目の上や胸やお腹にできたブツブツ。今の季節なら虫刺されやかぶれと思うかもしれないが、「帯状疱疹」も疑った方がいい。放っておくと長い間痛みに苦しめられたり、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染やがんなどの重大病を見逃しかねない。皮膚科専門医でヘルペスに詳しい、「中野皮膚科クリニック」(東京・中野)の松尾光馬院長に話を聞いた。

 帯状疱疹の患者数の割合は1997年の1000人当たり3.61人から、5.18人(2014年)となった。宮崎県皮膚科医会が県内約9万3000人を調べた結果だ。18年間で43.5%増えた計算だが、この傾向に拍車がかかっているという。

■夏はウイルスへの免疫力が低下

 帯状疱疹は水ぼうそう(水痘)のウイルスが原因。水ぼうそうにかかった人なら誰でも発症の可能性がある。疲れやストレスに加え、加齢や病気、薬剤で免疫力が低下したときに発症しやすい。

「帯状疱疹の患者数は夏に多く、冬に少ない。そのため夏バテが原因といわれますが、正しくありません。本来、水痘・帯状疱疹ウイルスは熱に弱く、夏は感染力が落ちます。そのことにより水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力が低下するのです」

 なぜか。冬場は同じ水痘・帯状疱疹ウイルスで発症する水痘患者が多い。一度水痘にかかった人は新たな水痘患者に接することで、再度免疫が刺激され、免疫が強化される。免疫のブースター効果だ。

「これが帯状疱疹の患者さんが冬に少なく夏に多くなる理由のひとつです。また、2014年に水痘ワクチンが定期接種になって冬場の水痘患者数が激減。免疫のブースター効果が失われたぶん、夏場の帯状疱疹の患者増に拍車がかかります。東京五輪に向け、患者の急増を心配しています」

 帯状疱疹は最初にピリピリする皮膚の痛みが表れ、1週間後くらいに赤い発疹ができる。その2〜3日後に水ぶくれになる。症状は体の片側の目の上、胸、お腹、背中など、知覚神経に沿って表れる。

■HIVやがんの前兆の場合も

「この病気が厄介なのは、発疹前の痛みの段階では片頭痛や肋間神経痛などと間違えやすいこと。患者さんによっては痛みがなかったり、軽い場合もある。放置してしまうケースも多いのです」

 実際、水ぶくれとなった発疹はその後1週間ほどでカサブタになり、さらに1週間も経つと剥がれ落ちる。放っておいても自然に治る人もいる。

「このことがさらなる災難を呼ぶことがあります。帯状疱疹の痛みは一時的な炎症の痛みです。抗ウイルス剤や鎮痛剤で軽くすることができます。それを放っておくと、水痘・帯状疱疹ウイルスが神経を攻撃し、神経そのものを変性させる程度が強くなります。結果、痛みが長期間続く。これが帯状疱疹後神経痛(PHN)で、20年以上苦しむ人もいます」

 帯状疱疹の背後には糖尿病のほか、がん、白血病、HIVなどの重大病が隠れていることもある。

「HIV患者さんの中には帯状疱疹が最初の体の異変という人も多い。私も複数のHIV患者さんを見つけました。がんや白血病も免疫力が落ちるので、帯状疱疹の発症リスクは上がります」

 がんや白血病の治療として、抗がん剤や放射線を浴びることで帯状疱疹が表れることもある。

「神経障害が出るほど重症化した糖尿病患者さんは、帯状疱疹にかかりやすく、かかっても気がつきにくい。治療が遅れがちです」

 帯状疱疹は合併症にも気を配る必要がある。

「お腹にできた帯状疱疹は『腹筋の片側の麻痺』『大腸の動きの低下』『腹部膨満』を起こす場合があります。腸管に排泄物がたまる『イレウス(腸内閉塞)』にも注意しましょう」

 お尻にできると膀胱や直腸の神経を麻痺させ、オシッコが出なくなったり直腸の動きが悪くなって便秘になるケースも。「角膜炎」「強膜炎」を発症させることもある。耳の近くに発症すると、めまいや難聴、顔面神経痛などのラムゼー・ハント症候群と呼ばれる症状を引き起こす場合もある。

 帯状疱疹は発疹ができた直後に治療すれば重症化は免れる。ワクチンで発症を半分に抑え、PHNを66.5%抑えられる。心当たりのある人は医師に相談することだ。