―[マネー(得)捜本部]―

世界的な利上げの進展で振り回されているのは為替や株価のみにあらず。仮想通貨も再び活気づいている。’24年に半減期というビッグイベントを控えたビットコインの買い場を探った。
◆密かに動意づいているビットコイン

ビットコイン すっかり話題に上がらなくなったビットコインが密かに動意づいている。1月以降、右肩上がりを続け、2月には半年ぶりに2万5000ドルに到達。いまだ’21年バブル時の高値約7万ドルにはほど遠いが、3万ドルも視野に入ってきた。著名ビットコイン投資家の田中daisuke氏が話す。

「ビットコインはリスクマネーの流入によって値上がりするため、米国の金利動向に左右されやすい。金利が上がるとリスクマネーが減少してビットコインは値下がりする傾向にありますが、年始から米国の利上げ打ち止め感が出てきたため上がってきた形」

◆「来年の半減期に対する期待もある」

 背景には「来年の半減期に対する期待もある」(pafin代表のアミン・アズムデ氏)という。ビットコインは4年ごとに新規発行枚数が半分に縮小される仕組み。希少価値が高まるため、半減期と前後して値上がりする傾向にあり、’24年には4回目の半減期を迎えるのだ。仮想通貨取引所関係者のA氏が話す。

「1回目の翌年の’13年に1150ドルの高値をつけ、2回目翌年の’17年には“出川組”(日本の新規投資家)の流入で2万ドルまで上昇。

3回目翌年の’21年にもバブルが起きたように、ビットコインには半減期翌年にオールタイムハイ(新高値)をつける“アノマリー”があります。それも、前回高値の3倍以上に値上がりしている。そう考えると’25年にかけて20万ドルに到達してもおかしくはない」

◆値上がりの原動力となりそうなのはチャイナマネー

 アミン氏も「私はもう’21年バブルのような上昇は見られないと考えていますが、クリプト系インフルエンサーのPlanB氏のストック・フロー・モデル(市場にあるビットコイン量と新規発行量の比率から予想価格を導くモデル)では、’24〜’25年に100万ドル近くまで上がると予想されている」と話す。

 値上がりの原動力となりそうなのは、チャイナマネーだ。

「中国は’21年9月に仮想通貨取引を全面禁止としましたが、香港は今、仮想通貨の“自由化”に取り組んでいる。4月には取引所のライセンス交付が始まるため、多数の事業者が開設に動いている。これをきっかけにチャイナマネーが流入すれば、年内に“中国全面禁止”前の5万ドルを回復する可能性もある」(A氏)

 ただし、不安材料も多い。

◆多数の不安材料

「SEC(米証券取引委員会)は取引所大手Krakenを『ステーキング(仮想通貨を保有して“配当”のようなリターンを得る方法)代行業務は無登録の証券提供に当たる』として起訴。さらに、BUSDというステーブルコイン(米ドルで担保された価格の安定したトークン)は2月に発行禁止処分を受けました。

イーサリアムは昨年8月にPoS(プルーフ・オブ・ステーク)というコンセンサス・アルゴリズム(合意形成の方法)に移行しましたが、その数時間後にゲンスラーSEC委員長が『PoS系は(違法な)証券に該当する可能性がある』と狙い撃ちするような発言をした。ステーブルコインやイーサリアムが排除されるようなことがあれば仮想通貨市場は壊滅的なダメージを受ける」(田中氏)

 その半面、日本の市場は盛り上がっていく可能性も。

◆盛り上がる日本の市場

ビットコイン「米国と対照的に、日本は’17年に世界初の仮想通貨に関する法律を定め、昨年からはトークンの上場基準を緩め、’23年度税制大綱には企業が発行したトークンを期末時価評価課税対象外とすることが盛り込まれるなど、規制緩和を進めています。さまざまな事業者がトークンの発行・活用を検討しており、日本がトークン・エコノミーの牽引役となる可能性もある」(アミン氏)

 上げる材料がこれだけあるなら、今年は買い場かも。

ビットコイン【ビットコイン】
’24年の半減期を経て’25年に20万ドル到達もありえる!?

イーサリアム【イーサリアム】
米規制強化がネックとなるも発行量減少で底堅い値動きに

<取材・文/池垣 完(本誌) 図版/ミューズグラフィック>

【田中daisuke氏】
ビットコインマキシマリスト。’17年仮想通貨バブル以前からビットコインに投資をし続ける古参投資家。「coinrun」という仮想通貨系有料サロンも運営中。ツイッターは@tanaka_bot_1

【アミン・アズムデ氏】
pafin共同創業者。ゴールドマン・サックスで2000億円の運用に携わった後、’17年に斎藤岳氏とともにクリプタクト(現pafin)起業。仮想通貨の損益計算ツールなどを提供中

【A氏】
仮想通貨取引所関係者。国内外の仮想通貨取引所を渡り歩き、現在は海外仮想通貨プロジェクトの日本進出支援を行う。資産の大半をビットコインで保有する投資家でもある

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