コラム【今週グサッときた名言珍言】

「国民の常識です! これを知らない日本人は日本人とは認めません」(カズレーザー/テレビ朝日「張り紙パイレーツ!」3月20日放送)

 メイプル超合金のカズレーザーは「藤岡弘、」の芸名に「、」が付いている意味を問われ、「自分は未完成で先があるという思いを込めた」と即答した。「よく知ってるねえ」と柔和に笑う藤岡にカズレーザーが返した言葉を今週は取り上げたい。

 藤岡弘、(72)といえば、「仮面ライダー」の本郷猛を演じたこともまた、「国民の常識」だろう。だが、ヒーローものをやりたいと思っていたわけではなかった。愛媛県の田舎で育った藤岡にとって、一番の刺激だったのは映画。いつしか、その中に入りたいと思うようになり上京。松竹映画でデビューしたが、来る仕事は自分がやりたい役とは違っていた。

 彼が望んでいたのは、アクションだった。そこで選んだのが「仮面ライダー」だったのだ。当時は、スーツアクターなどいない。アクションシーンも自分自身で演じる。望むところだった。

 だが、仮面をつけているため視野が狭くなり、遠近感がなくなる。その状態のままスタントさながらのアクションをするのだ。結果、第10話を撮影中、バイクで転倒し大ケガを負った。これもまた「国民の常識」だ。

 療養中、本郷猛に代わり、2号ライダーが登場。そして、不屈の意思でリハビリを続け復活した1号に子供たちは歓喜したのだ。それから45年後の2016年、藤岡は映画「仮面ライダー1号」で再びライダーとなった。

「演じてないんですよ。だって私そのものなんだから、芝居する必要がない。自分が世界で見てきたもの、その体験を語っているだけ」(扶桑社「週刊SPA!」16年4月12・19日合併号)

 そう言う通り、企画段階から藤岡自身もかかわり、自身のボランティア活動や探検、武道公演などで世界100カ国近くを旅し、見てきた経験を反映した設定だった。

 彼のヒーロー像は武士道にのっとっている。武士道にはこんな言葉があるという。

「最も剛毅なる者は、最も柔和なる者なり。最も勇気ある者は、最も愛ある者なり。奢れし者を打ち砕き、敗れし者を慈しみ、失われぬ他者への哀れみの心を。平和の道に立つること、これすなわちもののふの道、武士道なり」(情報サイト「ウレぴあ総研」16年9月18日)

 まさに藤岡弘、そのものだ。冒頭の番組でカズレーザーに「これができたら『、』を取る人生の完成形はあるか」と尋ねられると、きっぱり「ない」と即答し、こう言った。

「一生挑戦し続ける。人生はサバイバル。戦いだよ。チャレンジし続ける。諦めない。屈しない。それが私の大いなるロマンだねえ」

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)