野良猫にかまれた女性が死亡した一件にゾッとした人もいるだろう。

 西日本在住の50代の女性が屋外でぐったりした猫を見つけ、動物病院に連れて行こうとした際に手をかまれた。女性はその10日後に死亡。厚労省は猫がマダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染しており、女性がこのウイルスを移されて死亡したとみている。

 マダニは草むらなどの野外に生息する。日本にいつからいるのかは分かっていないが、国内でマダニからSFTSウイルスが見つかったのは2013年1月だった。

 今年4月には西日本で体調不良の猫からSFTSウイルスが発見された。今回とは別の猫で、猫のマダニ感染が確認されたのはこれが初めてだ。

「SFTSは血液や糞便を通して感染するとみられています。血小板が減少する病気のため、猫が口の中の出血が止まらないまま人間の体にかみつき、血液から血液へと移された可能もあります」(厚労省健康局結核感染症課動物由来感染症指導係長の坂野英知氏)

■マダニで致死率21%

 11年から今年6月までSFTS感染で266人の発症例があり、うち57人が死亡。致死率が21%だから看過できないウイルスだ。

 人間がSFTSに感染すると、発熱や食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が出る。このほか頭痛、筋肉痛、けいれんや昏睡といった神経症状も出るそうだ。

「空気感染はしませんが、野良猫、特に弱っている猫には近づかないのが無難です。万一かみつかれたら消毒して病院の診察を受けてください」(坂野英知氏)

 猫好きは野良猫も飼い猫も抱っこしてかわいがりたくなるものだが、実はそこに落とし穴がある。東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏(感染症学)が言う。

「SFTSのほかにも、猫にひっかかれて起きる病気に『猫ひっかき病』があります。これは猫が持っている微生物のリケッチアが感染して発症するもの。野良猫だけでなく、飼い猫も体内にリケッチアがいることがあります。いまのような暑い時季はSFTSやリケッチアが活発に増殖する上に、猫も人間も暑さで免疫力が弱まって感染しやすい。ご自分と猫の体調管理に十分気をつけてください」

 SFTSはいまのところ西日本で猛威を振るっているが、関東に拡大しないとも限らない。弱った野良猫には十分注意したい。