◆東アジアのタイトルを狙う日本代表メンバーは?

 今年11月に開幕する「FIFAワールドカップ カタール2022」まで残り4か月となり、強化の機会はわずかとなっている。そのような状況のなか、日本代表は7月19日にEAFF E-1サッカー選手権大会に参加。香港代表、中国代表、韓国代表と対戦して東アジアのタイトルを狙う。E-1選手権を戦う日本代表のメンバーは、以下のとおりとなっている。

GK
大迫敬介(サンフレッチェ広島)
谷晃生(湘南ベルマーレ)
鈴木彩艶(浦和レッズ)※
DF
佐々木翔(サンフレッチェ広島)
谷口彰悟(川崎フロンターレ)
山根視来(川崎フロンターレ)
畠中槙之輔(横浜F・マリノス)
小池龍太(横浜F・マリノス)※
中谷進之介(名古屋グランパス)
荒木隼人(サンフレッチェ広島)
大南拓磨(柏レイソル)※
杉岡大暉(湘南ベルマーレ)
MF/FW
水沼宏太(横浜F・マリノス)※
武藤嘉紀(ヴィッセル神戸)◎
宮市亮(横浜F・マリノス)
橋本拳人(ヴィッセル神戸)
野津田岳人(サンフレッチェ広島)※
脇坂泰斗(川崎フロンターレ)
西村拓真(横浜F・マリノス)※
相馬勇紀(名古屋グランパス)
岩田智輝(横浜F・マリノス)
森島司(サンフレッチェ広島)
満田誠(サンフレッチェ広島)※
町野修斗(湘南ベルマーレ)※
細谷真大(柏レイソル)※
藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)※
岩崎悠人(サガン鳥栖)※◎

※はA代表初選出
◎は不参加OR追加招集

◆W杯メンバー選考の場にしたい

 今回はFIFAが定める国際Aマッチデーでの開催ではないため、代表への招集にあたって拘束力はなく、各選手が所属するチームは協力する義務がない。よって、海外チームに所属する選手の招集は見送られている。加えて、A代表で実績を残す長友佑都(FC東京)、酒井宏樹(浦和レッズ)、大迫勇也(ヴィッセル神戸)を招集しないと、森保一監督は事前に宣言していた。従って、Jリーグに所属する選手のみで構成されたチームには初選出や久々に返り咲いた選手が多くなった。

 森保監督は今大会の意義について、以下のとおり説明している。

「まずは、このE-1選手権はひとつのタイトルを争う大会だと思っています。日本代表として優勝を目指して戦うということを選手たちとも共有して戦いに臨みたい。その中でワールドカップに繋げていくために、(今回招集した)選手のパフォーマンスを見て、これまで招集した選手も含めて、ワールドカップに向けて選手たちのスカウティングをこれからしながら、メンバーを決めていくという選考というところも含めて戦いたい」

 また、横浜F・マリノスから最大の7人が選出されたことについて森保監督が言及した際に、選出基準についても語っている。

「(横浜FMは)シンプルに今Jリーグでトップを走っているチームだということ。そして、内容的にも強度の高い、インテンシティの高い戦いをしています。また、チームとして戦術的な戦いをしながらも、個のクオリティを発揮するという部分を見て決めました。個人としてもチームとしても結果を出してるということは、まず評価をしなければいけないと思います。他のチームにもたくさん良い選手はいて選考が非常に難しかったのですが、やはり結果という部分はしっかりと受け止めながら、個のクオリティを見ていきました」

 森保監督のコメントを読み解くと、今回はJリーグで結果を残しているチーム、なかでも好調で結果を残している選手を選出したということになる。そのとおり現在首位の横浜FMを筆頭に、上位に位置するチームを牽引するメンバーが選ばれている。さらに、個人で結果を残している選手も招集しており、得点ランキング上位の町野修斗、細谷真大がそれに当たる。

◆アントラーズから選出がないワケ

 この選考基準を踏まえると、ひとつの疑問が浮かび上がる。現在2位の鹿島アントラーズからは誰も選出されていないということだ。森保監督は鹿島の選手を招集できなかった理由のひとつに「移籍」を挙げている。直前に上田綺世がベルギーのセルクル・ブリュージュへ移籍することが決まり、招集できなかったことを示している。

 それでも2位の鹿島には1人しか候補がいなかったのだろうか。鹿島には10得点の上田に次ぐスコアラーがいる。現在7得点を挙げている鈴木優磨だ。鈴木は得点ランク6位タイにつけ、加えて8アシストでこちらはリーグ1位となっている。他にも、鈴木、水沼宏太に次いで5アシストで3位につける樋口雄太も、今回の候補になるには十分な活躍を見せている。

 合流日となっていた17日に、前日のJリーグで負傷した武藤嘉紀の不参加が発表され、代わりとして岩崎悠人の招集が発表された。ここでも開幕戦の開催地である鹿島からは選出されず、合流に時間を要する鳥栖からわざわざ呼び寄せている。

◆招集に応じなかった可能性も

 鈴木に関しては、以前に森保監督との確執を報じられたこともあり、それが理由で招集されなかった可能性はあるが真相はわからない。しかし、本当に必要と思えば和解に乗り出すだろうことを考えると、理由は別にあるのではないだろうか。

 あくまでも個人的な憶測に過ぎないが、鹿島は今回の代表招集に対して抗ったのではないかと考えている。出場もさせないワールドカップにも招集しないのだったら、チームを強化を優先し今回の招集には応じないことにしたのではないだろうか。

 その疑念を持ったひとつの出来事がある。6月に行われたキリンカップ期間中に上田綺世が代表チームを離脱したことだ。上田はチュニジア代表戦を前にした6月12日に、ケガを理由に代表を離脱し鹿島へと戻った。実はその前日11日に行われたルヴァンカップで鈴木優磨が負傷したのだった。そして、18日に再開したJリーグでは、上田が出場し鈴木は欠場したのだった。こちらも真相はわからないが、出場できない代表チームに拘束されるならチームの危機を救うために呼び戻そうとした結果なのではないかと予想できる。今回も同様の思考に至ったのではないだろうか。

 チーム一番のスコアラーの移籍が決まった鹿島は、少なからずチームを再構築する必要がある。E-1選手権の開催期間をチーム強化の機会にしたいと思い、中心選手の招集に対して抗った結果として誰も招集されなかったと、個人的には考えている。

 実際に、今回招集されたメンバーでワールドカップ本大会のメンバーに招集される可能性があるのは、大迫敬介、谷晃生、谷口彰悟、山根視来ら最終予選でも招集されている選手と言っても過言ではない。選手らも薄々は気がついていることだろう。実質的にB代表で戦うことになるE-1選手権は、興行以外の意味を見出しにくいものとなっている。

 しかし、最近の日本代表戦の観客数から考えると、興行としても結果は微妙になりそうだ。ワールドカップまでのわずかな強化機会ではあるが、思うように招集できない現状を踏まえると、思いきってパリ五輪世代の強化の機会として大会の意義を見出したほうがよかったのではないだろうか。

 それでも招集された選手にとっては、ワールドカップ行きが0になったわけではない。誰しもが認めるほどの活躍を見せれば、選出される可能性はある。だから、選手たちにはあきらめずに良いプレーを見せてくれることを望む。

<文/川原宏樹 撮影/松岡健三郎>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる