note作家の猫山課長と申します。金融機関で課長をしながら、ネットでは働き方やキャリアに関する執筆活動を行い、ありがたいことにSNSなどで多くの反響をいただいています。

 今回はイーロン・マスクによるTwitter社買収と、それに伴う一連の「イーロン流働き方改革」について考えていこうと思います。

◆「ハードコアに働くか、退職するか」

 2022年10月28日にイーロン・マスク氏が「the bird is freed(鳥は放たれた)」とツイートし、Twitter社の買収が完了したことを告げました。これまでに5000人規模の人員削減が行われたとみられており、そのアクションは大きな驚きを持って伝播していています。

 その騒動のなかでイーロン・マスク氏はTwitter社員に対し「ハードコアに働くか、退職するか。」の最後通告を突きつけるなど、近年の経営者にはみられないマッチョな姿勢を隠しません。

 アメリカで起きたことがすぐに日本でも起きるとは限りませんが、一つのトレンドとなる可能性はありそうです。我々日本の会社員の働き方の変革が始まる狼煙として受け止め、働くための新たなマインドをお示しいたします。

◆“突然現れた”労働環境の是正勧告

 日本では働き方改革関連法案が2019年4月1日から一部が施行され、その中では「1年あたり5日間の年次有給休暇の取得」が企業に義務付けられました。これまでろくに有給を取れなかった企業も多いと思われますので、大きな変化です。

 私の勤務する会社でも、いきなり「年に10日以上社員に有給を消化させること」との指示が上から飛んできました。これまで有給を使うことは重罪であるかのような企業風土だったのが、いきなり「10日の有給消化の義務づけ」に変わり驚いたというか呆れてしまいました。あまりに消化してこなかったため、有給に関する基礎知識がなく、慌てて調べたくらいです。

 同時に、長時間労働にもメスが入り、残業時間について厳しく追求されるようにもなりました。労働環境の大幅な改善は、突然我々の前に現れたような気がします。

 やっと、人間らしい生活が手に入り始めました。しかし、その矢先にイーロン・マスク氏によるTwitter社の買収と「ハードコアに働く」ことへ回帰せよとの主張。我々が向かっている先とは正反対に見えます。

◆経営者が「ハードコアな労働」を求める理由

 しかし、イーロン・マスク氏の主張に対し「何を言っているんだ!」と声高に主張する経営者は、私の観測範囲ではとても少ない。

 経営者は、働き方改革を推進しながらも、心の中では「イーロンよく言った!!」と叫んでいるに違いありません。

 経営者としては当然、より多く働いてもらいたいに決まっています。有給は休んでいながらも給料は変わらないわけですから、経営的な目線だけで考えれば単純にロスになります。実際に年5日の有給消化義務づけが始まってから「仕事がまわらない」とこぼす経営者を多くみました。 

 また、労働時間の減少は若手の成長機会を奪います。労働時間が短くなるとシンプルに先輩・上司の部下指導の時間はなくなります。実感されている方は多いでしょう。

 経営者が求める世界は、働き方改革の先にはありません。イーロン・マスクの世界の先にこそあるのです。であれば、あなたがハードコアに働くことで、経営者からの信頼を得ることができるのでしょう。

「それはあまりに経営者にとって都合がいい話だ!」と、あなたは言うかもしれない。しかし、あなたが会社員として生きていくならば、経営サイドからの評価からは逃れられません。

◆働き方改革でも競争はなくならない

 そして、ハードコアに働くことは、今の日本においてとても勝率の高い「コスパの高い戦略」です。

 何せ上司は働き方改革とパワハラのダブルバインド状態で、前述したようにろくに部下の指導もできません。ですので、あなたの競争相手は強制的な成長を迫られる機会が減少しています。

 その状況において、あなたはより多くの業務にトライし、上司から能動的に指導を引き出したりするだけで、緩くなった環境に首まで浸かった社内の競争相手からリードを奪うことが可能です。

 忘れてはならないのは、「働き方改革により競争がなくなるわけではない」ことです。それどころか、ホワイトな環境にありながらも自らブラックな環境を作り出し、強制的に成長しようとする「セルフブラック君」が一足飛びに出世しやすい環境が整いつつあります。

 会社に残るにしろ、転職するにしろ、個人の能力次第であることはいつの時代でも変わりません。働き方改革で呆けている日本人に、イーロンは冷や水をぶっかけました。これからは、セルフブラックで働くことが、結果として高コスパとなるでしょう。

 働き方改革は「格差拡大装置」の一面が隠されています。まさか、あなたは間に受けていませんよね?

【猫山課長】
金融機関勤務の現役課長、46歳。本業に勤しみながら「半径5mの見え方を変えるnote作家」として執筆活動を行い、SNSで人気に。所属先金融機関では社員初の副業許可をとりつけ、不動産投資の会社も経営している。noteの投稿以外に音声プラットフォーム「voicy」でも配信を開始。ツイッター(@nekoyamamanager)