◆自民党と旧統一教会の“貸し借り関係”

 昨年秋の総選挙以降は開かれていなかった野党合同ヒアリングが復活し、自民党と統一教会の関係について追及を始めた。8月6日には、下村博文・文科大臣時代の名称変更問題について前川喜平・元文科事務次官から名称変更問題についてヒアリング。終了後の囲み取材では、筆者の質問に対して選挙支援への恩返し(貸し借り関係)の可能性を前川氏は次のように指摘した。

――(下村氏は)第二次安倍政権で文科大臣に任命されたので、安倍さんの意向を受けて名称変更を認めてしまおうとしたのでしょうか。(名称変更で霊感商法の被害拡大)問題があるのを知っていても、安倍さんが(統一教会と)三代にわたる付き合いなので、(名称変更を)認めてしまおうと。

前川「確証はありませんが、そのストーリーは十分に成り立つような気がします」

――(旧統一教会が自民党を)選挙で応援してくれるので、(文科大臣だった)下村さんは「(名称変更を)認めてしまおうかな」という“アベ友政治”の一環のような気もしますが。

前川「やはり政治家と教団の間に貸し借り関係があるだろうと。貸しがあれば、借りもあると。借りがあれば、借りを返すと。こういう関係は必ず出てくるでしょうから。だから(選挙で)ものすごくお世話になっているのなら、逆に同じくらいお世話をするでしょう。特に与党の政治家に多いパターンだと思う」

 安倍元首相の銃撃事件のキーワードは、貸し借り関係。自民党への選挙支援と旧統一教会への便宜供与(名称変更など)がギブ・アンド・テイクの関係になっており、これが事件の誘因になったということだ。

◆筆者は見た。井上義行議員を旧統一教会が熱烈支援

 筆者が旧統一教会の熱狂的な選挙支援を目の当たりにしたのは今年7月6日。「神日本第1地区 責任者出発式」と銘打った支援集会が開かれていた、さいたま市文化センターの大ホールは熱気に包まれていた。

 第一次安倍政権で首相秘書官を務めた井上義行候補(当時・自民党全国比例区)が、幹部から「井上先生はもうすでに食口(信徒)になりました」と紹介され、続いて「私は大好きになりました」「必ず勝たなければいけない。勝ちこそが善であり、負けは悪でございます」と訴えるごとに、大きな拍手と歓声が沸き起こった。

 続いて井上候補が挨拶。オブラートに包んで話すことが苦手で「普通の政治家と違う」と強調しながら、同性婚反対を訴えたのだ。

「(『同性婚反対』と言ったことで)今、トレンド入りしました。そして私が演説しようとすると『差別するな』というプラカードを持って(抗議が)始まりましたよ。まるで安倍元総理のようになってきましたよ(笑)。でも、またさらに大炎上になるかもしれないけれど、私は同性婚反対を、信念を持って言っていますから!」

 すると、再び大きな拍手と歓声が響き渡った。そして、最後は「投票用紙二枚目は井上義行!」と支持を連呼するコールで集会は締めくくられた。旧統一教会が自民党の熱烈な“支援部隊”となることを目の当たりにした瞬間でもあった。
(7月7日のIWJの筆者記事「『LGBT差別』と炎上中の自民党・井上義行候補(全国比例)が、自民党の支持母体で、井上氏自身も信徒の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)会合で『炎上上等』と表明! 井上氏に直撃取材! 『私は、同性婚反対に信念を持って言っていますから!!』」で紹介)

 しかし今回の参院選で当選した井上氏は、この支援集会の写真と音声が民放各局で紹介されても「賛同会員で、信徒ではない」と反論した。

「ひろゆきが直言『安倍氏の死を嘆くのに、カルトを規制しない自民党に怒らない人はアホ』」(「日刊SPA!」7月22日)と銘打った記事で、ひろゆき氏が「現役信徒(※1)が自民党の議員になったりもしています」と指摘。編集部の注で「※1:議員自身は『信徒でなく賛同会員』と主張」と補足したのはこのためだ。

 なおひろゆき氏は7月14日のツイッターで、「安倍元首相の秘書官・井上参院候補 旧統一教会集会で『信徒になった』と紹介される」(7月10日のソクラの署名記事)を紹介。

 一方の井上氏は7月21日発売の『週刊文春』などで「信徒でなく賛同会員」と反論。先の支援集会での紹介のされ方と、食い違ったままなのだ。

◆安倍元首相が、昨年9月の抗議文をスルーしなければ…

 そこで臨時国会初日の8月3日、筆者は国会議事堂正門で井上氏を待ち続けた。当選した参院議員が抱負を語ることが多いためだが、井上氏が姿を現すことはなかった。別の入り口から登院していたのだ。
 そして同日午前に「信徒ではなく賛同会員」と再び強調するコメントを発表した。「家庭教育支援の推進」など井上氏が掲げる政策に対して、旧統一教会から賛同を得られたと説明。一方、議員辞職については否定した。

 十分な説明責任を果たしているとは言い難い井上氏だが、自民党と統一教会の関係について精力的な発信をするひろゆき氏は先の記事で、政治家が取り組むべき緊急課題を次のように指し示していた。

「容疑者の家庭が崩壊した統一教会の活動も、今まで弁護士が団体を作って抗議しているのに国は何も手を打っていませんでした。なので、安倍元首相の無念を晴らすためにも、カルト宗教が日本人を喰い物にしているのを止めるべきだと思う」(ひろゆき氏)

 まさに正論だ。旧統一教会の高額献金(金銭的搾取)被害に取り組んできたのが「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(略称「全国弁連」)で、安倍元首相が旧統一教会の友好団体のイベントに祝辞を送った5日後の去年9月17日、安倍氏宛に公開抗議文を送っていた。

 これを重く受け止めてカルト規制に乗り出していれば、銃撃事件は避けられたのは確実。自民党最大派閥・清和会(安倍派)会長だった安倍元首相がもし声をあげていれば、岸田政権(首相)を動かすことは十分可能だった。安倍元首相がスルーしてしまった公開抗議文は、こんな内容だった。

「安倍元首相が、統一教会やそのダミー組織のひとつである天宙平和連合(UPF)などのイベントにメッセージを発信することを繰り返し、特に昨年9月12日の『神統一韓国のためのTHINK TANK2022希望前進大会』(UPFのWEB集会)でビデオメッセージを主催者に送り、その中で文鮮明教祖(2012年死去)の後継の教祖・韓鶴子氏に『敬意を表します』と述べたことは、統一教会のために人生や家庭を崩壊あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとってたいへんな衝撃でしたし、当会としても厳重な抗議をしてきたところです」

 この「安倍元首相のビデオメッセージ」はネット上で視聴可能で、山上徹也容疑者も視聴したと報じられていたものだった。先の全国弁連の代表世話人の山口広弁護士は7月12日の記者会見で、こんな補足説明をしていた。

「安倍先生にも他の政治家にも、何回も『統一教会の社会悪を考えたならば、反社会的団体である統一教会にエールを送るような行為はやめていただきたい。どんなに被害者が悲しむとか苦しむのか。しかも新しい被害者が、それによってまた生み出されかねないことを政治家としては配慮いただきたい』と繰り返しお願いしてまいりました」

 自民党の危機管理能力の欠如が露わになる。安倍元首相の祝辞が山上容疑者のような旧統一協会の被害者の恨みを募らせるリスクについて、誰一人として警告しなかったに違いないからだ。銃撃事件後も「安倍元首相に『ビデオメッセージ送付を謝罪したうえで、カルト宗教規制に取り組みましょう』と勧めるべきでした」と懺悔する議員が名乗りを上げることもない。

◆旧統一教会は政治家との関係強化で規制を乗り切ろうとした?

 なぜカルト教団を野放しにしたのか。7月12日、全国弁連の記者会見に同席した渡辺博弁護士は、「政界工作が背景にあるのではないか」と見ていた。2009年に信者2名が懲役刑となったことに対し、統一教会の責任者は政治家との関係強化で乗り切ろうと機関誌で述べていたというのだ。

「『政治家との繋がりが弱かったから警察の摘発を受けた。今後は、政治家と一生懸命繋がっていかなきゃいけない』というのが彼らの反省でした。(中略)
統一教会の被害者にとっては『政治家との繋がりがあるから、警察がきちんとした捜査をしてくれない』というような思いがずっとあると思う。私どもにもある」(渡辺弁護士)

 2012年12月の第二次安倍政権発足で、こんな変化も起きたという。

「安倍政権になってから若手の政治家たちが統一教会のさまざまなイベントに平気で出席するようになった。それまでは政治家が参加しても伏せていたが、最近は若手の政治家が大手を振って参加してコメントをするようになった」(山口弁護士)

 旧統一教会は2009年の反省を元に政治家との関係強化に取り組んで成功を収め、自民党への選挙支援の見返りに高額献金(金銭的搾取)を招く霊感商法への規制強化を免れてきたように見えるのだ。

◆安倍派事務方トップの西村氏も井上議員の集会参加を「知らない」

 安倍元首相銃撃事件から15日後の7月23日、筆者は清和会(安倍派)事務総長の西村康稔・前ワクチン担当大臣を直撃、旧統一教会の支援を受けた井上議員の処遇について聞いてみた。「鴻巣市長選(7月24日投開票)」の自民推薦候補への応援演説を終えた時のことだ。

――井上義行先生を清和会(安倍派)に入れるのですか。旧統一協会の支援は問題ないのですか。

西村「事実を知らないので、すみません」

 唖然とした。筆者は支援集会に参加した井上議員の取材(写真撮影と録音)をしている。IWJの記事やソクラで紹介して以降、テレビ各局も報道。7月15日のTBSのニュース23を皮切りに翌々日のテレビ朝日の「サタデーステーション」をはじめ、3日後の日本テレビの「ミヤネ屋」などが次々と取り上げている。それなのに、安倍派事務方トップの西村氏は「知らない」と言い放ったのだ。納得がいかなかったので、筆者は声掛け質問を続けた。

――旧統一協会の支援を受けた井上義行議員を、清和会に入れたままなのですか。脱会・離党させないのですか。何でもいいから当選させればいいのですか。清和会と旧統一協会は、ズブズブの関係ではないですか。

西村(無言のまま)

 安倍派事務方トップの西村氏こそ、無念さを感じてカルト規制に乗り出しても不思議ではない。しかしその兆しすら見て取れなかったのだ。

 最後に「一言お願いします。清和会の事務総長でしょう」と筆者は大声を張り上げたが、西村氏は無言のまま車に乗って走り去ったのだ。

「清和会(安倍派)と旧統一教会との関係をウヤムヤにしたまま、嵐を過ぎ去るのを待つ」という姿勢が垣間見える。「安倍元首相の無念を晴らすためにも、カルト宗教が日本人を喰い物にしているのを止めるべきだ」というひろゆき氏の訴えを受け止めて、霊感商法の規制強化をしようという意気込みは伝わってこなかった。

◆統一教会問題をめぐる与野党の対決色が強まる

 一方、8月6日に野党合同ヒアリングを復活させた野党(立民・共産・れいわ・社民)は3日後の9日にも第二回合同ヒアリングを開催。統一教会の名称変更問題に加えて国葬問題もテーマに取り上げた。反カルト法(カルト規制)に前向きの野党と、後ろ向きの自民党という対決の構図となりつつある。

 8月3日、国会議事堂正門に姿を現した水道橋博士(れいわ新選組参院議員)に聞くと、こう意気込んだ。

――反カルト法、カルト規制、霊感商法については。

水道橋博士「やりたいですね。どの辺りまでできるのか。(今回の臨時国会は)3日間しかないですけれども。本当に時期を見て、やりたいですね。そういう意味では、れいわは何もバックにないのでやりやすいと思います」

――閉会中審査もあるし、(その後の)臨時国会もあるしと。

水道橋博士「そうですね。他に後ろめたいところ(自民党など)はありますから、斬りこめると思うので、やりたいですね」

――特に自民党に斬り込めると。

水道橋博士「斬り込めると思いますね」

 山本太郎・れいわ新選組代表も同じ立場だった。

――カルト規制、統一教会霊感商法の規制についての意気込み、考えをお聞きしたいのですが。

山本代表「過去にも解散命令が出された宗教が存在しています。それを考えるならば、これほど大きな社会問題化をした、この国に生きる人々を詐欺的な手法によって人生を壊してしまうようなカルト教団があることに関しては、しっかりと規制がなされなければならないと思います。そのことに関して私どもは、力を合わせてやっていきたいという考えです」

「政策提案型」を掲げた立憲民主党の泉健太代表が、枝野代表時代の対決路線に若干回帰、野党合同ヒアリングが復活したことで統一教会問題をめぐる与野党の対決色が強まるのは確実だ。岸田政権の支持率が急落する中、反カルト法(カルト規制法)がどう具体化していくのか注目される。

文・写真/横田一

【横田 一】
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数