ペナントレース前半を2位で折り返した阪神は、弱いといわれる後半戦でも2位をキープ(1日現在)。虎ファンはますます応援に熱が入っている。その阪神が前回リーグ優勝したのは2005年のこと。当時、先発エースとして大活躍していたのが井川慶投手(38)だ。06年のシーズン終了後に大リーグへ移籍。最近はあまり名前を聞かないが、今どうしているのか。

■特別待遇のオファーを断り「無給」

 会ったのは、兵庫県三田市にある駒ケ谷運動公園内の体育館。井川さん、関西独立リーグ「兵庫ブルーサンダーズ」の一員として、20代の若い選手に交じって練習していた。

「2月に選手契約しました。今のチームの続木敏之監督は僕のタイガース時代のコーチで、オリックスを辞めた時に声をかけてくださった。どこかで野球をやりたいとは思ってたんで、練習に参加させていただくところからスタートしました」

 まずはこう言って、さわやかな笑顔を見せた。井川さんは、11年まで大リーグのNYヤンキースに在籍。12年に帰国してオリックスに入団したが、15年に戦力外通告を受けていた。

「週6日は朝10時から午後3時まで、ここかホーム球場のアメニスキッピースタジアムでチーム練習をします。その後、個人的に最低でも週3日、ノエビアスタジアム神戸でパーソナルトレーナーを付け、3時間ほどウエートトレーニングをしています。試合は中9日のローテーションで、これまで10試合投げて9勝。ケガなくこられてるんで満足です。球速? 年相応の140キロ台半ばですね」

 いや、さすがじゃないか。もう一度、日本プロ野球12球団で投げる気は?

「いえ、何も考えてません。僕が決められることではないので。ケガなくシーズンを通して投げたい、自分の球をもう一度投げたい、そうすれば満足して納得できるんじゃないか、と思っています。ただそれだけです」

 現役を終えた後の第二の人生については、どう考えているのか。

「野球以外のこともやってみたいと思いますし、野球以外のことを考える時期にきているのかなと。でも、まだいろいろ考えたりしている段階で、ハッキリしたものがあるわけではありません。飲食店とかサービス業は自分には合っていないと思ってます、ハハハ」

 阪神時代、お世辞にもファンサービスに熱心な選手ではなかった。その自覚はあるようだ。

「僕がスーパーで買い物をしてると、ファンの方がじっと見ていて『あ、ネギ買ってる!』とかって言われて(笑い)。そういうのがちょっと苦手で、サインとか求められそうになると、サッと逃げてました。でも、今はそんなことしませんよ。サインもするし、一緒に写真も撮る。断るより、応じたほうが早いんで」

 一皮むけたようだ。

 ところで、井川さんが所属するベースボール・ファースト・リーグは基本的に無給。井川さんはチームから特別待遇の申し出があったというが、断っちゃったとか。

「本来、若い選手がチャレンジするための場なので、チームに負担をかけたくなかったんです。これまでいただいたものがあり、それなりに運用もしているので、ハハハ」

 余裕だなあ。

■「メジャーに行ってよかったと思う」

 さて、井川さんは98年、水戸商業高校からドラフト2位で阪神に入団。01年に先発ローテ入りして活躍し、03、05年のリーグ優勝の立役者となった。04年にはノーヒットノーランを達成。阪神のエースとして活躍した。

「今の成績に満足してちゃいけない、徹底的にやりたい、とずっと思っていたのを覚えています。活躍できたのは自分の力というより、コーチやトレーナー、スタッフのサポートが大きかった。いただいたアドバイスのおかげで、ケガもせず、自分が変われた。監督が起用してくれて結果が出たことで、自信にもなったと思います」

 06年のオフに、ポスティングでNYヤンキースに移籍。5年2000万ドルプラス出来高という大型契約が話題となったが、結果は2勝止まりだった。

「メジャーでなかなか投げられなかったのは、チーム事情で仕方がなかった。判断基準が違うとは思ったけど、チャンスは平等にいただきました。いろんな選手に出会えて視野が広がって、メジャーに行ってよかったと思っています。今、オリックスにいるフィル・コーク投手なんかとは、一緒にご飯に行ったりしてましたよ」

 07年に結婚し、現在は家族で神戸で暮らす。

「休日は犬の散歩とかドライブをして気晴らししています」