今年の夏ドラマは、喫煙シーンが多く見受けられる。銀座のクラブでくゆらせるまっとうな小道具から、フレッシュな司法修習生が無理に吸う謎設定まで、パターンはいろいろ。電子たばこ派の探偵もいる。脚本界のレジェンド、倉本聡氏の「やすらぎの郷」(テレビ朝日)の吸いまくりに触発されたわけでもないだろうが、不思議な同時多発ぶりだ。

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 内容的に、たばこが小道具として機能しているのは、テレビ朝日「黒革の手帖」(木曜9時)。昭和の松本清張作品を現代にアレンジしているものの、舞台が銀座のクラブであるだけにたばこは切り離せず、上客の奥田瑛二スパスパやっていたりする。

 主人公の悪女、原口元子を演じる武井咲は、スリムタイプのたばこ。借金の完済証書を燃やした火に吸い口をつけて着火し、むすっと横領の作戦を企てる。くわえるだけで吸わない、あっという間に消す、今のところ1話だけ、という形ばかりの雰囲気はあるものの、「銀行勤め」という表の顔との落差を印象付けるシーンになっていた。

 日本テレビ「愛してたって、秘密はある。」(日曜10時半)では、主演の福士蒼汰が喫煙。弁護士を目指すフレッシュな司法修習生という役どころだが、婚約者の父親と屋上でたばこを吸うシーンがあった。遠藤憲一から火をもらって一服するとせき込み、「吸わないなら言えよ」「結婚させてください」。特にたばこが必要とも思えない謎シーンだったが、さすがにサマになる遠藤憲一パパがいかにも手ごわそうに吸うので、2人の力関係が分かるシーンにはなっていた。

 探偵もののTBS「ハロー張りネズミ」(金曜10時)も喫煙シーン多め。ショーケンや優作の時代から、探偵ものといえばたばこでもあるが、主演の瑛太が手にしているのは電子たばこという、今どき指向。むしろ相棒の森田剛がリアルたばこで圧倒的な表現力を見せていたりする。火の部分を灰皿できれいにしているヒマそうな感じとか、ずうずうしい男の顔に煙を見舞う感じとか。ほかにも、フジテレビ「僕たちがやりました」(火曜9時)では、不良高校生の定番アイテムとしてたばこが登場した。

 たばこといえば、4月にスタートして高視聴率を記録しているテレ朝昼ドラマ「やすらぎの郷」(月〜金曜午後12時半)のインパクトは外せない。脚本家役の主演石坂浩二をはじめ、近藤正臣、ミッキー・カーチス、浅丘ルリ子、加賀まりこら出演者が軒並み吸っている昭和の世界。たばことともに人生があった世代の俳優陣の、自然なたばこしぐさがしぶい。禁煙しろと全否定された主人公が「体に悪いことくらい人に言われなくても分かる」とブチ切れるシーンが話題になった。自主規制時代に確信犯でやっているレジェンド脚本家の歯応えがすさまじい。

 「太陽にほえろ」のジーパンの殉職シーンとか、「探偵物語」の工藤ちゃんのライターの火力とか、昔はたばこの名シーンがたくさんあった。映画まで広げると山ほどあって、個人的には「スケアクロウ」のオープニング、「さらば友よ」のラストシーン、「ローマの休日」のアン王女の冒険などが記憶に残っている。

 出会いと別れ、喜怒哀楽などさまざまなものを表現してきたけれど、今は昭和設定のアイテムか、不良設定の小道具の役割。もう無理に盛り込む必要もないと感じる。昭和の新聞社を描くのにスモーカーが1人もいないようなドラマを見るとさすがにあぜんとするが、もう慣れた。要はきちんと意図があり、役にはまっているかに尽きるのだけれど。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)