【ワンニャンのSOS】#116

 先日、かかりつけの飼い主さんが当院を出られたときにリードが抜けてしまい、弾みでワンちゃんが飛び出し、車にぶつかる事故がありました。待っていた方には事情を説明してすぐに診察すると、右後肢に力が入らずに立ち上がれず、腹部の圧痛を認めたものの、内臓に損傷はありませんでした。私の見立てでは、強打による腰椎から骨盤にかけての骨折や椎間板ヘルニア、脊髄損傷などが疑われました。

 そうなるとマヒや骨折の確認が必要で、脊髄損傷をはじめ場合によっては緊急手術も必要です。連携する2次診療病院に連絡すると、受け入れ可能とのことで、対応していただきました。そのときにお願いしたこともあります。診察時に不明なことや手術などの可能性があったときは、その場で決めず、私に連絡をしてほしいということです。

 担当した獣医師からその日のうちに連絡がありました。話を聞くと、打撲による神経の圧迫はありましたが、幸い脊髄損傷や神経の断裂はなく、腸骨の片側が骨折していたということです。

 このようなケースで2次診療の獣医師は、骨折部位を手術で修復することを第1選択にすることが多いですが、われわれ町の獣医師は必ずしもそうではありません。排泄困難などがなければ自然に骨がくっつく可能性を探ることもあります。その要因の一つが主にワンちゃんの年齢です。

■手術の負担を考えると…

 今回のワンちゃんは14歳のシニアで、年齢的に若いワンちゃんのように活発に走り回ったり、激しい動きをしたりすることはありません。飼い主さんも初老のご夫婦で、近所の散歩くらいです。これなら麻酔をして大がかりな手術をせずとも、自然治癒と理学療法、リハビリで十分回復できます。骨の化骨に3〜4週間ほどかかりますが、シニアということを考えると、手術の負担よりこちらが無難でしょう。

 電話で2次診療の獣医師にその考えを伝えると、尊重してくださり、以後は骨の付き具合を画像検査でチェックしてもらい、1カ月が経過。骨は無事にくっついたので、その後の理学療法とリハビリは当院で行っています。もちろん、飼い主さん夫妻も、この考えを納得の上で満足されています。

 この連載でも何度となく触れているように、最近は企業病院が増加。そのグループの中にかかりつけの1次病院、2次診療病院、総合病院を設けているケースも珍しくありません。そうすると、1次病院で対応できない治療は2次病院が行い、2次病院の治療方針が優先されやすく、今回のようなシニアのワンちゃんやネコちゃんにも麻酔を前提とした手術が行われやすくなります。

 シニアで簡単な骨折なら無理な整復が不要なことは、飼い主さんも頭にいれておくべきです。ドアに挟んだことによる手先や足先の骨折も、ワンちゃんネコちゃんともこのパターンに該当することが多いと思います。

(カーター動物病院・片岡重明院長)