例年よりも早く梅雨明けし、連日にわたって厳しい暑さが続いている。扇風機や冷房、冷却スプレーなどの暑さ対策はもちろん、かき氷やアイスといった冷たくて美味しい食べ物も恋しくなる季節だ。

 そんななか、アイス専業メーカーとしてアイスキャンディー「ガリガリ君」や、チョコレートアイスバー「BLACK」、カップアイス「Sof’(ソフ)」などの人気商品を生み出しているのが赤城乳業だ。自社商品のほか、コンビニのPB(プライベートブランド)商品など、数多くのアイスを手がけ、年に100品以上の新商品を開発している。

 同社の開発マーケティング本部 マーケティング部に所属する岡本秀幸さんに、アイスの商品開発で工夫していることや直近のトレンドについて話を聞いた。

◆シンプルに美味しさを追求してきたロングセラー商品

 赤城乳業は、BLACK(1978年発売)やガリガリ君(1981年発売)など、40年以上も愛されるロングセラー商品を輩出している。

 こうしたヒット商品を生み出してきた背景には「昔から変わらず、シンプルだからこその美味しさを追求し続けている」と岡本さんは話す。

「根本にある味はあまり変えずに、美味しさを大切にしながら商品開発を行っています。ただ、時代の変遷とともにお客様の志向は変化していくため、赤城乳業としても常にそのニーズに応えられるように意識しています」

◆2009年にカップアイス市場に新ブランドを発売、新たな市場を開拓

 2017年に発売したSof’(ソフ)は、今までアイスバーのイメージが強かった赤城乳業にとって、新たにカップアイス市場でヒット商品を生み出すべく、改良を重ねてきたなかで誕生した商品だという。

「2009年に“でっかいドルチェ”をコンセプトにした『デッカルチェ』という商品を発売。発売当初はティラミスやプリンなどの新フレーバーが話題を呼び、好調な販売となるものの、なかなかリピートが続かなかったんです。

 そこで、商品の改善を繰り返して行きついたのがSof’(ソフ)でした。特徴としては、ソフトクリームの美味しい“上”の部分だけを商品にしたカップアイスで、王道のミルクやチョコといったフレーバーを中心に展開することで、長く愛される商品を目指して開発しました」

◆若手の頃から自分の企画した商品を複数担当できる

 赤城乳業の商品開発において、大手メーカーと大きく違うのは「意思決定の早さ」にあるそうだ。

 何か新商品を出す際も、何度も会議でプレゼンを行い、経営層の承認を得て商品化が決定するのではなく、1〜2回の経営会議でGoサインが出れば、即商品化に向けて開発を進める社内体制になっているという。

「赤城乳業の場合、若い担当者でも複数のブランドを持っているのが普通になっています。新卒で入社したら半年ほど工場でOJTや研修を行い、2年目くらいからは自分が企画した商品を担当するのが一般的なキャリアパスとして定着しています。実は若いうちから自分の企画した商品を持つことで、自由な発想やアイデアをもとにした商品が生まれやすいメリットがあるんです。

 長く経験を積んでくると『このフレーバーでは売れない』、『商品開発が難航しそう』などの固定概念にとらわれがちになり、なかなか挑戦をしなくなってしまう。一方、若いうちは経験がないからこそ、たとえ斬新なアイデアだったとしても『これは面白そう』と思えば、商品開発に踏み切ることができる。こうした社内文化が醸成されているからこそ、年間100種類以上の新商品を出すことが可能になっています」

◆「アイデア1000本ノック」を行い、徹底的に発想力を鍛える

 その一方で、自社商品やPB(プライベートブランド商品)など、年間にさまざまな商品を開発しなければならない状況のなか、企画やアイデアはどのように着想しているのだろうか。

 岡本さんは「商品企画に関しては、若いうちから“アイデア1000本ノック”と銘打って、ひたすらアイデアを出す訓練をしている」とし、次のように説明する。

「商品企画に携わる社員は、1年間に1000本のアイデアを考えるという企画力を鍛える取り組みがあります。アイスのフレーバーでも形状でもネーミングでも、とにかく何でもいいのでアイデアを思いつく限り出していくんです。

 ただ、300個くらいまではアイデアを出せるものの、そこから先は自分の頭の中だけでは出てこなくなる。そこで、お店に足を運んだりSNSをチェックしたりし、アンテナを張り巡らせることで、新たなアイデアの発案につながってくるわけです。こうした訓練があるからこそ、アイデアの企画力や発想力が鍛えられ、例えば皆さんがコンビニなどで目にする新商品は、1年間52週にわたる各週に向けて開発が進められていますが、このような新商品の開発にも役立つわけです」

◆コロナ禍でニーズが高まった箱入りアイス

 コロナ禍では在宅ワークやリモートワークが常態化し、巣篭もり需要が増えた。

 このようにライフスタイルや消費志向が多様化するなか、アイスの消費量やトレンドはどのような変化が見られたのか。

 岡本さんは「家でアイスを食べる機会が増え、箱物タイプの商品がコロナ前と比べて売れるようになった」と語る。

「今年は変わるかもしれませんが、コロナでアイスを外で食べるシーンが減ったことで、大入りの箱入りアイスを購入するお客様が増えたと感じています。アイスのトレンドに関しては、2015年から冬アイスが流行り、その後はチョコミントやピスタチオがブームになっていましたが、最近の春夏はパインフレーバーが伸びており、注目しています」

◆素材本来の味や食感を楽しめるアイスがトレンドに

 また、赤城乳業が行なった消費者調査によれば「アイスの方がお菓子よりも気軽に食べやすい」という印象を持つ人が多かったという。

「直近のアイスは『チョコ味ではなく、本物のチョコを使う』といった素材そのものを楽しめる商品が求められていると思っています。要は、お菓子のチョコを毎日食べるのは少し気が引けるけど、アイスならまだ食べられるといったニーズが顕在化したと捉えています。コロナ禍でも販売好調な『ガツン、とみかん』は、まさにみかん果肉をアイスキャンディーの中に加えた商品で、今後もこのようなトレンドが続くのではと考えています」

 これからも値段以上の価値を出せるよう、さまざまな商品を開発していきたいと意気込む岡本さん。

 最後に今後の展望について伺った。

「当社の主力商品であるガリガリ君に関しては、2013年に過去最高の4億7500万本を売り上げましたが、さらなる目標として5億本を超えられるように努めていきたいと思っています。また、会社としては順調に成長していて、2021年度は過去最高の484億円の売り上げでしたが、まだまだアイス業界では中堅のポジションだと思っています。もっと上位に込めるように売り上げシェアの高いコンビニ以外にも、スーパーなどの小売店でのシェアを拡大できるよう、ガリガリ君に次ぐ新ブランドも育てていきたい」

<取材・文/古田島大介>

【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている