世界の投資家から熱い視線を注がれ、株高に沸いている日本。だが、背後では金融商品を巡るトラブルが相次いでいる。警戒すべき金融商品と、そのカラクリを熟知して情報強者となるべし!
◆証券マンたちが告白「売り手ばかり儲かるヤバい商品」

新NISAを前にした投資ブームの裏側では、金融商品を巡るトラブルが頻発。営業マンと投資家の目的は必ずしも一致しないためだ。今回証券マンたちを招集し、その内実を赤裸々に語ってもらった。

――来年1月の新NISA開始に向けて銀行・証券の口座獲得競争が激化している。

上野:新規に口座開設してくれた人に数千円から1万円程度の現金やポイントを進呈するキャンペーンがあちこちで行われている。その影響もあって、投資信託の残高は過去最高を更新し続けています。

高田:中国経済の減速を受けて、その受け皿になりえるインドに投資する投信への資金流入が増えてますね。7月には新たに売り出された半導体関連ファンドも600億円近く集めるなど、特定の分野に投資する「テーマ型投信」がよく売れている。

伊藤:ただ、米国のエヌビディアを筆頭に世界の半導体銘柄は高値圏にあるため、半導体ファンドの先行きを不安視する人も少なくない。テーマ型投信は「この分野は成長性が高い」と勧めやすく、信託報酬が高めで売り手にはオイシイ商品ではありますけど。

◆「地銀や中小証券はなりふり構っていられない」

高田:地銀や中小証券はなりふり構っていられないんですよ。新NISAは長い年月をかけての資産形成を促す制度のため、若年層にこそ適しているのに、都市部と比較して地方には若者が少ない。それでも新NISAに向けて半ばノルマのように新規口座を獲得するよう言われているので、ポイント稼ぎのために売りやすい投信を売るほかない。

上野:でも、最近は人気の投信ばかり売っても営業成績にならない。特定商品の残高が増えていくと、顧客本位で営業しているのか?と金融庁から目をつけられかねないので、本社が「人気のある投信ばかり勧めるな」と言ってくる。

◆これから仕組債絡みの訴訟ラッシュが起こる?

――複雑でハイリスクな仕組債の監視を金融庁が強化していますが、その影響もある?

上野:千葉銀行とちばぎん証券が7月に関東財務局から業務改善命令を受けましたが、これは氷山の一角。金融商品の取引に関するトラブルの解決を手助けしているFINMAC(証券・金融商品あっせん相談センター)には続々と仕組債関連の紛争が持ち込まれているんです。これから仕組債絡みの訴訟ラッシュが起こると言われてます。

高田:私も勧めたことありますけど、債券=安全資産という認識だから売りやすいし、売るだけで5%は手数料が抜けるから、やめられなかった。

上野:一時は利回りが40%を超えるヤバい仕組債を売ってるところもありましたね! 米国に上場する中国銘柄など、ボラ(変動率)のある銘柄を“参照”する仕組債にすると、リスクに見合った利回りを設定できる。実際、喜んで繰り返し買う客も多かったんですけどね。でも、米中関係悪化で中国株が軒並み暴落して、その煽りで元本の9割以上が吹き飛んだ仕組債も出たり……。

伊藤:ちばぎん証券しかりで、売り上げの半分近くを仕組債が占める銀行系証券はいくつもあった。数か月で早期償還されるように設計すれば、短期間に何度も買わせることもできるから、ある大手証券の人は「仕組債は覚せい剤だ。売り出したらやめられない!」と話していた(苦笑)。

取材・文/週刊SPA!編集部
※9月5日発売の週刊SPA!特集[買うと損する]金融商品より

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