FIFAワールドカップ2022が絶賛開催中である。カタールと日本の間には6時間の時差があるため、キックオフは自ずと深い時間に。今回はAbemaで全試合が中継されていることもあって、サッカーファンならずとも、睡眠時間の捻出に苦慮している人は少なくないのではないか。そして来たる12月2日には日本中で寝不足の人がさらに倍増するはずだ。サッカー日本代表における”一世一代の真剣勝負”が午前4時から行われるからだ。

◆ドイツ代表が見せた攻略のヒント

 ドイツ戦後に訪れた歓喜から一転して窮地に立たされてしまった森保JAPAN。グループステージ突破を懸けてスペインと戦うことになったのだが、はっきり言って今回のスペイン代表は強い。今大会でも1.2を争う強さを見せている。初戦は堅守を誇るコスタリカを子ども扱いするかのように圧倒して7-0で勝利。第2戦のドイツ戦でもボールを支配しながら先制。終盤にゴールを許したが、試合運びとしては申し分なく及第点といったところだろう。

 大きな穴が見当たらないスペイン代表だが、攻略のヒントはドイツが見せてくれた。スペインは素早く正確なパス回しで、相手ゴール前へとボールを運ぶスタイルだ。フリーの味方を見つけて、できるだけ良い状態でボールを渡す。その巧妙なパスサッカーを相手に、日本は試合のほとんどでボールを支配されることだろう。

 日本戦では圧倒的にボールを支配したドイツを相手にしても、スペインは精密なパス回しで終始ゲームを支配した。しかしながら、勝ち点が欲しいドイツは後半からハイプレスを仕掛ける。相手の最終ラインに対しても常にプレッシャーをかけていった。すると、スペインにも徐々にミスが出始め、ドイツは高い位置でボールを奪ってチャンスに結びつけていた。

◆ハイプレスを機能させる「3-5-2」の布陣

 要するに、スペインを相手にしても前線から積極的にプレッシングを行うハイプレスは有効な手段になるということだ。相手に自由な時間を与えないようにプレッシングし続ければ、例え精密なパスサッカーでも綻びはつくれる。もちろんその際に、それぞれのタスクをはっきりとしておかなければならない。特に、前線でワイドなポジション取りをするウイングと、そのウイングとセンターフォワードの間に位置取るインサイドハーフに対するマークは整理して臨む必要があるだろう。ウイングとインサイドハーフの横位置同士の連動した動きはもちろん、時には縦方向での連動した動きで相手を混乱させてくる。どういった状況で誰が誰につくのかという細かい確認とシミュレーションをしておかないと、あっという間に崩されてしまう。

 ハイプレスを機能させるためには、「3-5-2」の布陣にすべきだ。先に述べたように、スペインは前線にセンターフォワード、両サイドのウイング、2人のインサイドハーフを並べてくる。これに対応するために、守備時には5人が並ぶ3バックの布陣が最も適している。このときにインサイドハーフをセンターバックがマークするのか、ボランチがつくのかをしっかりと確認しておいたほうが良い。そして、スペインはビルドアップ時にはセンターバック2人でボールを回す。相手が同数でプレッシングしてくる場合には、アンカーのブスケッツが最終ラインまで下りてきてボール回しに加わる。この場面で日本はしっかりとマンマークにつき、相手に自由な時間を与えないようにしたい。攻撃時の布陣は仮に「3-2-4-1」になっても構わないが、守備時には「5-3-2」になり、相手の選手ひとりに対して必ずひとりがプレッシャーに行くマンマーク気味の戦術にしなければ、容易に崩されてしまうし、チャンスも生まれないだろう。

◆得点のチャンスはくるか?

 そして攻撃についてだが、高い位置でボールを奪ってショートカウンターで仕留めることが理想になる。しかし、ハイプレスを仕掛けても基本的には押し込まれるので、ボールを奪える位置は自陣の深い位置になり、相手ゴールまでは遠い状況がほとんどになるかと思われる。さらに、スペインはボールを奪われた後のトランジション(攻守の切り替え)も早く、すぐにハイプレスを仕掛けてくる。はっきり言って自由に蹴らせてもらえる時間はないと思ったほうがいい。今の日本代表の選手たちの技術力を鑑みると、そこからきれいにつないで相手ゴールに迫ることはできない。よって、相手最終ラインの背後を狙って素早く蹴り込み、全体を押し上げ再び前線からプレッシングにいったほうがリスクも少ないし、チャンスも生まれやすい。セカンドボールからゴールチャンスに持っていくことも可能なので、きれいにボールをつないで攻めようという希望は捨てるべきだ。

◆誰を先発メンバーにするのか

 簡単に攻守のシミュレーションを行ったわけだが、そのときに誰を先発させるべきだろうか。酒井宏樹や冨安健洋が実際にどういった状態なのかはわからないが、デュエルの強さを考えれば最終ラインは右から酒井、冨安、吉田、板倉、長友を並べたい。そして、前線には浅野あるいは前田、加えて伊東純也をFWとして起用することをオススメする。正確なボールを前線に送れないことを前提とするならば、スペースに走ってマイボールにできる確率が高くなるスピードのある選手に期待したい。また、しっかりとハードワークできる選手であることも条件となるため、前線のポジションでは守備が緩くなる鎌田は使いづらい。中盤は遠藤、守田を起用し、もう1人は鎌田か久保を並べるのはどうだろうか。守備一辺倒にならないためにも、少しでも前線で時間を作れる選手がほしい。スペインを相手にそれが可能で、かつ相手の急所を狙える牙も持っている。守備面で多少のリスクは感じるが、勝つためには得点しなければならず、選手起用によって少しでもその可能性を高めておきたい。遠藤が奪ったボールを鎌田あるいは久保が拾い、素早く相手サイドバックの裏のスペースへパスを出す。それをスピードのあるFWが相手陣地深くまで運び、ゴール前に中盤の選手が上がってきてゴールを決めるというイメージだ。手数をかけずに相手ゴール前まで運べるかがカギとなる。

 とにかく、ドイツ戦の前半やコスタリカ戦のように細かい意思疎通のずれがないようにしてほしい。チームワークが大切と主張してきた選手らだが、肝心のところでできていないことを今大会では露呈している。あらゆる状況を想定して、誰がどう対応するのかをはっきりさせる。そして、それぞれのタスクを遂行できれば決して勝てない相手ではない。ミスの許されないひりついた試合になり、選手にとってはギリギリの戦いを迫られる。そういった状況では、必ずファンやサポーターの声援が選手に力を与え、それが一歩先に踏み出す源になる。日本代表の選手やスタッフはもちろんだが、応援するみなさんも最後まであきらめずに声援を送ってもらいたい。

<文/川原宏樹 写真/日本雑誌協会>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる