答し、メタバースにはあまり積極的ではない姿勢が伺えました。

『マリオ』や『ポケモン』、『どうぶつの森』を中核としたメタバースを構築できれば、十分に世界をリードできると思うのですが……。いずれにせよ、メタバースを背景に、より一層PCが家庭用ゲーム機を脅かす存在となるのは確かでしょう。

◆(2)サブスク型娯楽への対応

 日本にもすっかり定着した、定額でサービスを一定期間利用できる「サブスクリプション型」料金体系。動画配信サービスだけでなく、今では多くのビジネスに波及しています。ゲームも当然サブスクの対象となりうるコンテンツ。実際に、Netflixは加入者向けにスマホゲームの提供を2021年11月から全世界で開始しました。

 任天堂も定額サービス「Nintendo Switch Online」を展開していますが、基本的にはオンライン利用料であり、ファミコン・スーファミの過去作フリープレイは特典的な位置づけ。仮にメタバースとサブスクが結びつき、「新作のゲームが発売されたら購入する」という購買スタイルが過去のものになるとしたら、任天堂も何かしらの手を打つ必要が出てくるでしょう。

 ちなみに、2021年10月から始まったNINTENDO64とメガドライブのゲームが遊べる「Nintendo Switch Online+追加パック」は、『マリオカート8 デラックス コース追加パス』などの「コンテンツの充実に伴って加入者が増加した」と2022年3月期決算説明資料に記載があります。こうしたヒットタイトルの追加パックを配信するという手法が、任天堂型サブスクの鍵を握りそうです。

◆(3)新ハードへの切り替えの難しさ

 Nintendo Switchが発売されたのは2017年3月。一般的に家庭用ゲーム機のライフサイクルは5〜7年と言われており、そろそろ新ハードの情報が出るという噂もささやかれています。しかし、これだけNintendo Switchがヒットしていると、単純な新ハードへの切り替えにはリスクが伴うでしょう。

 直線的なスペック進化を歩んできたPS系ハードと異なり、ニンテンドーDSなら上下2画面、Wiiなら直感型操作といった具合に、新味あるコンセプトを盛り込んできた任天堂ハード。しかし、このコンセプトが空振りに終わると、ハードが売れず、看板のソフトも不振に陥ります。

 思えば、Nintendo Switchのコンセプトは新しい遊びの創造というよりは、据置機と携帯機の垣根をなくすという利便性に対する提案でした。新ハードには、任天堂らしいユニークなアイデアを付加できる余地や余裕はあるのか。成功したNintendo Switchの寿命を引き延ばす戦略が現実的かもしれません。

 3つの懸念を見てきましたが、ソフトに関しては、2021年11月発売の『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』が1465万本、2022年1月発売の『Pokemon LEGENDS アルセウス』が1264万本とそれぞれ1000万本以上の販売を達成。今年の9月には『スプラトゥーン3』、冬にはオープンワールドの完全新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』も控えています。

 ソフトの絶好調を背景に、メタバースへの対応や新ハードの問題をどうクリアしていくのか。舵取りに注目が集まります。

<文/卯月 鮎>

【卯月鮎】
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン〜なつかしゲーム子ども実験室〜』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も

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