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◆大半の国民の本音は「帰ってくるな民主党」だろう

 立憲民主党の執行部人事が刷新された。岡田克也幹事長、安住淳国対委員長、大串博志選対委員長、長妻昭政調会長。泉健太代表のみ留任。これを「帰ってきた民主党」と評する人もいるが、大半の国民の本音は「帰ってくるな民主党」だろう。

 週刊SPA!7月12日号で、「泉よ、絶対にやめるな!」と訴えただけに、訳の分からない人物が代表に返り咲くのを阻止できたのには安堵した。しかし、これでは「首だけ残して、胴体を全部明け渡した」に等しい。

 参議院選挙の敗北を受けても、泉おろしの声は上がらなかった。代表の座をとって代わっても、党勢が拡大する見込みが無いからだそうだ。

 もはや、これ以上何も言うまい。しかし他のマトモな野党、日本維新の会や国民民主党にとっては、絶好のチャンス到来ではないか。今すぐに立憲民主党の真人間を受け容れる態勢を構築した方が良いのではないか。来年4月には統一地方選挙があるから、今から準備しても遅くない。

◆本気で政権を担う意思すらない政党が日本の憲政を歪めてきた

 そうした中、日本維新の会が初となる代表選挙を行い、馬場伸幸新代表を選出した。私も足立康史・梅村みずほの三候補に単独インタビューを行い、全員に「単なる野党のまとめ役を選ぶのではなく、総理大臣になって何をしたいかを訴えてほしい」とお願いした。幸い、聞き届けられたようだ。

 1955年以来、日本国民はマトモな野党第一党を持てた時期は、極めて短い。特に日本社会党となんちゃら民主党の腐敗と無能には辟易してきた。自民党がどんなにヌルい政治を行おうとも、野党第一党が頓珍漢では、選択肢がない。そうなると自民党が無限大にヌルくなり、正論が通らなくなる。そもそも、社会党、民進党、立憲民主党は、本気で政権を担う意思すら示したことが一度もないのに、野党第一党の座にしがみついてきた。この一事で日本の憲政をどれほど歪めてきたか。

 だから、馬場新代表が「次の総選挙で野党第一党、次の次の総選挙で政権奪取」と具体的な目標を掲げているのは、歓迎する。少なくとも、意志は見せているし、その中長期計画も示した。

◆維新の独特の組織形態を見直す構造改革が必要

 だからこそ、苦言を呈する。

 日本維新の会は独特の組織形態である。今までは首長が党首だった。だから、仮に衆議院で多数派になっても、党首が総理大臣になることはなかった。とりあえず「憲政の常道」に反する事態は避けられたが、見直しが必要だろう。

 意思決定において、国会議員と地方議員と首長は対等である。これでは、圧倒的に数が多い大阪の地方議員が結束すれば、決まりである。今までは彼らの意向で、代表選挙も行われなかった。

 その代表選挙の方式も、外部の批判を招いた。国会議員や他の政治家に加え、一般の党員も同じ一票なのだ。かつての新進党が似たような制度だったが、あまりにも無理がある。

 いずれ、党規約の見直し、すなわち党の構造改革が必要だろう。

◆マスコミでまるで話題にならなかった代表戦

 しかし、それ以上に問題がある。有効投票数は、わずか1万1054票(馬場8527、足立1158、梅村1140)。あまりにも少ない。

 昨年の衆議院選挙と今年の参議院選挙で躍進、期待値が高いだけに、足腰の弱さが気になる。事実、マスコミではまるで話題にならず、ネットメディアですら検索しないと出てこない有様だった。もちろん、野党の党首選が話題になることはない。自民党だって政権失陥した際は、マスコミで話題にならない内に、いつの間にか河野洋平・谷垣禎一が総裁になっていた。

 唯一の例外が’12年の安倍晋三を選出した自民党総裁選。あの時は、総選挙での政権返り咲きが確定していたからだ。つまり、野党の党首選に注目させるには、「この党の党首が次の総理大臣になる」と国民に本気で思わせねばならないのだ。

 その為に、二つの提案をする。

◆一つは、党首の名称を「総裁」に変える

 一つは、党首の名称を「総裁」に変える。何度か指摘したが、立憲政友会の設立以来、政権を担う意思のある、やる気のある政党の党首はすべて「総裁」を名乗った。「総裁」を名乗ること自体が、本気で政権を担う意思の表明なのである。ところが、55年体制以降、総裁の名称は自民党の独占物と化した。他の党の「委員長」「代表」「党首」に対し、特別感がある。日本維新の会が期待されている理由が「マトモな野党第一党つまり政権担当能力のある政党が欲しい」にあるならば、隗より始めよ。

 党が一丸となって「馬場総裁」を総理大臣にと本気で思う意識が根付けば、組織改革は後からついて来るだろう。

◆もう一つは、「馬場総裁」を先頭にした全国行脚

 もう一つは、全国行脚だ。「馬場総裁」を先頭に、毎週、全国のどこかで街頭遊説と集会を行う。中身は、総理大臣になったら何をするか。経済政策や安全保障に関して、自民党に頓珍漢な批判を繰り返してきた「いつもの野党」とは違う選択肢があると知らせる。最初は聴衆が少なくていい。目の肥えた支持者がいるとSNSで拡散する。特に、質疑応答などは積極的に拡散しては如何か。

 馬場代表は高校卒業後にコックとして就職、苦労人だ。大衆の中に入って行って、国民の声をくみ上げる姿を見せ、「この人を総理大臣にしたい」との声を上げていくことが必要ではないか。そうやって人を集め、党員を集め、金を集め、また人を集め、支持を拡大していく。政党近代化の基本だ。

 こうした活動を続けていれば、支える党首直轄の事務局の拡充が必要となろうし、官僚機構に対抗できるシンクタンクがなければ政策論争で太刀打ちできない。

◆3年で「岸田首相より魅力的な党首」は用意できるはずだ

 今回は維新を例に「馬場総裁」で案を出したが、国民民主党でも「玉木総裁」で同じことができるはずだ。立憲民主党は……真人間の方々には心の底から同情する。

 3年で自民党に対抗する政党を作るのはハードルが高くても、「岸田首相より魅力的な党首」は用意できるだろう。政党は組織だが、その組織を率いる党首こそ最も重要なのだ。

 そもそも、自民党に本当に政権担当能力があるのか。昔から、「経済一流、政治は二流」「政治家がどんなに無茶苦茶でも官僚が優秀なので日本は持っている」と言われてきた。問題は、その唯一の取り柄の経済が慢性的に落ち込み、官僚機構の政権担当能力の喪失がコロナ禍であらわになり、今に至る。

 マトモな選択肢が最低二つないと、選挙をやる意味がない。今はゼロだ。

【倉山 満】
’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、「倉山塾」では塾長として、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交についてなど幅広く学びの場を提供している。著書にベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、『嘘だらけの池田勇人』を発売

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