化学メーカーで勤務する傍ら、経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。
さて、今回はオーケー株式会社の業績について紹介したいと思います。オーケーの特徴といえば何と言っても「安さ」であり、消費者から高い支持を受けてきました。人口減少でスーパー市場全体の規模は縮小し続けている中、安さを武器にオーケーは近年著しい成長を遂げています。他の流通大手も効率化に勤しんでいますが、同社はなぜ安さを実現できているのでしょうか。安さの秘訣と今後の戦略についてまとめてみました。

◆「特売日や特売品を設けない」戦略

オーケーは酒問屋の小売部門をルーツとしており、1967年に問屋から分離しオーケー株式会社として設立されました。1971年に株式会社東京スーパーマーケットを合併します。1986年には基本方針に「Everyday Low Price」を追加し、このEDLPを基本戦略とするスーパーとなりました。

EDLPはもともと米・ウォルマートが生んだ言葉であり、特売日や特売品を設けるのではなく、あらゆる商品の低価格を目指す施策を意味します。店内の値札には「競合店に対抗して値下げしました」と書かれていることが多く、周辺のスーパーよりも安い価格設定を心がけているようです。また299円(税抜)のお弁当も看板商品となっています。

◆消費税とともにスタートした「会員割引サービス」

商品自体の安さだけでなく、食料品の割引も魅力の一つです。1989年に消費税が施行された際はそれを相殺すべく、オーケーは食料品について3%相当額の割引を実施し始めました。飲食料品の消費税が8%となった現在でも、オーケークラブ会員が現金で支払えば、食料品は3%割引で購入可能です。

ちなみにオーケークラブは2006年に発足したサービスであり、カード発行費用(現在は200円)を払うだけで割引を受けられるため、会員数は2010年に198万人、2020年に544万人、2022年に648万人と年々増え続けています。

◆「平米辺りの売上」が平均的なスーパーより多い

スーパー市場自体は縮小傾向にあります。90年代後半にピークを迎えて以降、少子高齢化で縮小傾向にあり、2010年代は13兆円台で横ばいに推移しました。近年はコロナ禍による内食需要やインフレもあり、2022年に15兆円台まで持ち直しましたが、今後長期では減少傾向にあると予想されています。しかし、このような状況下にありながら、安さで消費者の心を掴んだオーケーは近年、著しく規模を拡大してきました。2020/3期から2023/3期の業績は次の通りです。

【オーケー株式会社(2020/3期〜2023/3期)】
営業収益:4,360億円→5,090億円→5,251億円→5,534億円
店舗数:123店→128店→134店→142店

3年間で1,000億円以上も売上が伸びていることが分かります。そして店舗数も順々に増えており、2023年11月現在で東京・神奈川・千葉・埼玉の関東1都4県に146店舗を展開。関東での規模感は約140店舗を展開するスーパー「ライフ」と同じくらいです。

また、より細かくデータを見ていくとオーケーは店舗の運営効率にも優れていることが分かります。1店舗あたりの年間売上高は約40億円、平均売場面積は約1,600m²であり、そこから1m²あたりの年間売上高を算出すると200万円を超えます。一方、平均的なスーパーのそれは120万円前後と言われているため、限られた空間でより多く稼ぐことに成功しているのです。

◆“安さ”を実現する背景にある2つの要素

オーケー成長の原動力となっているのは何と言っても“安さ”にあります。しかしながら、その安さはどのようにして実現できているのでしょうか。まずあげられるのは「品ぞろえを重視しない仕入」です。パンや加工食品、お菓子など、一般的なスーパーでは各ジャンルについて様々なメーカーの商品を取り揃えています。

一方、オーケーではジャンルごと商品種は少なく、安いものがあれば集中して仕入れ、単価を下げる方針をとっています。今まで売られていた商品に代わり、他メーカーの商品が並べられていることは多々あります。商品棚の中身で変わることも多いため、いつもの商品を買えるとは限らないというデメリットもありますが、消費者は安さを享受できるのです。

また、「電気代の削減」もEDLPを支えています。スーパー1店舗当たりの水道光熱費は1か月で100〜200万円と言われており、電気代は店舗にとって痛い支出の一つです。空調や冷蔵・冷凍庫、照明などで電気が使われていますが、オーケーでは飲料・酒類が常温で保管されているため、こうした部分で競合よりコストをカットできているとみられます。

特にウクライナ侵攻後は石油価格上昇に伴う光熱費の高騰にスーパー各社は苦しめられています。その他、競合より高い6円のレジ袋など、商品価格を下げるために他の部分の利便性を削るような施策がみられます。お客様本意を追求しすぎるのではなく、安さために自社本意の姿勢を貫いていることが安さの秘訣と言えるでしょう。

◆「関西での勢力拡大」に向けた施策は?

最近では“銀座出店”が注目されていましたが、オーケーが特に狙っているのは関西です。オーケーは2021年、株を一部保有していた関西スーパー(現在では約60店舗を展開)の買収方針を決定し、保有比率引き上げを狙いました。しかし、10月における関西スーパーの株主総会でエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)株式会社との経営統合が可決されてしまいます。

H2Oは阪急・阪神百貨店のほか阪急オアシズやイズミヤなど関西地盤の百貨店、スーパーを展開しており、関西でのさらなる拡大を狙っていたようです。もちろんオーケー側は反対しましたが、度重なる裁判の結果、オーケー側が断念し関西スーパーの株を売却することとなりました。

M&Aで失敗したオーケーは実店舗を構える方針へと切り替えました。2024年11月には大阪府東大阪市の高井田で関西1号店をオープンする予定となっています。出店予定地を見ると高井田の駅に近く、大阪のベッドタウンという土地柄であるためポテンシャルは高いとみられます。

ただし、関西にはスーパー玉出やサンディなど激安が売りのスーパーが既に展開しており、お得感のある業務スーパーも展開しています。関西での展開はさらなる低価格競争になるとみられ、より厳しい施策が求められそうです。

<TEXT/山口伸>



【山口伸】
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_