【世界初「斜視」全国調査でわかったこと】#3
年齢を重ねるとさまざまな目の不調が出てきます。老眼だけでなく、ものが二重に見える、ぼやける、目がかすむ、疲れる、乾くなど。これらの症状を、最近では「アイフレイル」と呼んでいます。
アイフレイルとは、加齢に加えてストレスなどで目の働きが衰えた状態をいいます。目の健康と病気の中間段階にあるため、アイフレイルのうちに対策をとれば、目の健康寿命を延ばすことができるといわれています。
「実は、高齢者の斜視もアイフレイルのひとつなのです。高齢になると複視(ものが二重に見える)に悩む人が増えますが、原因の大半は斜視によるものです。斜視を治すことで症状が改善されることもあります」
こう話すのは、多くの斜視・複視の治療を行ってきた後関利明・国際医療福祉大学医学部教授(兼熱海病院眼科部長)です。
「斜視は生まれつき」と誤解している人が多いようですが、後関教授によると、加齢に伴って発症する斜視(加齢性斜視)もあり、高齢者の複視の原因のトップはこの加齢性斜視によるものだそうです。高齢化が進むにつれ「斜視人口」も増加していると考えられます。
実際、前々回、紹介した「日本人における斜視の有病率の全国調査」(京都大学大学院医学研究科)でも、高齢者の斜視は増加していることが明らかになっています。特に75歳以上になると急増しています。さらに、海外の調査でも後天的な斜視は60歳以降に増加し、80歳以降はさらに増加するという研究もあります。
「斜視の有病率は4%程度で、かなり高くなっています。にもかかわらず、後天的な斜視はこれまで軽視されがちで、“年だから仕方ない”と諦めている人も多かったのです」(後関教授)
ちなみに、厚労省の調査「主な疾病の有病率」(2020年)によると、中高年に最もポピュラーな高血圧症の有病率は、11.92%、脂質異常症3.18%、2型糖尿病2.93%です。この数値から見ても斜視は国民病と言ってもいいほど、ありふれた病気と言えます。
また、斜視が軽視されてきた理由のひとつに、気づきにくいことが挙げられます。加齢性斜視の症状には、複視の他に、ものを見る時にぼやける、焦点が合わない、距離がつかみにくいなどがあり、老眼や他の目の病気と間違いやすいのです。
中には診断が難しいタイプの斜視もあり、必ずしも正しい診断がついているとは限らないそうです。
「医師から“手術をしても再発する”“高齢だから手術は勧められない”と言われる人もいて、なかなか治療に結びつかなかったのです」(後関教授)
しかし、最近では高齢者の斜視の半分を占める「サギングアイ症候群」という新しい病気の概念ができ、高齢者の斜視治療が変わりつつあります。
次回はサギングアイ症候群を取り上げます。 =つづく
(医療ジャーナリスト・油井香代子)


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