コロナ禍でリモートワークが浸透するなか、オフィスの役割は大きく変化。空き物件が増えたことで賃料が安くなり、かつて人気だったエリアの物件を安く借りることができるという。
◆人気エリアでオフィスを借りるなら今が狙い目

「オフィスの賃貸はコロナ禍前、非常に過熱していましたが、テレワークが進み、オフィス市況に大きな変化がみられました。」と解説するのは、オフィス賃貸を専門に手がけるHATARABAの大野浩平氏。

「以前のオフィス面積の考え方は、『1人あたり2〜3坪』という計算式がありました。つまり、50人規模なら100坪、100人規模なら200坪のフロアを借りるのが一般的です。

しかし、テレワークが進んで出社率が下がるなかで、自分の会社はどれくらいの広さのオフィスが必要なのか把握するのが難しい会社が急増しました。

その結果、’20年から’22年の夏頃までオフィスを移すのか、それとも現状維持するのか。ジャッジをしない会社が多くなったことで、人気のエリアで物件が空いても埋まらなくなり、賃料がコロナ禍前と比べると下がる傾向になっていったんです」

 大野氏によると、パソナのように本社機能を移転させた企業はごくわずか。ニュースで取り上げられたことで注目されたが、多くの企業はオフィスを現状維持していたのだ。

「今年に入り、出社率が増えたことでオフィス回帰する企業が増えています。特に人気なのは、アクセスがしやすい好立地のエリア。

IT業界などコロナ禍でも好調だった企業は高級物件のあるターミナル駅を、予算を抑えたい企業はコスパのいい駅を選ぶ二極化が進んでいます」

◆コスパのいいエリアが5位と4位に並ぶ

 大野氏に2024年現在、特に人気のエリアベスト5を挙げてもらった。人気の指針となるのは、①コロナ禍で下がった賃料がどこまで回復しているのかと、②オフィスの募集面積がどこまで下がっているのかの2つ。

 たとえば、六本木の場合、コロナ禍前は募集面積が少なく、賃料も高くなる傾向にあったが、2021年2月以降、募集面積が増えた。賃料も下降傾向となり、アフターコロナの今もその状態が続いている。

 これらの情報をもとに、関東の主要駅を比較したところ、5位は五反田、4位は新橋という結果に。

「五反田と新橋は、どちらもコスパがいいエリア。どちらも山手線内で交通の便が比較的いいわりに、賃料が安い。予算を抑えたい企業に人気です。

新橋は汐留エリアが近いのもポイント。もともと人気のあるエリアでしたが、コロナ禍で賃料が安くなり、非常に狙い目になっている。この賃料だったら借りようという企業が増えた結果、ほかのエリアよりも早く回復できました」

◆3位と2位はターミナル駅がランクイン

3位は渋谷、2位は東京と巨大ターミナル駅が並んだ。

「渋谷と東京は、どちらもアクセスがいいうえに、直近に再開発が行われたのが大きい。もともと人気のエリアでしたが、再開発されたことでその価値はさらに高まりました。

さらに渋谷はIT系の企業が多いのですが、コロナ禍でも好調だったIT系企業への転職が増えたことで、渋谷の就業人口が増えたことも人気に拍車をかけました。

一方、東京は金融街として知られていますが、金融業界はコロナ禍でも出社率が高い傾向にありました。広いオフィスを借りる大企業が多く、回復が早かった印象です」

◆1位は根強い人気を誇るあの駅が獲得

 1位に輝いたのは、オシャレな人気エリアとして知られる恵比寿。オフィス街のイメージはあまりないが、大野氏によると「もともとコアなファンが多い」という。

「恵比寿には化粧品や健康食品など、女性向けの企業が多い。そういった会社は、近隣の渋谷よりも恵比寿を好みます。恵比寿からオフィスを移そうとしないので、コロナ禍でもほとんど変化はありませんでした。

また、恵比寿は開発が進んでおらず、恵比寿にオフィスを構えるなら、いまだ恵比寿ガーデンプレイスがゴールという位置づけ。そもそも供給が少ないのに、根強い需要があるのも恵比寿の人気が落ちない理由です」

◆5年後に盛り上がる注目のエリアは…

AdobeStock_327278557 一方、5年後に盛り上がるであろうエリアとして、大野氏が熱い視線を送っているのが新宿と品川だ。

「前者は新宿グランドターミナル構想、後者は品川未来プロジェクトと、どちらも再開発が進んでいて、今後ますます盛り上がっていくでしょう。特に品川は賃料が底値になっており、今はかなり狙い目。再開発後を見据えて、拠点を移しておくのは、選択肢としてアリだと思います。

よく新築のビルが建って供給が増えると、家賃は安くなるんじゃないかと勘違いされる方がいますが、オフィスの家賃はトップダウンで決まります。新しいビルが経つと、そのビルの賃料をベースに周辺のほかのビルも賃料を決めていくので、エリア全体の賃料が上がります。そのため、新宿や品川にオフィスを移すならいまがチャンスといえます」

<取材・文/黒田知道>