全日本プロレスのマットで戦い続けて40年以上、いぶし銀のベテランレスラー、渕正信さん(63)。ダンディーなイメージ通りに、酒の飲み方は冷静沈着だが、あの怖いレスラーに飲み比べで勝ったことが……。

 お酒は飲みますねぇ。いつも楽しく飲んでます。初めて飲んだのは若い頃だけど、酒好きの親父が部屋で飲んでる時にオレが興味を示したらちょっと飲ませてくれて。ビールと酒。気持ち悪くはならなかった。オヤジは一緒に飲んでくれてうれしかったんだろうなぁ。

 それからたまに親父とカウンターだけの立ち飲み屋で飲んだりしました。レスリング部で体もでかいし、180センチくらいあったから、周りからは立派な大人に見えただろうね。

 でも、レスラーになってからは体が小さい方だったから、当時は巡業で旅館に泊まると先輩レスラーから「体をでかくするために食え! 飲め!」ってさんざんビールや日本酒を飲まされたよ。今みたいに小さくてもレスラーになれる時代じゃなくて、馬場さんや鶴田さんはじめ、みんなデカくて100キロ以上もあったからねえ。僕なんか80キロなかったから殴られたり蹴られたりすると痛いわけよ!

 だから、筋肉をつけてデカくするために意識して食って飲みましたよ。大きい馬場さんと鶴田さんは飲まないんだけどね(笑い)。大熊元司さん、グレート小鹿さんとか相撲出身の先輩はみんな酒好きでしたね。

■「人には話すなよ」と言われたけど…

 最初はビールが好きでした。ビールといえば新日本プロレスの山本小鉄さんと飲んだことがあった。あれは昭和54年。小鉄さんが30代で僕が25か26歳。当時、新日本と全日本は競い合っていてピリピリした関係。小鉄さんの先輩で、オレらには大先輩レスラーのミスター林さんに「今、小鉄が四谷で飲んでるから、渕、付き合え」って誘われて。挨拶しかしたことがなかった小鉄さんとスナックで初めて対面したの。

 小鉄さんはビールばっかりだから、「渕、飲め!」って言って、すごい勢いで飲む。「よーし負けてたまるか」とオレもガンガン飲みました。2人で大ジョッキを70杯以上。あの小鉄さんが途中でダウンしたからね。林さんが「小鉄がダウンしたのを初めて見た。渕すごいなぁ!」って言って。俺はぜんぜん大丈夫。それよりツマミに乾き物しか出ないから、その方がまいったよ。サキイカとかピーナツだけで飲むんだから。

 小鉄さんのことはみんな「怖い」って煙たがってたけど、その日以来オレに会うとこっそり「渕、あの話は人にするなよ」って。そう言われても酒で小鉄さんに勝ったのはオレには一つの勲章だから、結構みんなにしゃべったよ。ハハハ!

 馬場さんにも話したら「小鉄の名誉のためにあんまり人には言うなよ」と笑いながらクギを刺されたけど。小鉄さんが亡くなるちょっと前に全日本の試合の解説にいらしてくれた時、みんなは怖がって遠巻きに見てたけど、オレだけは親しく話をさせてもらった。もともと、すごくいい人だからね。

 酒はずっと好きで、今はプライベートな知り合いとしんみり飲む機会が多いかな。健康診断で肝機能の数値はいつも悪くないのよ。ありがたいことだ。内臓が強いんだろうから、母親に感謝しなくちゃね。

▽ふち・まさのぶ 1954年1月、福岡県出身。74年にプロレスデビュー。世界ジュニアヘビー級王座など数々のタイトルを獲得。183センチ、105キロ。8月27日「2017 SUMMER EXPLOSION『最終戦』全日本プロレス45周年記念両国大会〜新たなる決意〜」(東京・両国国技館、開場13時30分、開始15時)。