飲食業は、ほかの業種と比べると、さまざまな業務を同時にこなさなければならない。たとえば、客の入店対応から、料理のオーダーと提供。とくにランチタイムやディナータイムは忙しくなる。そんななかで、客の何気ない行動が、じつは「歓迎されていない」場合もある。

◆「少し多めに」は“特別サービス”であることに気づいてほしい

 学生客の多い食堂でアルバイトをしていた徳永菜緒さん(仮名・20代)は、常連の「ご飯少し多めに」への対応に困っていたのだとか。

「お客様が少ない時間帯は、店長も『気持ちもったるわ』という感じで、少し多めに対応していたので、私も同じようにしていました」

 しかし、昼食のピーク時となれば、そうはいかない。客はそんな時間帯でさえ「ご飯多めがいいです」と軽いノリで言ってきたという。

「いくら顔なじみで、親しみを込めて頼まれても、周りのお客様に見られたらと考えると対応できませんでした。そんなときは、『気持ちだけね』と言い、ご飯を多く盛るふりをして何とかごまかしていたんです」

◆ピーク時は客とのコミュニケーションは二の次

「お客様はコミュニケーションのつもりかもしれません。でも、大勢のお客様の前では対応に困りました」

 客全員に同じ対応をしていては赤字になり、かといって、下手な断り方をすると「サービスが悪い」などと変な噂を流されてしまうと考え、とても苦労したそうだ。

「忙しい時間帯は、お客様も限られた時間内に食事をしようと必死ですから、『いかに早く』美味しい料理を提供できるかが勝負です。正直、お客様とのコミュニケーションは二の次になってしまいます」

「話しかけないでほしい」ということではなく、「状況を考えてほしかった」と徳永さんは言う。

「でも、私も学生の頃は同じような感じだったので、社会人経験のないお客様にわかってもらうのは難しいなと感じていました」

 このアルバイトを経験したことで、徳永さんは、飲食店に行っても店員に話しかけることはなく、料理が提供されるまで「待つ時間」を楽しむようになったそうだ。

◆常連客の紹介で来店した女4人組が失礼な態度

 高野文さん(仮名・30代)が働いている店は、昼は「ランチメニュー」、午後14時以降は「カフェメニュー」を提供していた。

 ある日、常連客からの紹介で女4人組が来店したという。それは、明らかにランチの時間帯だった。

「紹介してくれたお客様はとても良い方だったので、最初は嬉しかったのですが。私が挨拶に行くと、『昼ごはんは高いからいらないわ! コーヒー4つね』と言われたんです」

 店自体は、決して「お高いお店」ではなく、どちらかといえば、近所の喫茶店よりも安く提供していた。高野さんは、とりあえず笑顔で対応していたのだが……。

「私はケーキセットのご案内をしました。すると、『あらぁ、お商売がお上手ね。それならそれももらいますわ』と注文されたので、そこまでは我慢しました」

◆800円のケーキセットにダメ出しを連発

「高い高い」と言いながら、800円のケーキセットを注文した客。高野さんが席に持っていくと……。

「彼女たちからは『え、そのケーキとコーヒーだけでこの値段? ケーキは手作り?』と聞かれたんです」

 ケーキは手作りではないため、そのように答えると、「あら、いいお商売ね。それに味も普通やね。私ら何が美味しいのかわからんわ」と言いたい放題だったという。

「挙げ句の果てに『これなら私が家で作るケーキの方が美味しいで』とまで言われました。ほかのお客様の前で毒舌のダメ出しは迷惑そのものでした」

 友達同士で語るのは自由だが、初対面のスタッフにズバズバとダメ出しするのはどうかしている。家のケーキの方が美味しいなら、来店してほしくなかった、と高野さんは苦笑いだった。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
ライター歴5年目。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。Instagram:@chimi86.insta

―[店員が語る困ったモンスター客]―