勤務時間やエリアを調整して、育児や介護の負担を軽減――。政府は肝いりの働き方改革で、そんな理想を示すが、現場は変わったのか。

「インテージリサーチ」が今年3月に行った「働き方に関する意識調査」によると、「自社で残業を少なくするよう取り組んでいる」「今後取り組もうとしている」と答えた人が75.8%。8割近い人の職場で変化の兆しが見えるが、実際はそうでもない。

 化学メーカーの男性(28)は、「会社の業績が安定していることもあって、ルーティンの業務だけなら残業ナシ。しかし、プロジェクトをより良くしようと案を練ったり、情報収集をしたりして、プラスアルファの作業をすると、やっぱり残業が必要です。もちろん、残業代はつきます。残業グセが染みついた50代以上の上司には、かわいがられて夜食をごちそうしてもらえますね」

 恵まれた職場はごく一部。大手も中小も関係なく、大半はきつい。製薬の研究職(30)は、「残業は増えている」とこう言う。

「勤務時間が自己申告制で、上司や組合から管理を徹底するよう通達がきますが、与えられたタスクを就業時間内に終えるのは物理的に無理。それで、36(サブロク)協定で結んだ残業時間で管理しようとすると、タスクがこなせなくなり、評価が下がる。マジメに残業時間をつけると、無駄に残業をしていると、これも低評価になる。結果、ほとんどサービス残業です。そうすると、『今のタスクは適量』と判断されて、さらに仕事を増やされ……」

 中小は大変だ。

「働き方改革は、別世界の言葉。会社が生き残るため、時間に関係なく働かないと。社員全員が諦めていますよ。社長も会社に泊まってますしね」(33=ウェブ制作)

「残業規制は会社の存亡にかかわる」と嘆く人もいた。労働問題に取り組むNPO「POSSE」の今野晴貴氏が言う。

「働き方改革の機運の高まりは感じますが、実際の効果は乏しい。ブラック企業では、持ち帰り残業を強化するなどして、むしろ残業代の不払いが定着し、増えています」 労基法違反に見えないような“逃げ道”を探す経営者もいるのだ。

「政府の働き方改革は掛け声ばかりで、実際の政策はむしろ労働規制の緩和、長時間労働の促進になっている面もある」(今野氏)

 安倍政権はどこを見て政策を練っているのか。