8月は7月と並び1年間で最も多く子供が誕生する。知人の赤ちゃん誕生の話を聞き、「今度はウチの番」と意気込むカップルも多いのではないか。そんなとき、必ず話題になるのが赤ちゃんの性別。

「おちんちんがついているのが男の子、ないのが女の子」と信じて産み分け妊活に励む人も多いが、正確にいうとそうでないこともある。医学的に“あいまいな性”を持つ赤ちゃんが少なからず存在するのだ。日本産科婦人科学会指導医で北里大学医学部産婦人科学講師の金井雄二医師に聞いた。

■見た目だけではすぐに性別が分からない

「精子にはX染色体とY染色体の2種類があり、X染色体を持つ精子が卵子に入れば女の子が生まれ、Y染色体の精子が卵子に入れば男の子が生まれる」

 誰もが学校でそう習ったはずだ。しかし、多くはその法則で性決定が起こるが、染色体やホルモンの異常により、見た目だけではすぐに性別が分からない状態の外性器をもって生まれる赤ちゃんもいる。「性分化疾患(DSD)」の赤ちゃんだ。

「その正確な数は分かっていませんが、2006年の国際学会での報告ではDSDの赤ちゃんが生まれる頻度は、出生した4500人に1人程度とされています」

 厚労省が公表した「平成28年人口動態統計月報」によると、2016年の日本の出生数は97万6979人。そこから推計されるDSDの赤ちゃんは217人ということになる。少ない気がするが、これは昨年だけの数。日本の人口全体では数万人に及ぶ可能性がある。

 なぜ、DSDという病気が発症するのか?

「たとえば染色体はXYを持つ男の子なのに、Y染色体に備わっているべき性腺決定因子が欠けているケースです。未分化性腺が刺激されないために精巣がつくられず、卵巣や膣がつくられてしまいます。逆に染色体がXXの女の子でありながら、先天性副腎過形成により男性ホルモンを過剰に浴びたことで、ペニスのように見えるクリトリスを持つ例もあります」

 そのため、出産直後の赤ちゃんの性を外性器だけで見極めることは難しい。生まれたばかりの赤ちゃんの外性器を見た場合、完全な女性型と完全な男性型以外に中間型があり、さらに5分類されるという。

 にもかかわらず、日本の戸籍法で「出生の届け出は14日以内」と定められているのは問題だ。曖昧な状態で社会的な性別が決定されてしまえば、その後、本人や家族が苦しむこととなる。

「戸籍法では性別、名前は未載で提出して後で追完できますが、その記録が戸籍に残ってしまいます。正当な理由があれば届け出の期限延長ができますが、家庭裁判所で数カ月の審議が必要になります。後日の変更も記録に残ります」

■思春期での「変化」に戸惑いも

 大病院などではこうした事例を何度も経験しているため、いまはDSDの疑いがある赤ちゃんには、専門医らがチームを組んで社会的、養育的、法律的に適切な対応が取られるという。しかし、半数以上の赤ちゃんはそういう医療環境では生まれていないのが現状だ。

「染色体と外性器の不一致については血液検査で分かりますが、調べようと思わなければ分かりません。また、生まれた当初は染色体と外性器が一致していても、性腺刺激ホルモンや性ホルモンなどの産生低下により、思春期に異常が見つかることもある。生理が来ないので調べてみたら子宮、卵巣などの女性生殖器すべてが欠損していた、乳房の膨らみはあるものの、子宮がなかった例も報告されています」

 中には、女の子だと思い込んでいたのに思春期を境に声も体形も男性化して、クリトリスが小さなペニスほどに育ち、本人が強い戸惑いと驚きを受ける例もある。

 手術などで治療できる場合もあるが、性同一性障害を引き起こす原因につながるケースもある。

「その精神的苦しみはいくばくか。結婚して不妊相談治療の過程で自身がDSDであることに気付くこともあるのです」

 人は「染色体」「外性器」「心」の“性”が一致するとは限らない。何をもって「男の子」「女の子」というのか。性に関係なく一人の個性ある人間として愛情を持って育てる。その覚悟がなければ親になる資格はない。